違う世界の盗賊都市の冒険
アスト「さて、今回から黒い砂(ブラックサンド)を元ネタにした、ネグラレーナの都市冒険をスタートだ……と言いたいが、ドラゴンと闘技場で戦って殺されてしまった(涙目)」
ダイアンナ「そっちの盗賊都市には、闘技場なんてあるのか」
アスト「ああ。闘技場といえば、カザンとか、ロマールとか名高い場所がいろいろだが、FFだと、そこまで大規模なのはなかったか?」
リバT『いえ、「さまよえる宇宙船」でありましたよ』
アスト「ああ。そう言えば、それがFFシリーズの初闘技場になるのか」
ダイアンナ「あと、これも闘技場のシーンだと思うが」
アスト「闘技場をテーマにあれこれ語るのも一興だが、とりあえず物語の最初から語るとするか。まず、今回のキャラは決して弱くはない。こんな感じの出目だった」
●技術点9
●体力点23
●運点11
ダイアンナ「技術点が若干、低いと思うがな」
アスト「問題ない。初心者御用達の武闘型は、最初から技術点12からスタートできるので、ほぼ最強能力値でスタートできたわけだ」
ダイアンナ「それなのに負けたのか?」
アスト「闘技場で戦ったドラゴン、電撃竜は技術点11、体力点15の強敵だったんだよ。それでも、あと一撃で勝てるところまで追いつめたんだ(こちらの残り体力は5)。それなのに、電撃ブレスで6点も削って来やがって、運だめしによる回避も失敗して、呆然とゲームオーバー。まあ、出目の悪さで勝てなかったんだ。こっちの方が技術点1差で勝ってるのに、出目が1足りなくて競り負けたことが3回もあったり、ここまでプレイヤーのリアルラックがダメだったバトルはなかったと思う」
ダイアンナ「そもそも、盗賊キャラが闘技場でドラゴンと戦わされるシチュエーションに追い込まれるのが悪い」
アスト「いや、オレが聞いていた対戦相手はグリフォンだったんだ。それなら、まだ何とかなるかな、と思ってたら、グリフォンの調子が悪いので代わりにドラゴンと戦ってもらいますだと? フザケるな、と思ったね」
リバT『その逆境を跳ね除けるのが、勇者ってものでしょうに』
アスト「勇者じゃなくて悪かったな。まあ、今回は、オレ(のキャラ)がまず1回死ぬまでの物語を話すとしよう。頑張ってリベンジするつもりだがな」
自由度の高い街の散策
アスト「さて、FFシリーズの都市冒険だと、歩く街路、道筋、名前の付いた通りを選択しながら、事件に巻き込まれたりするのが定番だが、本作は同じパラグラフ選択でも、自由に目的地を選びながら様々な手がかりを集めていく形になる。最初に向かえる場所は以下のとおり」
●武具店
●公衆浴場
●大学
●博物館
●教会または墓地
●闘技場
●賭博塔
●処刑場
●造船所
●牧場
●医院
●幸運の泉
●魔法の道具店
●人の多い表通り
●スラム
●酒場【奇妙な猫の瞳】亭に待機してる
アスト「全部で16種類も選択肢があって、昼間の間に3ヶ所で散策や調査活動をして、夜になると盗賊ギルドの指令でお仕事をするシステムだ。昼間の間にうまく情報収集ができていれば、夜の仕事が楽になるし、散策の間に得た手掛かりや知り合いになったNPCとのコネが、その後の物語の成否に影響したりもするわけで、FFとは異なる場所移動アドベンチャーゲームっぽさが少し新鮮に思えた。戦闘システムや運だめしなどの基本ルールはFFと同じなのに、パラグラフ選択の手法が違うだけで、プレイ感覚がずいぶん違うんだなあ、と感じたり」
ダイアンナ「通りに沿って適当に歩いていたら、物語が進展していき、同じ場所には何度も行き来できないのがFFシリーズの特徴だが、こちらは同じ場所に何度も行けるんだな」
