ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

「モンスター誕生」攻略感想(1)

モンスター誕生onドゴラの日

 

ケイP『ケピピピン。毎年、8月11日はドゴラの日だッピ』

 

リバT『国民の祝日としては「山の日」が正解なんでしょうけど、「海の日」に比べて、あまり祝日として盛り上がる日ではございませんね』

 

アスト「学生たちにとっては、夏休みの途中に祭日が増えても、何の喜びもないからな。社会人にとってみれば、プレお盆休みみたいなものだが、山の日だから特別に何かをしようって気分にもならん」

 

ダイアンナ「そもそも、どうして、この日なんだ?」

 

リバT『後付けですが、漢字の「八」が山の形に見えて、「11」が木が並んでいる様子に見えるとのこと』

 

アスト「『介』って感じか。何だか、クラゲがフワフワ浮いているようにも見えるが?」

 

ケイP『だから、ドゴラの日だッピ』

 

リバT『それはウソですね。本当は、東宝映画の「宇宙大怪獣ドゴラ」の公開日が1964年8月11日だから。来年がちょうどドゴラ60周年で、全国のドゴラファンが盛大に祝う大ドゴラ祭が予定されています』

 

アスト「本当かよ!?」

 

リバT『ウソです。ですが、来年の今日には、当ブログだけでも、大ドゴラ祭を祝っていただければ、嬉しいと思いますの』

 

ダイアンナ「分かった。では、来年の8月11日は、ウルトロピカル大ドゴラ祭を盛り上げるとしよう。ガメラも復活するんだから、ドゴラも復活するといいな」

 

ケイP『「ドゴラ・ギドラ・カメーバ 3大怪獣宇宙最大の決戦」をリクエストするッピ』

 

アスト「ドゴラやキングギドラはともかく、カメーバは何でだよ? ゲゾラやガニメはどうした?」

 

ケイP『本当は、「宇宙大怪獣ガメラ」という詐欺タイトル映画をプッシュしようかと思ったッピが、ガメラは普通に復活したので、代理にカメーバ君に来てもらった次第』

アスト「カメーバの話はどうでもいいから、ゲームブックの話をしようぜ」

 

リバT『そうですね。ところでアストさんは、ゲームブックの日がいつかご存知ですか?』

 

アスト「いや、知らんが。いつなんだ?」

 

リバT『1982年8月27日に、「火吹山の魔法使い」が出版されたことで、8月27日を国際ゲームブックの日にしようってジョナサン・グリーンが提案したそうですよ』

 

ダイアンナ「8月27日か。去年は何をしていたかな?」

アスト「『運命の森』か。だったら、8月27日をゲームブックの日として追従してもいいだろうな。今年も、8月27日に何かで盛り上がろうぜ」

 

NOVA「そうだな。何か考えておこう」

 

アスト「って、お前、何でいるんだよ?」

 

NOVA「そりゃあ、お盆休みだからな。リモートじゃなくて、直接こっちに来る時間もできるだろう」

 

アスト「来るなら来るって、先に連絡ぐらいしておけよ」

 

NOVA「いや、すぐに去るつもりだが、前回の記事に一つミスを発見してな。読者に謝りに来たんだ」

 

リバT『何か問題でも?』

 

NOVA「ザゴールのファーストネームの件だ」

 

ザゴールのファーストネーム問題

 

NOVA「前回、リバTはこう言った」

 

>ザゴールにオルドランというファーストネームが付けられたのも、当作からみたい

 

リバT『確かに、「モンスター誕生」の13ページに、オルドラン・ザゴールの記載がありますよ』

 

NOVA「それはコレクション版だな。社会思想社の旧訳(25ページ)では、オルドランの呼称はなく、まだザゴールとだけ書かれてある。ついでに『火吹山の魔法使いふたたび』でも、オルドランの名前は使われていない。ウォーロックマガジン1号の記事によれば、『未訳のザゴール小説が原典という誤解もあるが、それは間違いである』とのこと。90年代が初出ではなく、ゼロ年代以降の話と思われるが、最初にオルドランの名前が記載された資料は未確認らしい」

 

アスト「お前はいつ知ったんだよ?」

 

