ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

「モンスター誕生」攻略感想(背景準備編)

今回はプレイ記事前の準備編

 

リバT『お待たせしました。アシスタント・モンスターのリバTですの』

 

ケイP『リバTの兄のケイPイチローだッピ』

 

リバT『今回から、モンスター兄妹による「モンスター誕生」攻略記事をじっくり手掛けていきますの。なお、役割としては、私めがナビ役、ガイド役で……』

 

ケイP『オラが、名もなきモンスター役として、サイコロを振ったり、敵と戦うロールプレイをしたり、ホビットその他の肉を食べたり、死んだり、やっぱり死ななかったり、体を張った芸を見せる役回りだッピ』

 

リバT『この「モンスター誕生」は難解な作品で、一部の人によれば、まともにプレイすると何十回となく死んで、やり直しを繰り返す過酷なゲーム、との話も聞きますの』

 

ケイP『ガクガクブルブル。だけど、マスターNOVAは昔、クリアしたそうだッピな』

 

リバT『じっくり遊ぶ時間がないので、サイコロを振らずにパラグラフを読んで、正解の手順をノートにメモ書きしてから、改めてキャラクターを作って、一通り解いたことにしたようですの』

 

ケイP『アーロックと同じような解き方をしたッピか?』

 

リバT『いいえ。アーロックはダイスを振って何度も死んだ挙句、結局、攻略記事だけ書いて、最初から最後までゲームとして解くことは断念したそうです。正解の手順を知っても、攻略必須アイテムを入手するのに、何度もやり直しをしないといけないゲームはつまらん、ということですの』

 

ケイP『FFお馴染みの文「たった一つの真実の道のリスクは最小であり、最初のキャラクター作成時のサイコロの出目がどんなに低くても、通り抜けることができるだろう」が成り立たないゲームだッピね』

 

リバT『その文は、作品によりけりですの。例えば、どうしても倒さないといけない強敵が技術点10以上であれば、技術点9以下のキャラでは戦闘で勝てなくて、クリアが難しいことがしばしばです。最初の「火吹山」や2巻めの「バルサス」では、ラスボスのザゴールやバルサスは非常に強い敵ですが、パラグラフ選択によって相手を弱体化させたり、弱点効果で即死させたりもできるため、うまく立ち回れば問題ありません。だけど、道中のイベントを解決するには、せめて平均程度の能力は欲しいですの。「技術点7、体力点14、運点7の最低能力キャラ」でも、正解ルートを選んだ場合だと、能力の良し悪しに関わらず、道中の危険は極力スルーできて、ほぼ問題なくクリアできるゲームは、ここでの既攻略分ですと「運命の森」「さまよえる宇宙船」ぐらいじゃないでしょうかね』

 

ケイP『冒険中に技術点が上昇できるなら、最初の技術点が低くても補えるッピね』

 

リバT『基本的に、最初に決めた原技術点よりも増えることは稀ですの。それと、運だめしに失敗すると、重要アイテムが手に入らなかったり、避けられない即死パラグラフが存在するゲームだと、運点7ってのは成功率半分程度のギャンブルですから、とりあえず、期待値どおりの「技術点9〜10、体力点18〜20、運点9〜10」でストレスなく遊べるゲームは普通に良ゲーム。技術点が11や12がないと強敵相手に大苦戦するようなのは、正解ルートの発見とは別の点で難しいゲーム。しかし、アーロックの難易度はそういう問題ではありません』

 

ケイP『どういうことだッピか?』

 

リバT『FFを楽に解く方法の一つは、ぶっちゃけ「技術点12、体力点24、運点12」の最強キャラを用意すること。それなら力技で攻略を進めて行くことができますので、後は必要アイテムや情報などが手に入る正しい道を探すだけとなります。それでも、思いがけない事故で即死パラグラフに踏み込んだり、たまたま偶然、暗殺者の毒攻撃が命中したり、放射能犬で後々までネタにされるほどのトラウマを患ったり、面白いアクシデントはあるわけですが、アーロックの酷さはそういう問題ではありませんですの』

 

ケイP『どういう問題だッピか?』

 