アスト「日数管理と、移動回数の制限で、物語の進行をコントロールしている形だな。あと、手持ちの食料は2食で、1食で4点の体力を回復できる。それと背負い袋、剣1本、金貨10枚が最初の所持品だ。主人公は昔馴染みの女盗賊ニナに誘われて、ネグラレーナの街にやって来た。そして酒場【奇妙な猫の瞳】亭で待ち合わせをしていたんだが、『1時に会おう』と言われたのを、昼の1時と思い込んでいたんだな。ニナは酒場にいなかった」
ダイアンナ「もしかして、夜の1時ってことかい」
アスト「彼女のあだ名が『夜の妖精』だから、夜だと気付くべきだったと反省し、それまでの時間をどう使うかと思いめぐらせるのがパラグラフ1番なんだな。確か、最初の仕事が『下水道』『医院』『教会』絡みの物になると聞いていたので、それも踏まえて街のどこに行こうかという話になる」
ダイアンナ「下水道ってのは、選択肢にないよね」
アスト「だから、【教会または墓地】と【医院】の2択なんだが、別に他の場所を先に回ってもいい。というか、このゲームの初期プレイは、16種類の目的地をあれこれ回って、どこでどんな情報が得られるかを確認するのが攻略法だと思うな」
リバT『攻略記事を書くなら、先に全部回って、最適解がどれかをチェックしてから、改めてプレイするというのが効率いいですね』
アスト「でも、それだとゲームとしては邪道だろう? 答えを見ながら、問題を解くようなものなので、今回は攻略の効率優先よりも、実プレイのゲーム体験の方を重視するぞ。そして、最初に選んだ選択肢は【人の多い表通り】だ」
ダイアンナ「盗賊が表通りを歩いていいのか?」
アスト「いや、昼間からコソコソしている方が目立つだろう? パラグラフ1番では、女領主のへレーナ・マキシミリアン様が白馬に乗って、パレードをしているんだ。暴走馬車に乗って顔を見せないどこかの領主と違って、このへレーナ様は民衆から愛されている公明正大なお方だと聞いている」
ダイアンナ「それなのに盗賊都市の異名なのか?」
アスト「街の歴史を見ると、元々は【闘技場】を中心とした荒くれ者やならず者、そして宗教都市ロング・ナリクの堅苦しさから逃れて、自由を満喫したい者が集まった海辺、川辺の交易都市らしい。800年の歴史を誇る街みたいだが、この辺の石材は黒いものが多くて、街のイメージも黒がメインだった。しかし、6年前に領主の後を継いだへレーナさんは、街の暗いイメージを一新するために、新たに新市街を建造し、そちらは遠くから運んだ白い石材で固めていると聞く。黒い旧市街と、白い新市街の闇と光が混在する都市が現在のネグラレーナなんだな」
リバT『だから、物語も昼と夜の2部構成で展開されるのですね』
アスト「それで、【表通り】を歩いていると、運だめしか技術点チェックで成功すれば、道行く人から財布をスリ取ることができる。金貨13枚をいきなりゲットだぜ」
ダイアンナ「犯罪者じゃないか」
アスト「そうだが、何か? 普段の冒険者生活では町中を歩いていて、運だめしに失敗すれば、スリ取られるイベントが多いが、自分からスリ取るイベントは新鮮だぜ。このまま、スリだけで稼いでも食って行けそうだ」
ダイアンナ「いや、それじゃ冒険物語として成立しないだろう? 大体、いつまでもスリを続けていけるとは限らないし」
アスト「オレも、スリは一回限りかな、と思っていたんだ。しかし、この【表通り】は何度も来ることができて、その度、スリに挑戦できる。技術点12だと、失敗することはないから、ずっとスリを続けて、1日平均36枚の金貨を稼ぐプレイも可能だな」
ダイアンナ「スリばかり延々と続けていても、物語としてはつまらん」
アスト「確かにそうだな。目標金額というのがあるのなら、効率よくお金を稼げるイベントは大事だが、夜の仕事のための情報収集にも励まないといけないわけで、オレは教会に出かけたんだ」
ダイアンナ「教会でお祈りでもするのか?」
アスト「懺悔室で祈ると、運が2点回復するんだな。今、初めて知った」