NOVA「2018年のウォーロック・マガジンだな。つまり、AFF2絡みで初めて知ったことになる。で、ザゴールのファーストネームをほんの5年前に知って、今では割と普通に慣れ親しんでいるが、初出がどこかは気にしていなかった。で、今、ネットの英文サイトを調べてみると、2003年〜2004年に配信された『サラモニス・ガゼット』というネット雑誌が初出らしい」

NOVA「英文資料によれば、ザゴールもまた東方の地ケイ・ポンのゼンギス出身で、その地域の昔の地名にゴルドランというのがあって、それにちなんだファーストネームだとのこと」

 

アスト「なるほど。ザゴールは黄金勇者の末裔だったのか」

NOVA「ザゴールの初登場は1982年だが、20年ほどはフルネームが設定されていなくて、21世紀に入ってからオルドランになったようだな。その意味で、新マンをウルトラマンジャックというぐらいの後付け設定というわけだ。社会思想社時代のFFしか知らない人間にとっては、いつの間にオルドラン・ザゴールになっていて、へえって感じだろう。まあ、魔法使いだからフルネームを隠すような風習でもあったのかもしれん。なお、黄金勇者は95年だから、ザゴールのフルネームが決まる以前の話だな。関係はないだろうが、冒険というテーマがかぶるのは面白い」

 

ダイアンナ「とにかく、ザゴールの話をしに来ただけか?」

 

NOVA「ああ。あと、我々はZagorを伝統的にザゴールと呼んでいるが、英語での発音はゼイゴーあるいはゼイゴア、ゼイガーっぽい感じで、ゴールよりもゼイの方を強く読むらしい。まあ、今から訳語をゼイゴーとかに変えられても戸惑うだけだが。他にも、ザゴール家の来歴とか、英語の雑誌記事には我々の知らない裏情報がいろいろあるみたいだが、マニアックすぎる話はこれぐらいにして、そろそろ『モンスター誕生』のプレイを始めたらどうだ?」

 

ケイP『だったら、ダイスを振って技術点から決めるッピ。(コロコロ)1』

 

NOVA「ダメだな、それじゃあ。リバT、お前が振れ」

 

リバT『(コロコロ)6ですの』

 

NOVA「よし。ケイPとリバTのそれぞれでダイスを振って、大きい出目を採用する形でいいだろう」

 

 しばらく経って

 

ケイP『こんな能力になったッピ』

 

★モンスター:技術点12、体力点19、運点12

 

NOVA「これで十分クリアできそうだな。後はパラグラフ選択か謎解きなどをミスらなければ何とかなる」

 

リバT『それは調査済みですので、おそらく問題ないでしょうが、序盤に運が悪ければ、ダイス目だけで勝手に死ぬ選択肢を選んでしまうわけで』

 

NOVA「それはそれで、一つのネタとして笑えそうだから、問題なしだ。さあ、始めてくれ」

 

トロール峠の伝説

 

リバT『初心者は背景を読み飛ばしても問題ありませんね』

 

NOVA「章題ぐらいは挙げてみよう」

 

  1. ドリー:魔女の住む村
  2. ドリーの三姉妹
  3. 死霊術師ザラダン・マー
  4. コーヴン
  5. 虹の池
  6. スティトル・ウォード
  7. スティトル・ウォードの煙
  8. サグラフとダラマス
  9. ダーガ・ウィーズルタング:無垢の裏切り者
  10. ガレーキープ

 

ダイアンナ「固有名詞が多くて、よく分からないね」

 

NOVA「簡単に概要を話すと、ドリーの村がザラダン・マーの出身地なんだな。恐ろしい黒魔術を使った罪で、サラモニスの街を追放された魔女ロミーナ・ドリーは、サラモニスの北、月岩山地クモの森付近に居を構え、彼女を信奉する魔女たちがその周辺に集まって、ドリーの村が誕生した。そのドリーの村で、マランハという生体改造魔術が研究され、多くのミュータントが作り出されて行った」

 

ダイアンナ「主人公のモンスターも、そのマランハという術で生み出されたんだね」

 

