果てしなき航海へ
アスト「……ということで、医務官のハイラスを失った我がトラベラー号は、重苦しい雰囲気のまま、当初の予定地の赤い惑星へ向かうのだった」
リバT『そこで青い惑星に向かわなかったために、絶望のゴールを迎えることになったんですね』
アスト「たった一つの選択肢を間違えただけで、攻略不能になってしまうんだな。とりあえず、最初から正解が分かるわけじゃないから、結果よりも過程を楽しむのがゲームブックの醍醐味ってことさ」
ダイアンナ「では、赤い星のイベントを話してもらおうじゃないか」
軍事惑星ダー・ヴィルの話
アスト「傷心のままに我々が向かった赤い星では、宇宙艦隊のドム司令官と名乗る男と連絡がつく」
ダイアンナ「スカート付きで、大型バズーカを持っていそうな名前だな」
リバT『黒い三連星ですね』
アスト「我々がいるのは宇宙世紀じゃねえ。とにかく、先方の要求に応じて、指定された座標に転送したんだが、その際に事故が起こって、オレの体は身長2m以上のダー・ヴィル人になってしまったんだ!」
ダイアンナ「はい? どういうことだ?」
アスト「科学官のアニーの分析では、ダー・ヴィル人の士官が立っていたところにビーム着陸してしまったために、オレの体と融合してしまったらしい。いわゆるフュージョンだな」
ダイアンナ「アストとダー・ヴィルが融合したってことは、これ以降はダーストと呼ぶべきか」
アスト改めダースト「うおっ、気づけば、オレの名前がダーストに?」
リバT『何だかゴミクズみたいな名前ですね』
ダイアンナ「ダイヤモンド・ダストだったら綺麗なんだけどね」
ダースト「ちなみに科学官の判定に失敗すれば、何が起こったか即座に原因が分からずに、ダー・ヴィル人がこちらの策略と誤解して、バトルが発生する可能性があった。ここでは科学官や技官の判定次第で、オレの生死が決まってしまう」
ダイアンナ「つまり、あたしとリバTが大切だってことか」
ダースト「最終的には、ダー・ヴィル人の提案した『転送ビームによって融合したのなら、2本の転送ビームを駆使して、転送先を別座標に設定することで分離できるのでは?』作戦を実行することになった。他の方法はいずれも上手くいかないんだな」
ダイアンナ「そのやり方なら上手くいったのか」
ダースト→アスト「ああ。おかげで元通りだ。ドム司令官も、部下が無事に帰ってきたことで喜んでくれた。いやあ、1つの体に2人の異なる意思が宿るって気持ち悪い体験だったなあ」
ダイアンナ「それだと、仮面ライダーWはどうなる?」
リバT『大体、アストさんだって、クイーン・ダイアンナと合体変身して、ウルトラマン・アースになるんだから、気持ち悪い体験なんて言わないで下さい』
アスト「それもそうか。とにかく、転送装置の実験事故でハエと融合したりしなくて良かった、と思いつつ、ドム司令官とはトラブルに際して、双方の誠意ある協力と健闘を讃えて、友好的に別れた」
ダイアンナ「というか、ダー・ヴィルには情報を求めて寄ったのに、その件はどうなったんだ?」
アスト「トラブル解決に夢中になって、すっかり忘れてしまったな」
ダイアンナ「結局、赤い惑星はただのトラブル解決だけだった、と」
アスト「次の選択肢は、大きな灰色惑星か(253)、別の目標か(92)の2択だが、別の目標のパラグラフは、前回の光点と同じ番号で、ガンジグ帝国連邦のムク・マル司令官の宇宙巡洋艦と遭遇するらしい。92番ではなく253番へ向かうと、途中で宇宙港が見つかるが、どうも疫病が蔓延しているらしく、近づかない方がいい」
ダイアンナ「この宇宙は、やたらと疫病が発生しているみたいだな」
アスト「コロナ禍のタイミングだと、妙にリアルでタイムリーに感じるぜ。とにかく、疫病が怖い宇宙港は避けて、さらに先の灰色惑星(109番)へ向かったわけだ」
鉱業惑星マリニの話
アスト「灰色惑星の名は鉱業惑星マリニ。マリニ鉱山出張所のクテイトという男を窓口に、情報を教えてもらえる」
・この鉱山はマリナイトという貴重な鉱石が主な資源である。
・現在は、鉱夫の娯楽である闘技会の最中なので招待したい。
アスト「そしてビーム着陸のための座標を教えてくれるんだが、電波障害のために末尾の数字が85か83かはっきりしなかったので、どちらかを選ばないといけない」
ダイアンナ「面倒くさそうなので、どっちもスルーして、他の星を目指すというのは?」
アスト「それも可能だが……そして、それが正解なんだが、まあ、オレは83(パラグラフ57番)を選んでクテイトに上手く迎えられた。85(パラグラフ32番)を選んでいれば、事情を知らない警備兵に襲撃されて捕まったりもする。その結果、闘技場送りにされたりするんだな」
ダイアンナ「クテイトと上手く接触すれば?」
アスト「結局、闘技場送りにされる。実は、最初からオレたちを『闘技会を盛り上げるためのスペシャルゲスト(生け贄的な外部の闘士)』として扱うつもりだったらしい。そんなわけで、3人の衛兵を上手く倒して脱出するか、闘技会で殺人ロボットと戦うかの選択となる。闘技会に出ると、表紙の絵柄のような場面になるわけだ」
アスト「3人の衛兵のデータは、技術点7〜8、体力点7の倒しやすい連中。ただし、相手の武器が神経棒といって、ダメージを決める際に1Dで4〜6を出せば、通常の2点ではなくて4点を削ってくる。一方で、闘技場で殺人ロボットと戦うことになったら、技術点10、体力点4の強敵と戦うことになる」