ダイアンナ「教会で祈ったんじゃないのかい!?」
アスト「3つの選択肢があるんだよ。1つは『懺悔室で祈る』んだが、オレは残り2つを選んだ。1つは『司祭と懇意になる』で、それを選ぶと【ランカスター司祭のコネ(4)】が習得できる。このコネを集めることが情報収集になっていて、パラグラフ・ジャンプの材料になるんだな」
ダイアンナ「必要なときに必要なコネを持っているかどうかが、イベント攻略の鍵だと」
アスト「どこで、どんなコネが習得できて、それが何のイベント解決に役立つかを調べるのが、本作の攻略ってことだな。そして、司祭と懇意になるだけで一手番が終了したので、もう一手番使って、『墓場を歩いてみる』を選んだ。どうやら最初の仕事は、墓荒らしに関係しているようなので、下調べが大事ってことさ」
ダイアンナ「墓荒らしかい。あまり褒められた仕事じゃないねえ」
アスト「だったら、墓の副葬品に宝石が納められていたら?」
ダイアンナ「うっ、欲望天使と倫理悪魔が対決して、欲望天使が勝つ未来が見えた」
リバT『欲望天使と倫理悪魔って何ですか? 普通は逆でしょ!?』
ダイアンナ「と、とにかく、宝石は正義だ。正義が墓に埋葬されるようなことがあってはならない。正義の光は解放してやらないと」
リバT『物は言いようですが、解放は悪くありませんね。では、頑張って墓荒らしの準備を整えましょう』
アスト「い、いや、それなんだがな。墓場を歩いていると、そこに秘められた危険に気付くんだ。ノーフォーク卿の一人娘さんが、流行り病で亡くなった父親の墓の前で泣いているんだな。そこで【墓場(13)】のコネが得られるんだ」
ダイアンナ「墓場とのコネって何だよ?」
アスト「墓場で情報聞いたってフラグなんだろうが、コネって表現が変だって言い分は分かる。しかし、本作のゲーム用語ということで納得してくれ。今、大事なのは、ノーフォーク卿の墓が流行り病のウィルスに冒されているってことだ。知らずに開けると、病に感染して酷いめに合う仕掛けとなっている」
リバT『解放するのは大事ですが、病原体を解放するのは賛成できませんね』
一夜めの仕事(墓場の盗掘)
アスト「そんなわけで、昼間の行動が終わったら、パラグラフ100番に到達する。そこでは、セエラ伯爵夫人という名前をチラッと聞いてから、定宿兼酒場の【奇妙な猫の瞳】亭に帰って来た。やがて、夜1時。営業を終えた酒場は裏の顔を見せる。盗賊ギルド【オッドアイ】だ。顔見知りのニナとようやく再会し、挨拶を交わして、ギルドマスターのお姉言葉なアレハンドロに紹介される。オレも【オッドアイ】のメンバーとして、まずは一仕事手伝わせようって話になった」
ダイアンナ「最初の仕事が墓荒らしかい?」
アスト「それが一番簡単らしい。2つめが、下水管理人を守って下水道の調査をする護衛任務。3つめが、麻薬取引とのこと」
ダイアンナ「護衛任務が楽そうだな」
アスト「そうかな? めんどくさいネズミ退治をさせられるぞ。一度でも噛まれると、病気に感染するらしい」
ダイアンナ「病気はどうやったら治せるんだ?」
アスト「おそらく【医院】で金を払えば、治療してもらえると思うが、好き好んで病気になる選択肢を選ぶ必要もないだろう。事前調査をしたんだから、盗掘に行くぞ。というか、すでに行ったんだな」
ダイアンナ「で、宝石は見つかったのか?」
アスト「まあ、待て。その前に重要な話があった。ニナから聞いた情報なんだが、以下の件がこのゲームブックの大筋に関係するようだ」
●我々のギルド【オッド・アイ】には、【ホークウィングス】というライバルギルドがいて、【鷹の翼】亭という宿を拠点にしている。
●両ギルドは抗争を広げて、何人かの死者も出たので、お互いに刃を収めて仲直りしようという話になった。いや、いっそのこと、ギルド同士が合併するという話でどうだ?