NOVA「そういう事実がプレイ中に判明するわけだが、次に、ロミーナ・ドリーに妹が2人いて、その三姉妹がザラダン・マーを生み出したらしい。ザラダン・マーについては、父親が悪魔という説もあれば、マランハで生み出された怪物という説もある。また、ドリーの村出身の魔女の名前が紹介され、ヨーレの森の薬草医ビトリアーナとか、コーヴン近くの占い師ロシーナ、バルサスの要塞の名称不明の料理人姉妹が挙げられている」

 

ダイアンナ「他の名前は知らないけど、バルサスの要塞には、確かに1階の炊事場に魔女たちがいたな。正解ルートじゃないから、攻略していても知らないプレイヤーもいそうだが」

NOVA「TRPGのシナリオもそうだが、1回のプレイで全てのイベントを網羅することはできないからな。選択肢次第では、選ばなかったイベントもあって、GMではせっかくの面白イベントをプレイヤーたちがスルーして、残念がることもしばしばだ」

 

アスト「そういうネタは、感想回で話す格好のネタじゃないか。『実はこっちに進んでいれば、こういう展開になっていたんだよ』とか」

 

NOVA「まあ、ゲームじゃないドラマでも、ボツになった脚本に書かれた裏設定とか、撮影現場の判断で急遽、脚本から改変された役者のアドリブや監督のシーンカットとかもあるからな。NGシーンとか、脚本と放送映像の違いを比べる楽しさもある」

 

ダイアンナ「ゲームでも、『時間がないので、途中のダンジョンは省いて、一気にクライマックスに行く』というGM判断だってあるわけだ」

 

NOVA「ともあれ、ドリーの村を紹介して、それから敵側の中心人物のザラダン・マーの来歴に移る。本名はザラダン・ドリーだが、魔女っぽい名前は箔がつかないと感じて、魔法の改名儀式でザラダン・マーという名前をアランシア中に浸透させた。今ではザラダン・ドリーの名を知る者は、アランシアにはあまりいない、とある」

 

アスト「お前は何で知っているんだよ?」

 

NOVA「そりゃあ、俺はアランシア人じゃないからな。外部の人間にまでは、改名魔法の効果は働かんのだろう。あと、ザラダン・マーの研究をしていたアランシアの歴史家なんかは、後から知ったりしたんだろうな。ザラダン・マーの世界への影響が薄れたからかもしれないし、名付けたドリーの3姉妹の証言を得たのかもしれない。

「とにかく、ザラダン・ドリーはザラダン・マーとして、師匠や親たちさえ脅かすほどの成長を遂げ、野心を開花させるんだ。黒魔術の世界でも、邪悪さはピンキリで、単なる趣味や便利な生活の手段として研究活用する者もいれば、世界の脅威となるほどの邪悪な所業に邁進する者もいる。師匠殺し、親殺しは悪魔と呼ぶに相応しい罪悪というわけだな。ただ、ザゴールやバルサスは親を殺して、その財産を奪ったが、ザラダンはドリーの魔女たちを殺していない。そうなる前に、運良くイエローストーン金山を発見して、軍資金を得たからな」

 

リバT『モンスターが最初に隔離されていたのが、イエローストーン金山につながるダンジョンですわね』

 

ケイP『覚えておくッピ』

 

リバT『いいえ。忘れてくれて結構ですわよ。モンスターは記憶が消されてますし』

 

ケイP『そうは言っても、背景情報で知った記憶は簡単には消せないッピ』

 

リバT『いいえ、今のはただの夢。モンスターの記憶には残りません』

 

ケイP『何だ、ただの夢かあZZZ』

 

アスト「お、おい。ケイPがいきなり眠ったぞ」

 

リバT『おや、何だか催眠能力が発動してしまったようですわね。これはもしかして、リバTスペリオールになって開花した新能力なのかしら?』

 

NOVA「リバTは元々、夢の世界から生まれたからな。夢を自在に操るナイトメア・ハンターの力を会得したのかもしれない」

 

リバT『この能力があれば、人々を夢の世界に誘い、自由と解放の境地にお連れすることも可能では?』

 

NOVA「あまり悪用するんじゃないぞ。下手な野心を募らせて、悪堕ちすることはこの俺が許さん」

 

リバT『これは、申し訳ありませんでした、グランドマスター。この私めともあろう者が、もう少しで自分を見失うところでした』

 