ダイアンナ「技術点は高いけど、体力4しかないなら、倒すのは簡単そうだな。2回攻撃を当てればいい」
アスト「実はそうでもないんだ。ロボットの装甲が硬くて、ダメージを決める際に1Dで5〜6を出せば、1点ダメージを与えられる。1〜4なら装甲に阻まれて無傷なので、期待値的には12回、攻撃を与えないと倒せない仕様だ」
リバT『3分の1の確率で1点ダメージですから、体力点4を削るのに、4×3で12回という計算ですね』
アスト「まあ、オレとカニコングで傷つきながらも、頑張って倒したんだけどな。オレの本作の冒険で、一番苦労したバトルだった。実質的にラスボス戦って感じだったな。殺人ロボットを倒したオレたちは、観客の拍手喝采を受けて、賞品の大量のマリナイトと自由を勝ちとることができた。クテイトの目的も、闘技会を盛り上げることだったから、オレたちを称賛して欲しい情報(帰還するためのブラックホールの座標は083星区にある)を教えてくれる」
リバT『結局、その情報は間違いだったのですけどね』
アスト「火吹山における偽鍵の数字みたいなものだな。もちろん、この数字が本物か偽物かは、プレイ中は試してみないと分からなかったので、オレたちは『試練を切り抜けて、ついに帰還の手がかりをゲット!』と喜び勇んだわけさ」
ロール・ジャミル宇宙港
アスト「マリニの闘技場での試練を果たして自由の身になった我々は、次にロール・ジャミル宇宙港に到達した。この宇宙港が最後のイベントとなる」
リバT『宇宙港に入ると、ゲームの攻略には失敗するんですね。本ゲームブックのクリア条件その2は、宇宙港に入らずに、もう一つの選択肢である黒い惑星(331番)を目指し、その先にある灰緑色の惑星テリアルに向かうことですから』
ダイアンナ「クリア条件その1は青い惑星ジョルセンで、条件その2は灰緑色の惑星テリアルか。覚えておこう」
アスト「ジョルセンでブラックホールの正しい空間座標を手に入れ、テリアルで正しい時間座標を手に入れることが、本ゲームブックのクリア条件だ。オレはそれを後から知ったんだが、どちらの星にも寄らなかったから故郷の宇宙に帰還できなかったわけだな。まあ、先の話は置いておいて、ロール・ジャミル宇宙港のイベントだ。
「ここに入港するためには、代金として黄色の鉱石粉末か、マリナイト鉱石か、蛍光性の緑色金属が必要なんだが、オレたちは闘技場で勝ったから、マリナイト鉱石を手に入れていた。なお、アイテムを持っていない場合、ランダムで乗組員を差し出すことで宇宙港の利用許可が得られる」
ダイアンナ「乗組員を差し出すって、酷くないか?」
アスト「乗組員リストはこんな感じだ」
・主要キャラ:科学官、医務官、技官、保安官
・その他キャラ:給食担当官、管理補佐、娯楽担当官、掃除係、船の美容師、電子工学専門技師、航宙士官、船で飼っている猫
ダイアンナ「猫なんて飼っていたんだ」
アスト「いたんだな。このパラグラフ262番を見るまで知らなかったんだが、各キャラにつき、D6を振って6が出ると、宇宙港が欲しがっている人材として提供を求められる。ただし、ダイス目の結果で3人以上の提供を求められた場合、交渉決裂になってしまう」
リバT『12名の中から、6分の1の確率で宇宙港に残る人間が選ばれるのですから、期待値的には2名を失うことになるのですね』
ダイアンナ「で、誰が残ることになったんだ? まさか、あたしってことはないだろうな」
アスト「いやいや。マリナイト鉱石を支払ったんだから、乗組員を差し出す必要はなかったんだよ。いずれにせよ、宇宙港では酒場で異星人とケンカしたり、船の修理を依頼したりもできるが、一番重要なイベントは、責任者のド・アウスーEと対面して『77恒星日』に別の宇宙と接触できる可能性を知ることだな」
ダイアンナ「ああ。宇宙港でも時間情報が手に入るのか」
アスト「結果的には、偽情報だったけどな。ともあれ、この宇宙港を出ると、パラグラフ番号324番に到達する。この時点で、目的のブラックホールの空間情報と時間情報をゲットしていなければ、ゲームオーバーの339番に到達することになる」
リバT『間違えた情報でも339番送りなんですけどね』
アスト「とにかく、オレがゲットした空間情報は83、時間情報は77番だ。これを引いたパラグラフへ向かうよう指示されて……6番へ向かう。そうすると……」
リバT『おめでとうございます。あなたの宇宙船トラベラー号は339番に向かい、亜空間から永久に出て来れなくなりました。ウルトラマンダイナの最終回みたいに、光の彼方へ突入して、バッドエンドを迎えることになりました。めでたしめでたし』
アスト「ウルトラマンダイナはバッドエンドじゃねえ。違う宇宙でもヒーローとして戦い、全力全開で今も頑張っているんだ」
ダイアンナ「そう言えば、ダイナの主人公の名前はアスカだったな。アストに似てる」
アスト「それを言うなら、お前はもっとストレートにダイナっぽい名前じゃないか」
ダイアンナ「よし、そう言うことなら、アストが果たせなかった本作の攻略は、あたしが後を引き継ぐことにしよう。宇宙船トラベラー2世号の冒険が、ダイアンナ船長の仕切りで次回から展開するってことで」
アスト「つまり、プレイヤー交代ってことか。分かった、アニー。次回の記事はお前が主人公だ。後はお前に任せた」
(当記事 完)