●合併の際に、どちらが主導権をとるかを決めるために、街で暗躍している怪物商人ナドラーを確保した方の勝ち、としようではないか?
●怪物商人ナドラーは、危険な怪物を街に持ち込んで、売買して儲けている悪徳商人である。盗賊ギルドに所属せずに違法商売をしているので、どのギルドからも目の敵にされているが、どこに居を構えているのかは謎である。
ダイアンナ「なるほど。ギルドの抗争に勝つために、怪物商人とやらを捕まえないといけないわけだな。そのために情報収集を頑張る話というわけだ」
アスト「その前に、【オッド・アイ】のために夜の仕事を成功させて、自分自身の信頼を勝ち得ないといけない。ギルド間の抗争に手を貸すのは、その後の話だ」
ダイアンナ「だから、墓荒らしを頑張って、宝石をゲットしようってことだな。死者が宝石を持っていても仕方ない。宝石の光は解放してやらねばな」
アスト「別に、墓の中に宝石があると決まったわけじゃないからな。とにかく、初心者向きという盗掘ミッションを引き受けた。オレは別に初心者ではないが、この街では新参者だからな。勝手が分かるまでは、慎重に振る舞うのが吉だと判断したわけさ。
「昼間に下調べをした墓場に、ニナと2人で向かうと、そこには修道士の格好をした【クシャン侍従(19)】という男がいて、手下2人を連れていた。彼が今夜の仕事の協力者ということで、墓荒らしの仕事が始まった。
「しかし、その前に例の流行り病の件を忠告してやる必要がある。墓場のコネ番号13番に48を加えた61番に向かうと、ノーフォーク卿の墓を避けようって話になって、安全に盗掘作業ができる。もしも、その情報を持っていなければ、卿の墓からゾンビになった遺体が飛び出して来て、バトルしなければいけないし、倒しても疫病に感染してしまうようだな」
ダイアンナ「情報がなかった場合のパラグラフも一応、読んでみたんだな」
アスト「まあ、自分の選択が正しかったことを知るには、間違った選択をした場合の結果をチェックする必要があるからな。とにかく、ゾンビとか疫病は見て見ぬふりをしたというか、盗賊としての勘で避けて、無事に盗掘作業を終えたオレたちは、さあ撤収だ、という頃合いになって、2人の巡視兵が松明を持って近づいて来ることに気づいた。だから、オレがこう言ったわけだ。『奴らはオレが相手する。お前たちはお宝を持って、とっととアジトにズラかれ』とな」
ダイアンナ「おお。自分の身を犠牲にして仲間を逃がすとは、見上げた心意気だ」
アスト「いや、犠牲になるつもりはないぞ。ただ、オレの技術点は武闘型だから12点。滅多なことでは戦いに負けることはない、と判断したまでだ」
ダイアンナ「ドラゴンに負けて死んだのは、どこの誰だっけ?」
アスト「3日めの夜の仕事の話だ。初日で死んだわけじゃない。とにかく、相手は技術点8とか9とかの巡視兵だ。不意をついて、奇襲したこともあって、ろくな抵抗もできずに気絶させることに成功(殺しはしていない)。おかげでその夜の仕事は成功。報酬は金貨10枚と、ギルドからの信用だ。仲間を逃がすために、自らを囮にする漢気のある奴と思われたことだろう」
ダイアンナ「というか、腕っぷし自慢の脳筋盗賊ってことじゃないか?」
アスト「いや、流行病の情報を得たおかげで、危険は避けれたんだぜ。とにかく、次の夜の仕事は【公衆浴場】だと、ニナが教えてくれたから、翌日の調査場所はその辺を調べることにしたわけさ」
※1日め:盗掘成功♪
2日めの調査(3回調べたら8へ)
アスト「さて、2日めの調査は、【公衆浴場】に向かうのがセオリーだな。だが、オレはまず【医院】と【スラム】に向かったんだ」