ダイアンナ「お目付役のリバTが悪堕ちしたら、あたしたちもつられて悪党稼業に舞い戻る可能性もあるんだからね」

 

NOVA「とにかく、ドリーの村から南に半日(これは重要情報だ)のところにあるのがコーヴンの町。そこでイエローストーン金山を発見して裕福になったザラダンは、世界征服の足場固めに協力者(有能な部下)を集めることになる。最初に野心家ながら忠実な巨漢戦士のヴァラスカ・ルーを雇い入れ、次に中立の魔術師ハニカスを引き入れる。ハニカスはトロール牙峠の伝承に通じていて、この地域のエルフの秘密をザラダンに語って聞かせた。それが『虹の池』『スティトル・ウォード』『スティトル・ウォードの煙』の項目だ」

 

ダイアンナ「その辺がよく分からないんだよね。スティトル・ウォードって何?」

 

NOVA「虹の池はクモの森にあると言われる魔法の池で、そこは白髪の森エルフの集落(エルフ語でエレン・ダーディナス)に治められているらしい。好奇心で森の外に出た森エルフのリーハ・フォールスホープがうっかり森の秘密を人間の街(チャリスの酒場)で漏らしてしまい、慌てて自分の村をスティトル・ウォード(エルフの使う青い染料の名前)という誤魔化しデマカセの名前で呼んだら、以降、人間たちの間では、クモの森のエルフ集落をスティトル・ウォードと呼ぶようになったとか」

 

ダイアンナ「嘘の名前が定着したってことか。それで、スティトル・ウォードの煙とは?」

 

NOVA「それが本作の肝だ。エレン・ダーディナスの女王が、神々と契約して授かる魔力を宿した煙らしい。当代女王のエシレスは、理性の神イシシア、言葉の神ユーシリアル、そしてエルフの魔術の神アライアリアンの三柱の神々との契約を果たし、力を得たらしい。ザラダンは自身の修めた黒魔術の力に加えて、エルフの魔術さえ習得すれば世界征服の野望を果たせると考えて、計略を練った」

 

リバT『その煙こそが、本能だけで動く主役モンスターが理性を得て、言葉を習得するゲーム上の大仕掛けですの』

 

アスト「プレイ中に、不思議な煙を浴びてしまうんだな。それで、モンスターのできることが増えて、世界の謎が解明できるようになる、と」

 

ダイアンナ「なるほど。最初はただの野獣と変わらない行動原理だったのが、急速に理性を身に付け、言語を理解する理由づけの設定というわけだ」

 

NOVA「劇的なドラマの転換を成し遂げるには、そういう理由を前から構築していたという伏線が必要だ。伏線なしの行き当たりばったりなのをご都合主義と言うんだが、最近は言葉が一人歩きしているのか、主人公に都合が良いことは例え伏線が張ってあっても『ご都合主義と安易に批判する』ケースが時々見られる。まあ、伏線を読み取れることも物語読解能力の一つなんだろうが、本作の場合は、劇的な展開には必ずと言っていいほど、背景で仕込みが行われているため、後から読み返しても感心させられるわけだ」

 

アスト「その場のノリで超展開……ってのが、ご都合主義で、伏線ありきの超展開はご都合主義ではない、と」

 

NOVA「超展開はサプライズとも言い換えられるが、『こうなると思っていたら、違う展開とか、思いがけない展開になって、しかも腑に落ちる、納得できる』のが良質のサプライズ。逆に、転なしの起承結だと無難で面白みのない、盛り上がりに欠けたまとめ方だな。また、起承転で終わる作劇スタイルも連続ものではあるが、転の見せ方こそが物語の面白さの肝かもしれない」

 

アスト「で、本作の転機になるモンスターの内面の成長を演出するのが、『スティトル・ウォードの煙』ということだな」

 

NOVA「ああ。また、敵の目的でもある。ザラダンはエルフの煙を入手するべく、さらなる仲間を見出した。ヴァラスカ・ルーが連れて来た1人がハーフトロールのサグラフ。ルーがザラダンの副官であるのに対し、サグラフは軍隊の指揮官になれる男だな。当面は訓練所を管理することになる」

 

アスト「いわゆる武闘派幹部って奴だな」

 