リバT『やはり、宇宙船および乗り物戦闘ルールが、キャラクターの能力値ではなく、固定値の機体性能で難易度が左右されるので、強いキャラを作ってバトルを楽に進めるという通常の対策がとれない点が大きいですの。攻略に必須アイテムを入手する際も、物語の要所要所に際しても、勝率の低い宇宙船戦闘を強要されて、プレイヤーのダイス運だけで切り抜けないといけない局面が何度もあって、たとえキャラの能力が最高であっても、攻略が楽になるわけではないという過酷なゲーム。それが「アーロック」です。ゲームブックとしては、少しぐらい能力値が低くても正解ルートを見出せば、普通にクリアができる作品がFFとしての謳い文句どおりの理想であるのに対し、「アーロック」は逆なんですね。

 

ケイP『逆と言うと、能力値が高くて、正解ルートを選んでも、普通にはクリアできないゲームだッピか』

 

リバT『強い敵に対して能力値が高かったら普通に優位に立ち回れるゲームなら、難しくはあっても決して理不尽とは思わない。低能力で挑戦するのは、プレイヤーの縛りプレイみたいなものですし、それでスリルを楽しんだり、攻略した時の達成感を得たり、ネットでの攻略記事ネタにできたり、死そのものに向き合って楽しむマゾヒスティックなプレイスタイルもあるのがFFの奥の深さですの。「こんなバカな死に方をしたぜ(笑)。間抜けな俺を笑ってくれよww」という自虐芸とか、「高能力(イージーモード)でクリアするのは普通のプレイヤー。それを敢えて低能力(ハードモード)でチャレンジすることに、ベテラン冒険者としての誇らしさがある」という自尊心プレイとか、動機は人それぞれ。でも、FFプレイヤーにとっては、キャラの死んだ回数こそがステータスだったりもします。15回めの挑戦でやっと攻略できた! とか、いかに苦労してプレイしたかを皆さん、嬉しそうに報告されますもの。死んだから下手とか、そういう貶めのない世界がFF同好の士というもの。生きていれば、みんな死ぬのと同じくらい、冒険すれば死んで当たり前、そこを乗り越えて使命を果たすのがベテランの矜持ってものよ、と歴戦の強者は語るわけです』

 

ケイP『戦場で、自分が負った傷の数を誇らしげに語る武人みたいなものだッピね』

 

リバT『しかし、正解ルートを選んでも、能力値を強化しても、それでも相当なダイス運が必要となり、さらに運点が回復しないので運だめしというルールすらリソースを削るだけの罰ゲームになってしまう、FFのゲームシステムの楽しさすら完全にスポイルしてしまってるのが「アーロック」、だからこいつはダメなのだ、というのがグランドマスターNOVAの見解ですの。もっとも、そういうダメさを、身をもって体験したが故の誇らしさは抱いているのも事実ですけどね。単にバカにして終わり、だと、攻略記事として面白くはならないですし、一欠片の愛情ぐらいは表明しておいて……』

 

 

ダイアンナ「おい、リバT」

 

リバT『はい、何でしょう、マイ・クイーン?』

 

ダイアンナ「今回は『モンスター誕生』の話だよな。何で今さら『天空要塞アーロック』の批判をしているんだ?」

 

リバT『作者の歪んだ愛ゆえに、かもしれませんわね』

 

理不尽な難易度の方向性の違い

 

リバT『話を戻します。実は現在、「モンスター誕生」の解析を進めていて、とりあえず、前半のダンジョン脱出まで漕ぎつけた頃合いですが、非常に難解で、ちょっとした選択ミスで攻略不可に何度も陥る理不尽ゲームだという認識でおります。しかし、理不尽じみた難易度の高さだと、当ブログでは「火吹山ふたたび」「天空要塞アーロック」が挙げられますが、ジャクソンさんの「地獄の館」「モンスター誕生」はそれらとはまた違う手応えと受け止めています』

 

ダイアンナ「難しさの質が違うってことか?」

 

リバT『「火吹山ふたたび」は必要アイテムが多すぎて、それらを一つでも取り損なうとゲームオーバー確定のため、攻略のためには詰め将棋にも似た緻密さが要求されます。さらにラスボスの復活ザゴールを弱体化させることができないので、正々堂々と正面から打ち負かさなければならず、さらに食料やポーションという定番回復アイテムを持たないので、回復手段もごくごく限られ、いかにリソースを削らずにラストまで行き着けるかも問われます。