ダイアンナ「どうしてさ?」
アスト「1日めの仕事で調べ損ねていたからな。【スラム】は下水道に通じているかな、と思ったんだが、ここには何もなかった。完全に外れだ。よそで何か手がかりを手に入れたら、意味のあるような記述があったので、後で来るべき場所だと判明しただけさ。
「次に【医院】だが、ここは有用な場所だ。金貨2枚で技術点1点を、金貨1枚で体力点2点を癒してくれる回復ポイントとなっている。運は【教会】の懺悔室で回復し、技術と体力は【医院】で回復することが分かったのは、攻略において重要だからな。あと、病気治療もここでできることを今、記事書きしながら確認した。これで墓場の流行病も、下水道のネズミによる敗血症も怖くない」
ダイアンナ「【医院】は重要な回復ポイントだ、と」
アスト「さて、問題は違う場所に寄り道してしまったせいで、【公衆浴場】での調査活動が十分行えなかったことだな。ここでは3ヶ所を調べることができて、最低、2ヶ所を調べると、夜の仕事が楽になる。しかし、どうもオレが初回プレイで調べたのは外れだったらしい」
ダイアンナ「外れって分かるんだ」
アスト「当たりと比べるとな。まず、昼間の【公衆浴場】は夜と違って、いかがわしくない牧歌的な場所だ。FFシリーズだと元が児童書レーベルだからか、不潔や暴力、死や拷問とかグロい描写はあっても、エロはあまりない印象だが、本作は同人ゲームブックで大人の読者向きということもあって、それなりにアダルトっぽい描写がある。いわゆる裸の性行為なんかが、夜の【公衆浴場】では繰り広げられているようなんだな」
ダイアンナ「それをアストは、ニヤニヤしながら読んでいたのか?」
アスト「あくまで仕事のための調査さ。初心で潔癖だと、このネグラレーナの盗賊稼業は務まらない。大体、風呂といえばエロというのが和製フィクションの王道じゃないか。とにかく、金貨1枚払って、オレは風呂に入るぜ。下心なんてこれっぽっちしかない」
ダイアンナ「これっぽっちは、あるんだ」
アスト「さすがにゼロと言うと、嘘になるからな。ともあれ、浴場では個人浴場と集団浴場があって、オレは個人浴場を選んだんだが、これが攻略上はミスだったらしい。正解は集団浴場の方だが、そんなことは初見プレイでは分からないからな。まずは、混浴よりも一人風呂だろうと当たりをつけた。そこで隣の湯船に浸かっているバネドというおっさんが話しかけて来たんだ」
ダイアンナ「個室で隣のおじさんが話しかけてくる風呂か。想像がつかんな」
アスト「そりゃあ、女性のプライベートルームは間仕切りがしっかりしてそうだからな。男のプライベートルームは、その辺、風通しがいいというか何というか。どうも、FFシリーズと違って、プレイヤーキャラが女性である可能性は全く考慮されていない記述だな、本作は」
ダイアンナ「大人の男性向けのゲームブックか」
アスト「まあ、女性のTRPGプレイヤーはそれなりに活動しているのをよく見かけるが、ネット上でゲームブックの攻略記事を女性が書いているのを見たことがない。いや、女性のゲームブック作家が普通にいるのは分かっているが、FFとかの懐かしゲームブックの攻略ブログを書いているのはもっぱら男のおじさん層だろうな。もちろん、女性キャラだったら普通にありだが」
ダイアンナ「いい年した大人の女性は、今さらゲームブックなんぞに現を抜かさないんだろう」