NOVA「続いて、ハニカスが知ってるエルフの伝承を語り尽くした後は、用済みとなった。性格的に、あまり悪事には向かないうえ、研究仕事はできても、実務への関心がなさすぎて、使い物にならないと判断されたみたいだ。そこで、ハニカスに代わる知謀派幹部として、ハーフエルフ・ゾンビのダラマスが抜擢される」

 

ダイアンナ「ゾンビなのに知謀派なのか?」

 

NOVA「我々が一般にイメージするゾンビとは違うよな。むしろ、ヴァンパイアとかリッチみたいな(そこまで強力じゃないにしても)、意志を残したアンデッドと考えるといいだろう。何にせよ、良心や慈悲を一切持たないサディスト気味な実務家のダラマスをザラダンは気に入って、イエローストーン金山の管理人に任命し、さらにハニカスの研究所もダラマスの管理下に置くことにした」

 

ダイアンナ「そうやって、ザラダンの悪の帝国が成長して行くんだね」

 

NOVA「この辺は、ザラダンの徹底した組織構築の物語が読めて、悪の組織の運営方法が学べて面白い。大事なのは『資金』『人材』そして『大志もしくは野望』だな。ともあれ、残り2つの章題は、エルフの秘密をうっかり外の世界に漏らしてしまったリーハさんの子孫のダーガ・ウィーズルタングが、また外の世界に出て行ったら、ザラダンの《魔法生物支配》の呪文をかけられてしまって、〈スティトル・ウォードの煙〉を盗み出す役割を果たしてしまったこと。それから、煙を盗んでも使い方が分からないので、やはりエルフの村を攻略する必要がある、と決意したザラダンが、東の地から飛来していた空中戦艦ガレーキープを強奪した話だな。地上からは魔術で巧妙に隠された森の中のエルフ村を探すことは困難だけど、空からなら発見も容易いと考えてのことだ」

 

アスト「ザラダン・マーの野望が実現しそうになる道程が丁寧に解説されて、その計画を阻止するために冒険者が派遣されたりはしないのか?」

 

NOVA「結果的に、そういう冒険者はモンスターの餌食になってしまうんだな。何も知らないモンスターが、しかし運命に導かれるように、邪悪なザラダン・マーの計画を覆すまでの物語が、こうして始まることとなる」

 

モンスター覚醒

 

 身体の痛みは耐えがたいほどひどかった。きみは力をふりしぼって片目を、ついでもう一方の目をあけた。最初はぼーっとして何も見えなかったが、何度か目をしばたたかせるうちに、ようやくあたりの様子がわかるようになった。薄明かりのなか、汚れた床と石の壁が見える。突然、痛みがぶり返してきた。頭がぐらぐらする。きみは目をきつく閉じ、うめき声をあげた。痛む頭を両手でかかえ込む。荒れた指先が鱗のある額にあたり、カサカサと音をたてた。

 

リバT『……ということで、お兄さま、出番です。目を覚まして下さい』

 

ケイPモンスター『ケピッ?』

 

リバT『私めの言葉が分かりますか?』

 

ケイP『ケピッ』

 

リバT『あなたは今からモンスターです。よろしいですね』

 

ケイP『ケピピン

 

リバT『言葉が通じているようで何よりです』

 

アスト「通じてねえよ。ケイPの言葉、オレたちには何を言ってるか、さっぱりだ」

 

リバT『大丈夫です。いずれ普通に喋れるようになりますから。私めとお兄さまの間でコミュニケーションが通じていれば、攻略には何の支障もありません』

 

アスト「本当に? オレに分からないってことは、読者にも分からないってことだぞ。何しろ、オレは元・読者Aだからな。ここは読者代表として明言する。プレイヤーのモンスターが何を言ってるか分からなければ、ゲームは破綻する」

 

リバT『しかし、ゲームブック「モンスター誕生」は最初、モンスターは人語を解さないのです。そのプレイ感覚を再現するには、読者の皆さんもモンスターの言葉が通じない方が臨場感あふれてよろしいのでは?』

 

ダイアンナ「大丈夫だ、アスト。こういう時のためにダディーがいる。ダディーは時空魔術師であるとともに、言霊魔術師という設定だ。ダディーがいれば、モンスターの言葉ぐらい通訳してくれ……って、ダディーがいない?」