『「アーロック」も、リソースの回復手段が限られているのは同じですが(とりわけ運点)、通常戦闘の難易度はそれほど高くありません。しかし、宇宙船戦闘のルールを含む、パラグラフ選択による特殊戦闘イベントがあまりにデッドリーで、ゲームバランスを欠いたもの。必要アイテムの数は少なく(入手アイテムの数の多さに反して、冒険中に役立たない欠陥品がやたらと多い)、詰め将棋みたいな緻密さは求められていないのですが、イベントごとに即死サプライズが多く、プレイヤーの努力を嘲笑うかのような理不尽展開の数々に、ゲームとして破綻している根拠をいくつも挙げられるほど。

『で、ジャクソン作品の「モンスター誕生」なんですが、期待値どおりの能力値があれば、攻略には大きな支障がありません。戦闘バランスは主人公モンスターの特殊能力(ダメージ耐性とゾロ目による即死攻撃)のおかげで、プレイヤー有利のまま安定して戦えます。このゲームの難易度の高さは、(ある時期のリビングストン作品に頻発する)敵が強いという形ではなく、暗号やパラグラフ・ジャンプなどの仕掛けによる正解ルートの見つけにくさ。そして、正解の道筋から外れてしまうと、迷宮を永遠にさ迷い続ける脱出不能のループとか、どちらの選択肢を選んでも死は免れないデッドエンドブロック(運だめしに成功しても、失敗しても結局、死んでしまうとか)の数々。迷宮の地図や入手した情報を丹念に記録して、情報を解析、整理していき、適切な場面で上手くパラグラフ・ジャンプを生かさないと、詰んでしまうゲームです』

 

ダイアンナ「パラグラフ・ジャンプは『地獄の館』や『サイボーグを倒せ』でも見られたジャクソンのお家芸って感じだが?」

 

リバT『通常では行き着けない隠れた道筋を発見することで、いろいろな情報が芋づる式に手繰り寄せて行ける爽快感がありますね。ゲームブックで大切なのは、期待どおりの展開を示しつつも(何だか罠っぽいなあ。ドキドキ。ほら、やっぱり罠だった、とか)、思いがけない謎の解明というサプライズです(おや、罠かと思いきや、重要な攻略ヒントっぽい? 敢えて調べて正解だったぜ、とか)。予定調和と意外な展開、リスクとメリットのバランスと言っても良いでしょう。

『アーロックにもサプライズは多々ありましたが、それはストーリー展開の急変で、しかもプレイヤーを引っ掛ける罠的なサプライズが多くて、「はい?」「おいおいおいおい」「うげっ」的なもの。一方、ジャクソンのサプライズは、「なるほど、そういうことか」「うおっ、そいつは凄え」「ほう、こんなところに隠し扉が。ここを潜れば新展開が待っているみたいだな(ワクワク)」的な謎解きセンスに満ちた快感サプライズです』

 

ダイアンナ「快感サプライズか。嬉しい驚きって奴だな」

 

リバT『これはエンタメにおいて重要なんですが、何のサプライズもない予定調和だけの物語やイベントは平板でつまらない。まあ、そのお約束めいた平板さに安心感を抱く層もあるわけですが(日常のちょっとしたコミュニケーションに癒されたり、あるあるネタにクスッと微笑んだり、おバカなキャラの言動に愛情交じったツッコミ入れたり、皮肉交じりの毒舌批評ネタに共感したりなどなどが日常系作品の醍醐味)、こと日常を越えた冒険というテーマですと、思いがけない発見の楽しみこそがプレイ動機の一つと言えましょう。サプライズは大切なので、サプライズの楽しさを棄損するネタバレを忌避する層もありますし、ネタバレしてサプライズがなくてもなお味わえる物語の雰囲気の良さこそが重要だと感じる層もあります。刺激的なサプライズも、度を越せば疲れますし、サプライズしかないとそれはそれでうんざりなので、さじ加減ってものが作り手には必要なんですが、ジャクソンさんの提示するサプライズには、「プレイヤーの能動的なアクションに反応する仕掛け」「プレイヤーの頑張りに対して、ご褒美として得られる情報でストーリーの裏が解きほぐせる快」というのがあります。いわゆる脱出ゲーム、謎解きゲームのもたらすそれですね』

 

ダイアンナ「リビングストン作品には、それはないのか?」

 