アスト「ボードゲームやTRPGと比べても、ゲームブックのファンを自認して攻略記事を書く女性ってのは相当にレアというのが実感だ。『ゲームブックにおけるジェンダー論』というのは考える価値があるかもな。FFシリーズは女性キャラでも違和感なくプレイできるが、本作だといろいろ問題が発生するような場面が多い」
ダイアンナ「そりゃあ、風呂場で男女平等は描きにくいと思う。あと、『モンスター誕生』でも女性キャラは想定していないんじゃないか?」
アスト「『サイボーグを倒せ』は主人公が男性キャラという形に固定されているが、一応、女性キャラにアレンジしても、さほど違和感なくプレイできたと思う。しかし、本作で女盗賊を想定して、ニナ姐さんと百合な話に展開しようと思っても、浴場の調査のシーンでいろいろ引っ掛かって来るわけだな。ともかく、【バネドおじさんとのコネ(21)】が成立して、情報をあれこれ教えてくれる。どうやら、このおじさんは覗きが趣味らしい」
ダイアンナ「女の敵ってことか?」
アスト「本人曰く、博物館の館員らしいが、何だか血にまみれているのを風呂で洗い落としているように見えて、いろいろ気になるところだ。後で【博物館】を調べたくもなった。ともあれ、今はおじさんの素性よりも、おじさんのくれる浴場の常連娘の情報だ」
●ローズガーデン家のアンヘラとガブリエラ姉妹
●グレゴリア家のセエラ伯爵夫人
ダイアンナ「セエラ伯爵夫人って名前はまた聞いたな」
アスト「そう。この名は何度か耳にするから気になるところだ。アンヘラとガブリエラについては、この場所でのイベントに関係するが、バネドおじさんからは名前を聞くことしかできない。ともあれ、気にはなったから、好奇心に駆られて集団浴場の方も覗いてみた」
ダイアンナ「やはり、覗いてみるのか。このイヤらしい男め」
アスト「攻略記事のためだ。仕方ないだろう? 集団浴場では2つのイベントがある。まずは貴族の娘、ローズガーデン家のアンヘラとガブリエラ姉妹と懇意になれる。コネに【ローズガーデン姉妹(23)】が加わり、夜に相引きしようって話になる。彼女たちとのコネがあると、夜の仕事でここに侵入するのが簡単になるって寸法さ」
ダイアンナ「貴族の娘をたぶらかして、侵入工作の手先に使おうって話か」
アスト「会員制の高級クラブに入るには、相応のコネが必要って話だ。それともう一つ、貴族の娘との猥談に時間を割かずに、従業員の方を観察するという選択肢もある。すると、奥の事務室の扉が分かるんだな。【公衆浴場の扉(15)】のフラグが立った。次のプレイでは、それをきちんと使いこなそうと思ったね」
ダイアンナ「すると、初見プレイでは使わなかった、と?」
アスト「好奇心に駆られて、未通過パラグラフの覗き見はするが、ゲームの攻略としてはフェアに未通過パラグラフの情報は使わずにプレイを進めたんだ。上手く情報を入手すれば、楽に攻略できるんだが、1度めはバネドおじさんの情報のみを使った次第」
二夜めの仕事(公衆浴場)
アスト「さて、昼の市内3ヶ所散策が済むと、夜の仕事のお時間だ。二夜めはパラグラフ8番へ行け、と指定されていたので、そうすると、オレとニナはギルドマスターのアレハンドロから次の仕事の詳細を聞いた」
●標的は【公衆浴場】の管理人フィゲロ。彼を殺すか、捕まえて来て欲しい。
●理由は、夜の【公衆浴場】が賭博や売春で悪どい稼ぎ場になっているから。多少の小銭稼ぎ程度ならギルドも大目に見たが、今や貴族も巻き込んで莫大な稼ぎを得るようになって、見過ごせなくなった。ギルドの脅威となって立ちはだかる前に、厳しく処断するか、何らかのお灸を据える必要がある。