 

リバT『先ほど、「背景の話をしたから、俺の仕事は終わった。あと、よろしく」と思念を残して、辞去しましたが?』

 

アスト「聞いてねえよ! 思念じゃなくて、言葉で直接伝えろよ。まったく、肝心なところで言葉を惜しみやがって」

 

リバT『とにかく、話を続けます。この主役モンスターの外見は、読者が感情移入するために、外から見えるようには描かれていません。あくまでモンスター視点で分かる範囲を断片的に散りばめて、読者に想像力を促す書き方なんですね。曰く、「ふしくれだった指」とか、「きみの背中には鋭い棘が一列に生えていた」とか、「重い片足が持ちあがった。どしんという音をたてて足が地面に下りる」とか、最初のパラグラフの文章からして、これまでとは異なる肉体描写、感覚描写、内面描写が細かく積み重ねられていきます。

『そして、小柄な男(ドワーフ)が寝ているのに気づき、全身に、わけのわからない感情の波が駆け抜けるんですね。怒り? 憎しみ? 恐怖? 好奇心? 飢え? それとも同情? モンスターは知性がなく、言葉を解しない。だけど、プレイヤーは知性と言葉を備えていますし、言葉で説明されないと物語が伝わらない。だから、『分からないという情動を、分かる言葉で描写するための文章的工夫』が凄いんですよ。ゲーム的な面白さではソーサリーが最高傑作ですし、ゴシックホラーという雰囲気を醸し出す点では「地獄の館」が雰囲気がいいですし、パラグラフ構造と情報フラグの組み替えで4種のストーリーが展開する緻密さでは「サイボーグを倒せ」が優れていますが、主人公がモンスターという特異な設定を臨場感たっぷりに描き上げる描写力、没入感覚では当作がベストと言えましょう』

 

ダイアンナ「とにかく、言葉の分からないモンスターの気持ちを追体験しろってことだな。で、ドワーフはどうなるんだ?」

 

リバT『巨大な爬虫類じみた人型モンスターの接近に、目覚めたドワーフさんは、恐怖を顔に浮かべて、手にした剣を突きつけてきます。ここで選択肢です。「敵意がないことを示す」「話しかける」「重い足で相手の首を踏みつぶす」 さあ、選んで下さいませ』

 

アスト「普通は話しかけるだろう」

 

ダイアンナ「いや、言葉は使えないんだろう? だったら、身振り手振りで敵意がないことを示すのが正解じゃないか?」

 

ケイP『ケピピン、ケピピン、ケピピピン

 

リバT『分かりました。きみが足を持ち上げると、ドワーフは恐怖の叫び声を上げます。「ヘチテアツ、キル!」と叫んで剣で足に切りつけて来ますが、固い鱗に守られた足は傷つくことなく、一瞬後、ドワーフは踏みつぶされた死体となりますね』

 

アスト「どういう展開なんだ、これ。解説してくれよ」

 

リバT『通訳しますと、ドワーフさんは「ホットイテ、クレ!」と言ったようですね』

 

アスト「いや、ドワーフじゃなくて、ケイPの方をだな……」

 

ダイアンナ「『放っといてくれ!』か。言語依存の暗号は、翻訳が大変だって話だが、他にもそういう暗号があるのか?」

 

リバT『ざっと数えると、14ヶ所にあるみたいですね。今のはパラグラフ185番ってことで』

 

アスト「重い足で相手の首を踏みつぶしていたんだな」

 

リバT『他の選択肢だと、怯えたドワーフに攻撃されて、2点ないし3点のダメージを受けてしまいますからね。救いの手を差し伸べようとしたら、攻撃されたので、相手の体を鉤爪でずぶずぶとつかみ上げながら締め殺す形になりますし、話しかけると、「エルナ、タオヂキト!」と妙な言葉で叫ばれて、相手の体をつかみ上げて、あばら骨をへし折って殺す形です』

 

ダイアンナ「『俺に近づくな!』って言ってるのか?」

 

リバT『さすがはクイーン、聡明でいらっしゃる。初見では読めない暗号文を読めるようになると、解読するのについつい夢中になって、本文の描写を流し読みしてしまい、十分に味わえないという問題がありますね。選んだ選択肢によって、ドワーフさんの死に方に違いがあることは、今、初めて認識しましたよ』