リバT『リビングストン作品は、謎解きなどしなくても、勝手にストーリーが進展するパターンが多いですね。彼のゲームブックはアイテム集めに根差したものが多く、ゲームの種類で言えば、ヒドゥン・オブジェクト(隠し物探し)系のアドベンチャー・ゲームに近いもの。そして、入手したアイテムをコレクションする的な楽しみ方もあります。もちろん、必要アイテム数がいっぱいで、どこに何が隠されているか、何が必要不可欠で何がそうでないか、が攻略の肝になりますが、戦闘や探索の結果、報酬としてアイテムが手に入り、そのアイテムを後で活用できたり、まあ、外れアイテムも多いですが、何が当たりで何が外れかを見知るのも、攻略の一環ですからね。とにかく、アイテムコレクター気質を満たしてくれるのがリビングストン作品の(今にも通じる)特徴と言えましょうか』

 

ダイアンナ「ジャクソン作品には、そういう要素はない?」

 

リバT『なくはないですけど、リビングストンほど多くはありませんね。「地獄の館」のクリスナイフとか、「サイボーグを倒せ」の回路妨害器のようなラスボス退治の必須アイテムはあって、それが手に入るルートを見つけるのも肝ですが、それ以上に大事なのが、品物よりも情報の入手と能動的な活用なんですね。人と話したり、書き物を見つけて情報を知ると、「パラグラフ番号に20を足した先に進め」とか、進んだ先にまた新たな情報が見つかって、パラグラフ・ジャンプで通常では到達できない裏ルート、裏情報に突入することができる。

『他の多くの作品だと、隠し扉を見つけるには技術点判定や運だめしが必要になりますが(少し難易度を上げると、あるアクションをすることで初めて隠し扉を探すアクションが行えるとか段階を踏む必要があり)、ジャクソンの場合は、漫然と読み進めているだけではダメで、以前に手に入れた情報(こういう文章があれば、こういうアクションをしろ)を時機を見て適切に活用しないといけないのです』

 

ダイアンナ「具体的には?」

 

リバT『詳細は後に攻略しますが、「モンスター誕生」では、「暗闇で何も見えない」という趣旨の文があって、何もしなければ、そのまま先に進んでも行き止まりの壁に突き当たって、引き返すことになります。しかし、とあるアイテムを持っていれば(条件で指定されたパラグラフに飛べば)、行き止まりの壁に隠し扉が見つかって、先へ進むことができるわけです。よって、それ以前に隠し扉を見つけるためのアイテムを入手しないといけないのですが、それだけではダメで、そのアイテムを使用できる局面に自分で気づいて、パラグラフを飛ばないと使えません。

『多くのゲームブックだと、暗闇に行き当たったときに「そのアイテムを持っているか? 持っているなら◯◯番に進め」と親切に、そのアイテムが必要だと示唆してくれるのですが。持っていなければ、これまでの探索で入手し損ねていたことに気づき、人によってはもう一度遡ってアイテム探しに寄り道して、正解ルートを探す攻略に移行したり、素直に諦めてそのまま進めるところまで頑張ったりしながら、必要アイテムをメモぐらいはして、真の正解ルートを見つけ出そうとするもの。

『しかし、ジャクソンの仕掛けでは、持っていないアイテムの名前が提示されたりしない局面が多く、ゲームに行き詰まっても、何が足りないのか気付かないまま、たまたま偶然の選択で運良く当たりを引くか、選択肢を総当たりで試してみる(その際に通過番号を記録しながら攻略フローチャートを作成したりもする)ことで、必要情報を見つけて操作しないといけない。プレイヤーに正解ルートを積極的に探し出す意志と才覚、そして緻密さや努力が必要になるわけですね』

 

ダイアンナ「リビングストンの作品は、仮にアイテムを持っていなくても、持っている場合の選択肢は読める。しかし、ジャクソンの場合は持っていない情報は活用できないので、先の選択肢をズルして読むことはできないってことだな」

 

リバT『なお、本書の難解さを緩和するために、かつて安田社長は解説本にヒントとして「337、382、306、147、283、104、155、441、192、217、237、435、7」という手がかり番号を記載してくれています。あと、ダンジョンの簡易マップや、巻末フローチャートも。だから、攻略に行き詰まっても、本作は何とかなる安心感もありますね』

ダイアンナ「昔の作品だと、攻略サイトやブログなんかも探せるからな」

 

リバT『グランドマスターNOVA曰く、「火吹山ふたたび」「危難の港」「魂を盗むもの」「天空要塞アーロック」「アランシアの暗殺者」は便利な攻略サイトが見当たらなかったので、行き当たりばったりで記事書きしたから苦労したけど、楽しかった。他の作品は、安田解説や他の攻略ブログなんかを読んだ経験があるし、そもそも自分で解いた経験があるからストーリーは分かってる。だから、いかに自分の記憶を白紙に戻せるか、また自分が通過したことのないイベントを改めて探索するか、を意識して、記事書きに務めた、とのこと』