アスト「……ということで、盗賊ギルドの裏稼業らしい仕事を仰せつかったわけだ」
ダイアンナ「冒険ゲームではなくて、一風変わった裏の仕事の物語なんだね」
アスト「FFシリーズとは違う物語テイストを感じたね。同じシステムでも、異なるスタイルの物語なので新鮮だ。ニナと2人で夜の街を歩き、湯浴み通りを抜けると、【公衆浴場】が見えてくる。昼に訪れた時の解放的な雰囲気と異なり、警戒するような物々しさで番兵が立っている。表門に3人、裏口に2人だな」
ダイアンナ「正面から入るのは危険なので、裏口の2人を何とかするのが良さそうだね」
アスト「ああ。ニナが1人を相手してくれるので、オレが戦うもう一方の見張りは技術点8、体力点8。倒すのはさほど難しくないが、問題は3ラウンド以内に倒さないといけないことだ。通常どおりだと1ラウンドに2点しかダメージを与えられないので、運だめしで追加ダメージを与える必要がある。まあ、そこは上手くクリアできて侵入成功したけどな」
ダイアンナ「コネがあれば、戦わずに入ることができるのかい?」
アスト「その場合、急いで貴族のコスプレをして、知り合いの貴族の名前を用いることになる。正解はガブリエラ(213)かアンヘラ(259)だな。この2人の名前を使って、コネナンバー23を足したり、引いたりすれば、パラグラフ236番に行き着いて、2人の姉妹がオレたちを迎え入れてくれる。これだと、ノーリスクで侵入成功だ。
「他の選択肢は、セエラ伯爵夫人、バネド、その他だが、いずれにせよバトルになる。特にバネドは女性に酷い乱暴行為を働いた過去があり、出入り禁止になっているそうだ」
ダイアンナ「ろくでもない奴みたいだね」
アスト「ああ、奴とのコネは役に立つのかね、と思いつつ。まあ、侵入に成功すると、中はいろいろとヤバい部屋があったりした。男女のエロい現場ぐらいなら想定内だったが、女性型の怪物とまぐわう男とか、獣姦にふけっている女とか、実に頽廃的な場所であることに閉口しつつ、フィゲロの居場所を探すことになる。ここで【公衆浴場の扉(15)】を282に足したパラグラフ297番へ行けば、話は簡単なんだが、その情報がなければ運だめしを2回成功させないといけない。つまり、昼間の情報がなければ、このミッションでは運点が3点削られるんだな。もちろん、成功できなければ、ミッション達成に失敗する」
ダイアンナ「失敗したら、どうなるんだい?」
アスト「別働隊(カエル人のエルガと、コビットのピドロ)が動いていて、フィゲロの身柄を確保してくれたので、ストーリーは問題なく進む。仕事料がもらえなくて、面目がつぶれて運点を1点失うぐらいだな。しかし、優秀な盗賊剣士であるためには、全てのミッションを成功させたいと思うのが人情ってものだ。オレは運を削られながらも、何とかフィゲロを追いつめることができたぜ。フィゲロは逃げる際に、檻からミノタウロスを放ちやがったので、オレはニナにフィゲロを追わせ、ミノタウロスと戦うことになった」
●ミノタウロス:技術点9、体力点11
アスト「運悪く多少、ダメージを負ったものの、闘士タイプのオレには、ミノタウロスも敵じゃない。ニナも上手くフィゲロを捕まえて、オレたちコンビはこのミッションを上手くやり遂げたわけだな。次は、もっと上手く対処できると思いつつ」
※2日め:公衆浴場ミッション成功♪
バッドエンドの可能性
アスト「さて、3日めのドラゴン戦まで語ろうと思ったが、想定よりも話が長引いたので、次回に続くことにした。その前に、この【公衆浴場】ミッションで、バッドエンドになる可能性が2つあることに気付いたので、そこをチェックしておこう」