 

ダイアンナ「とにかく、ドワーフはどうあっても殺してしまうわけだな」

 

リバT『はい。プレイヤーの意思にかかわらずです。続いて、「急いでここから離れる」か「ドワーフの死体を隠す」か「死体を調べる」かの選択肢が出ますが、どれを選んでも無意識に体が勝手に動いて、死体を調べてしまいます』

 

アスト「自分の行動を自分でコントロールできないんだな」

 

リバT『理性あるプレイヤーの自由意志では行動できない、理性なきモンスターの挙動を味わってください。何にせよ、指先の力を抜くと、飛び出していた鉤爪が引っ込んで、ぎこちなくドワーフの死体を漁ります。腰に下げた革袋から、キラキラ光る金属の円盤が散らばりますが、モンスターは金貨というものを知らないので、その場に捨て置きます。代わりに、何かが書き込まれた皮(羊皮紙)に興味を持って、持って行くことになります。「きみはまだ気づいていないが、この皮きれに記されているメッセージは、これからのきみの冒険に重要なものである」と作者のジャクソン様からありがたい忠告を受けて、ゲームのプレイヤー視点に戻ることになります』

 

 すでに気づいているだろうが、きみの意志はきみの肉体の行動に大した影響を与えることができない。また、きみが何者であり、自分に何ができるかもはっきりとはわかっていない。冒険を進めるにつれて事態は変化するかもしれないが、いまのところきみの行動を支配しているのは気まぐれな本能の力だ。

 

リバT『と言うことで、次の選択肢は、東西に伸びる通路の真ん中に立って、東か西かをダイス目(1D)で決めることになるわけです』

 

ケイP『ケピッ(コロコロ)』

 

リバT『出目2ですか。西ですね。どうやら、お兄さまは命拾いをしたようです』

 

ダイアンナ「って、東へ行けば、死ぬのか?」

 

リバT『はい、東へ進み続けると、まちがいなく死ぬことになります。最初に4〜6で東に向かい、扉に行き当たります。次に1Dで、1〜2を出すと引き返す決断ができてセーフですが、3以上だと扉を開けようとして、中からの吠え声で警戒心を覚えます。次の1Dで、1が出ると引き返せますが、2〜6だと闘争本能が勝って、鉤爪獣の部屋に飛び込んでしまいます』

 

ダイアンナ「確か、バルサスの要塞でも登場したな」

 

リバT『はい、技術点9、体力点14のタフな敵ですが、そんなことは問題ではありません。この鉤爪獣パラグラフ(170番)へ来てしまうと、次は北と西に通路が分かれます。そこで1Dで4〜6を出して西ルートへ進まなければ、死が確定してしまうのです』

 

ダイアンナ「ええと、東の鉤爪獣の部屋から北へ行くと、死ぬってことかい」

 

リバT『ええ、最初に2分の1で東、その後、3分の2、6分の5、そして2分の1を掛け合わせて、36分の5の確率でプレイヤーの意思にかかわらず、本能のままに動いた結果として死んでしまうということですね』

 

ダイアンナ「6分の1よりも、やや少なめな確率で死んじゃう、と」

 

アスト「14%ぐらいだな」

 

リバT『北ルート(408)に入ってしまうと、その後の分かれ道ではどちらを選んでもゲームオーバーという顛末に。西に進んでロープを引っ張ると、十数本の槍が壁から突き出すトラップで死亡。東に進むと、闇エルフの射手に射抜かれて死亡。この死亡する場所をマッピングすると、以下の通りです』

 

槍の罠で死ー408ー闇エルフの矢で死

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  西へーー鉤爪獣

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西へー399ーー

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  スタート地点

 

ダイアンナ「だけど、ケイPは399から西へ運よく進めたから、死は免れたわけだ」

 

リバT『西へ向かって、理性を獲得するお話は次回にて。このままだと、イチロー兄さまは人の言葉も話せず、ダイスを振ってランダムに動くだけの理性なきモンスターでしかありませんからね』

 

ケイP『ケピッ』

 

(当記事 完。次回、理性の煙の話へつづく)