 

ダイアンナ「ゲームブックを解くという行為を、『効率よく正解ルートを探り当て、最後の400番パラグラフ(一部例外あり)に行き着くか』だけでなく、『正解ではないけど、面白いイベントまで味わい尽くす』という目的に変換したんだな」

 

リバT『じっさい、「モンスター誕生」のクリアでグランドマスターNOVAは昔、それほど苦労していないんですよ。運が良かったのか、勘が良かったのか、当時は正解ルートをあっさり見つけ出して、苦労した覚えがない、と言っておりました。もちろん、正解じゃない道もクリア後に確かめてみてから、ゲームの難度は理解していましたが、一度正解を知った以上、わざわざ間違った道を進んで完全攻略することに意味を感じていなかったので、クリアしたゲームを再度解き直すことを楽しいとは思っていなかった(まあ、当時、大学受験生でゲームブックは気分転換の頭の体操程度の認識でしたしね)。で、今回、いろいろなルート選択のフローチャートを書きながら、「うわあ、これ、アーロック並みにキツいよなあ」なんて感じながらも、アーロックとの違いも感じて、それは何かを分析しているのが、今回の記事なんです』

 

ダイアンナ「アーロックとの違いは結局、何だ?」

 

リバT『ジャクソンのゲームブックって、正解ルートどおりに進んだら、戦闘も最低限で、ほぼ確実にクリアできてしまうんですよ。ダイス運に頼る要素があまりなくて、平均並みの能力値があれば、危険な戦闘も避けることができて、非常にテクニカルに攻略できる。戦闘が勝てなくて詰んだ経験は、ジャクソンのゲームブックだと、ソーサリー1巻ラストのマンティコア戦だけだ(戦士でプレイ)とのことです。戦士ではガチ対決の力技で倒すしかなかったマンティコアに対して、魔法使いだとFOF(またはDOZ)→HOT→WALの呪文3コンボで大した労苦もなく鮮やかに封じ込めることができたのに感じ入って、「ジャクソンのゲームブックはトリッキーで、それだからこそ面白い」との評価を持ちました。

『なお、グランドマスターNOVAは先にソーサリーを終えてから、後で「火吹山」をプレイしたというプレイ経験ですね。それだけに、ソーサリーに比べて、火吹山は味気ないという初プレイ感想でしたが、次のバルサスでジャクソンのトリッキーさをまた体験。で、やはり戦士ではなく、魔法の使えるFF作品が好き、という感想ですね。また、ゲームブックをプレイし始めた86年には、FFシリーズも10巻を越えていて、翌87年にはFFシリーズだけでも毎月1冊出る月刊状態ですし、赤い背表紙の創元推理文庫と合わせて愛読書になっていて、プレイするゲームには困らない青春ゲームブックライフを満喫していた次第』

 

ダイアンナ「つまり、ジャクソンのゲームブックはトリッキーで、リビングストンが王道。アーロックは?」

 

リバT『作者のマーティン・アレンはトリッキーで、多彩な展開を描くアイデアマンぶりはジャクソンの方向性だと思うんですよね。ただ、ジャクソンのゲーム職人ぶりは受け継げていなくて、せっかくのアイデアが独り善がりのまま、面白さとして機能していないのがアーロックということになります。ジャクソンの作品だと、難解な謎を解いたら、そこには祝福的な広がりがあるんですよ』

 

ダイアンナ「どういうことだ?」

 

リバT『例えば、一つの難題を解決すると、運点が上昇します。ゲーム的には、これだけでも達成感が得られますし、システム的にも大きな報酬と言えますね。運点が回復できるからこそ、運だめしにも自分から積極的に挑戦することもできますし、言わばコンピューターゲームで戦闘終了後やレベルアップの際のファンファーレみたいなもので、景気づけになります。正解の道を選べば報酬が得られるからこそ、理不尽な失敗に見舞われてもチャレンジできるというもの。そういうプレイヤーへの心理的報酬、またゲームシステムとしての課題達成の際のリソース回復は、冒険途中でのモチベーション維持にとって、いかに大切か、そこのところがマーティン・アレンには分かっていなかったのでしょう』

 

ダイアンナ「ジャクソンは分かっている?」

 