リバT『面白いバッドエンドは、良いゲームブックの注目ポイントですからね』
アスト「運良く、あるいは賢明に正解ルートを選んでいれば、バッドエンドのパラグラフを読むことなく、ゲームブックは攻略可能だが、どうせ大して読者は気にしないだろうと作者が手を抜いていれば、バッドエンドの文章が味気なくなりがち。逆に、バッドエンドの文章が凝っているということは、作者の手抜かりのなさの表れ、と見なせるからな」
ダイアンナ「バッドエンドばかり凝りすぎて、通常の展開がつまらないゲームだってあるだろう?」
アスト「その場合は、力を入れる個所を間違えていると言わざるを得ないが、さすがにバッドエンドしか見どころがない(面白くない)ゲームブックというのは、プレイした読者に叩かれまくっていると思うぞ。普通は、面白いゲームブックを目指して、なおかつバッドエンドにも力を注ぐと傑作になる。バッドエンドがつまらないのは、画竜点睛を欠くといったところか。バッドエンドだけ面白いゲームブック(そんな作品は思いつかんが)は、『目力だけあって下手くそな竜の落書き』と評して、商品価値がない代物と言えるだろうな」
リバT『とにかく、2つのバッドエンドの話を聞きましょうか』
アスト「1つは、ミノタウロス戦をニナに任せて、自分でフィゲロを追いかける選択肢だな。これを選ぶとバッドエンドになる。か細い腕のニナではミノタウロスの膂力に勝てなかったんだな。ニナは殺され、フィゲロを捕まえて戻って来た主人公もミノタウロスの奇襲攻撃をまともに受けて、下水道に落下してネズミの餌になるという顛末だ」
ダイアンナ「ここでも下水道かい?」
アスト「悪事を働く連中の非常用の脱出ルートになっているみたいだな。そして、もう一つのバッドエンドは、フィゲロを捕まえようとする際、先に檻の中の怪物を始末しようと考えた場合だな。余計なことに時間をかけ過ぎたために、フィゲロは下水道の奥深くに逃げ込んでしまった。何とか後を追って、追い詰めたはいいものの、下水道の奥は迷路になっていて、脱出不能の空間だ。結局、出口を知っているのはフィゲロだけなので、『出口まで案内する代わりに解放しろ』という取り引きに応じて、ミッション失敗。まあ、別働隊のおかげで、結局、フィゲロはまた捕まるんだが、それはさておき。
「バッドエンドなのは、フィゲロとの取り引きに応じなかった場合。次々と押し寄せる巨大ネズミと延々と戦い続ける無限ループ状態に陥る。無限ループで脱出不能になるのは、実質的バッドエンドだからな」
ダイアンナ「下水道のネズミは思わぬ脅威だと」
アスト「ところが、ここにも一つの仕掛けがあって、1日めの夜の仕事で墓荒らしではなく、下水道ミッションをクリアしていた場合は、話が変わって来る。下水道探索の際に、【下水道(33)】のコネナンバーを得ることができるようだ。その情報を使えば、フィゲロとの取り引きに応じることなく下水道を脱出できて、無事にミッションを達成することができる。このようにミッションの攻略の是非で展開が変わる仕掛けは、ゲームブックとして純粋に楽しいと思うな」
ダイアンナ「予想よりも、凝ったパラグラフ構成のゲームブックみたいだね」
アスト「プレイ感覚としては、パラグラフ・ジャンプを多用する点から、リビングストンよりもジャクソンの作品に近いと思ったな。ただ、昼間の情報収集と、夜の仕事の絡み合い感覚は、FFとは異なる作風で、いかにも和製のデジタル系アドベンチャーゲームの要素を感じて、街の秘密を探るのが楽しいと思い始めている」
(当記事 完)