リバT『正解を選んだときの恩恵が大きいですね。ただ、正解ではないのに、正解らしく匂わせるのも時々あって、プレイヤーの心を罠にハメる意地悪さも持ち合わせているのがジャクソンです。リビングストンは、正解と不正解が分かりやすく、くり返し解いていると学習効果で正解を普通に選べるようになります。マーティン・アレンは、どっちを選んでも不正解でダメージを受けてしまうような選択があって、「右に行っても左に行っても外れでした。どっちも外れで途方に暮れたので、出直すことにすると新たなイベント発生」って展開でストーリーを進めるケースもあり、最初に左右を選ばせたのは何だったんだ? と無意味な選択にイラッとさせられる(しかも、無意味な選択でダメージを負ったりするし)。選択の無意味さを味わうと、ゲームブックって興が冷めるんですね』

 

ダイアンナ「ジャクソンは、無意味な選択をさせないと?」

 

リバT『ジャクソンは、正解で褒めてくれますし、不正解でもアイテムをつかませてくれて、褒めてくれます。で、いい気になっていると、不正解アイテムじゃ攻略が行き詰まるので、後からやられた! と感じたりもするんですね。その場では、正解か不正解か判断できないけど、何だか正解っぽい気がするし、いい気分にはなれる。でも……こういうのは褒め殺しになるのでしょうか? 宝の鍵を手に入れた、と思ったら偽物だったってことが後で分かるのが、ジャクソン流?

『ジャクソンのゲームブックの難しさは、間違えた道を選んで、もう攻略不能に陥っているのに、気付かないで進めることができてしまう点にあります。「YOUはすでに死んでいる」って仕掛けに気付かせないで、正解をうまく隠しているものだから、それを発見したときの達成感は大きいものがあります。こういう仕掛けだったのか!? やられた! 凄いよ、ジャクソン♪ って、アハ体験ができるのがジャクソンで、そういう喜びが感じられないのがマーティン・アレンの残念なところかと』

 

ダイアンナ「それが快感サプライズということか」

 

リバT『リビングストンのゲームブックは、あまりショートカットができない感じがあります。と言うのも、攻略に必要なアイテムが多いので(初期の作品は除く)、しっかり集めていかないといけないため、アイテムの取りこぼしをしないように攻略を進めないといけませんから』

 

ダイアンナ「なるほど。アイテム入手のために必要な戦闘からも逃げてはいけないから、戦闘志向になりやすいという評もあるみたいだな」

 

リバT『逆に言えば、この敵はアイテムを落とさないと分かれば、次から避ければいいって判断できますね。逃げられない敵は別ですが。ジャクソンの作品は、むしろ必須戦闘が非常に少ないので、正解ルートが見つかれば、非常に呆気なく解けてしまう物足りなさを覚えることも』

 

ダイアンナ「ただ、正解ルートを見つけるのが非常に難しい、と」

 

リバT『そして、マーティン・アレンですが、ジャクソンの真似をしようとして、大失敗した印象があります』

 

『アーロック』と『モンスター誕生』の共通点

 

リバT『「モンスター誕生」のプロットは、「生体改造の魔術を研究している悪の魔術師ザラダン・マーが、世界征服の野望のために自身の軍隊を編成していたのが、自身の作り出した怪物(主人公)に反抗されて倒される」というもの。これは2年後に発表された「天空要塞アーロック」のプロットとかなり似通っています』

 

ダイアンナ「言われてみれば、そうかもな。「アーロック」は、遺伝子工学の技術を研究しているマッドサイエンティストのル・バスティンが、銀河征服の野望のために自身の軍隊を編成していたのが、自身の作り出した最強生物の軍勢に反抗されて、討伐に来た主人公の目の前で無惨な死を遂げる」だったか。ラストの展開は違うが、敵役の初期設定は似ている」

 

リバT『最初に敵役についての経緯が、長文背景で語られて、悪役としての存在感を盛り上げているところも共通点。ザラダン・マーも、ル・バスティンも本編での登場シーンはわずかですが、背景で来歴が詳細に語られることで印象を強めています。ただし、主人公の扱いが全然違いますね』

 

ダイアンナ「アーロックの主人公は、4本腕の冒険家宇宙貴族だったか。先祖がタイタン・シティのスーパーヒーローという」

 

リバT『先祖がどうこうは、当ブログだけのオリジナル設定です。まあ、4本腕という点が怪物っぽいと言えなくもありませんが、「モンスター誕生」の主人公は当初、自我も持たない本能だけで動く怪物です。名前も来歴も不明で、その正体は最後のパラグラフで語られます。最後に冒頭の背景とつながって、そこでもアハ体験が得られますが、ある意味、モン誕の主人公も実はアーロック主人公と同じスカイロードの称号を持っていた可能性もありますね』

 

ダイアンナ「モンスターの正体は、空に関係するのか?」

 

リバT『ザラダン・マーに奪われた飛空艇ガレーキープのキャプテンですよ(あっさり)。アランシアでは、飛空艇は稀少なものというか、神が作ったとも語られる決戦兵器として認知されています。東の世界から突然、西アランシアに出現して、古代文明の産物ではないかとも言われていますね。主人公は1000人の兵士が乗り込めると言われる空の要塞ガレーキープの船長でしたが、ザラダン・マーの軍隊の奇襲を受けて、愛船を奪われて、改造手術を施されて怪人となり、脳改造を受ける前に脱出するわけです。仮面ライダー、もしくはガオガイガーのソルダートJが、ゾンダリアンにされてピッツァになったようなものでしょうか』

 

ダイアンナ「いきなり、強烈なネタバレをくってしまったな」

 

リバT『35年も前のゲームブックですから、とっくに時効でしょう。ネタバレを抗議するなら、最近出た「アランシアの暗殺者」や、去年の「危難の港」の時点で問題なはず。大体、ここまで長文の攻略記事を読んできて、ネタバレがどうこう文句を言う方がおかしいですし、ネタバレを抗議して許されるのは、安田均社長の関係者ぐらいでしょうね』

 

ダイアンナ「もしも、そちらから抗議されたらどうするんだ?」

 

リバT『マーダーミステリーのネタバレが禁じ手だというのは、周知されていますが、ゲームブックの場合はどうなんでしょうね。マダミスは犯人探しミステリーなので、犯人が先に分かってしまえばゲームにならないわけです。でも、ゲームブックって個人遊戯ですし、文章記述を味わうストーリー作品でもありますから、個人の攻略感想のせいで作品の売り上げを悪化させたり、攻略記事を読んだらプレイする必要がない、とも思えません。まあ、理想は読者が作品をプレイしたくなる内容、もしくは同好の士が作品攻略に役立てたり、自分の攻略と比べて楽しんでもらえる記事ですね』

 

ダイアンナ「とにかく、モンスターの正体はキャプテンというわけだ」

 

ケイP『ケピッ。キャプテンだったら、前にソード・ワールドでプレイしたこともあるッピよ。元キャプテン、今は改造されたモンスターってキャラを演じればいいッピな』

 

リバT『で、アーロックの主人公がもしもル・バスティンに捕まって、改造されてしまえば、「モンスター誕生」みたいなストーリーになるわけですね』

 

ダイアンナ「しかし、アーロックでアハ体験が得られるわけではないのだな」

 

リバT『そこまで緻密に「発見する喜び」を意図したゲームではありませんからね。勢い任せのサプライズを楽しめるかがアーロックの肝で、多くのアイテムがあまり役立たずに、ドタバタをくり返すギャグ漫画の主人公的なストーリーを楽しめるか、Youという二人称視点ではなく、ジャンというキャラがドジを踏んだり、運よく危機を乗り越えたり、NPCに騙されてバカにされたり、爆発で体が吹っ飛んだりした後、チートで見なかったふりをして、「ふ〜、死ぬかと思ったぜ」と波乱万丈の冒険を見て楽しめるなら、アーロックも捨てたものじゃないですけど、FFゲームブックの主人公は君だ、の没入感覚が、アーロックでは文章記述のテキトーさからは感じられないわけですね』

 

ダイアンナ「『モンスター誕生』だと、感じられるのか?」

 

リバT『ジャクソンの文章は、白けさせませんからね。本当に、モンスターとして、自我に目覚め、言葉を身につけ、暗いダンジョンから脱出し、初めての世界を新鮮な気持ちでおっかなびっくり探索し、その果てに自分の為すべきことを悟り、ついに自分自身を取り戻すまでの自己発見の物語がじっくりと味わえます』

 

ダイアンナ「では、面白い攻略話を期待しているぞ」

 

リバT『ええと、勿体ぶりたいので、次は「背景準備編2」をお送りします』

 

ダイアンナ「何だよ、それ?」

(当記事 完)