ミドルフェイズの開始
GM(NOVA)「オープニングに続いて、ミドルフェイズに移る。ミドルフェイズは全部で11シーンの予定で、最初のシーンは合流パート。4人のプレイヤーキャラが一堂に会して、ビースト対策という目的を共有するところからスタートだ。さて、どこで集まればいいかな」
ディオーネ(ダイアンナ)「広い場所なら、あたしの屋敷か、隣のアキラちゃんの家がいいと思う」
ニック(ヒノキ)「それが無難じゃのう。いや、口調を変えるか。それが無難だと判断します。マスター・ユイのセーフハウスやワタシのメンテナンス施設では手狭ですので」
アキラ(晶華)「それなら、ディオーネ先生の屋敷がいいと思う。そっちだと執事さんやメイドさんもいるし、私の家だと散らかっていて片付けとか大変」
ユイ(翔花)「散らかっているって、どれだけよ?」
アキラ「水星の魔女の花嫁さんぐらい?」
ユイ「それってゴミ屋敷じゃない?」
アキラ「じゃあ、NOVAちゃんの部屋ぐらい?」
ユイ「それは……お客さんを迎えられる環境じゃないわね。積んでる本がいつ崩れて、生き埋めになるか分かりやしない」
GM「片付けろよ……って俺が言えた義理じゃないのが哀しい。ああ、リアルでも本をたっぷり収納できる塔が欲しい」
アキラ「とにかく、一番広いのはディオーネ先生の屋敷みたいだから、そこに集まりましょう。私としては、キサキョンを助けるためにも、仲間の協力は必要だと考えているし、ユイちゃんにビースト事件について相談しようと思う」
ユイ「わたしは自分が依頼された仕事なので、アキラちゃんを巻き込みたくはなかったんだけど、先に話を振られたら、実は……と打ち明けることになるよね」
ニック「ワタシとしては、マスター・ユイが事件に関わることには反対ですが、彼女はこうと決めたら一途に突き進む方ですから、できる限りのサポートをすることで危険度を最低限にしようと提案します。そのためにも、ミズ・ブランシュタードにも相談されては?」
ディオーネ「あたしは、ビースト事件が噂になる前に、単独調査をしていたんだが……自分一人での調査にも限界を感じていた頃に、アキラちゃんやユイちゃんから話を持ち掛けられて、一先ずは情報交換と今後の打ち合わせをしようって流れになったんだな」
GM「だったら、シーンプレイヤーはオープニングから引き続きディオーネということで、全員、ディオーネ屋敷にいるわけだ」
ディオーネ「あたしがシーンの主役か。だったら、この場は仕切らせてもらおう。みんなを部屋に招待した後で、深刻な表情で打ち明ける。『近ごろ、街の噂になりつつあるビースト事件なんだが、以前に、夜中にパトロールに出かけたあたしが事件現場に居合わせてな。残念ながら逃げられてしまったんだ。奴は今も街のどこかに潜んでいる。事件を早急に解決するために、みんなの手を借りたい』と」
ユイ「ちょうどいいわ。その事件、わたしもアイギスの任務で依頼されたばかり。分かっていることを教えてちょうだい。ビーストの姿形は? どんな奴?」
GM「まだ、はっきりとは決めていない。何となく、獣人っぽい奴というイメージだけは持っているんだが、その時が来たら、ランダムにボスキャラを決めようと思う」
アキラ「今、決めたらどうなの?」
GM「先に決めると、ランダムストーリーと矛盾が生じるかもしれないからなあ。敵の正体は情報収集の末に判明するということにしておく」
ディオーネ「ということで、あたしがちらっと見たのは、牙と爪を備えた黒い邪悪めいた人影だな。ただ、神出鬼没だし、もしかすると変身能力を持ち合わせているのかもしれん。昼はただの一般市民で、夜になると化けるとか」
ニック「ワタシの持っている未来のデータでも、ビースト事件に関する断片的な記録があるのみで、詳しい姿形や能力は不明のままです」
ユイ「だったら、一番詳しそうなのは、フューネラル・コンダクター社っぽいわね。そちらにはコネがあるので、わたしが回ってみるわ」
ニック「もちろん、ワタシもお供しますよ、マスター・ユイ。……1人にして、万が一のことがあれば大変だ、とこっそりつぶやきます。ビースト事件でユイが死ぬという黒歴史は、ワタシの中だけの秘密ということで」
アキラ「私もキサキョンに付き合って、昼間のうちに事件の現場を回るつもりだけど、ディオーネ先生には、物陰から護衛に付いて来て欲しいの」
ディオーネ「物陰から? 堂々と教師の引率ってわけにはいかないのか?」
GM「クラブ活動でもないのに、校外で付きまとう教師というのもどうだかな」
ディオーネ「では、危険があれば登場するってことで、様子を見守るだけにしよう」
GM「最初のシーンはこれで終わりだな」
ディオーネ「ところで、GM。あたしたちが守るこの街や学校の名前は決めなくていいのか?」
GM「単発シナリオだから決めなくても問題ないと思うが、ルールブックでは『首都圏近郊の地方都市N市』と『瑞珠(ずいしゅ)学園』というサンプル舞台が設定されている。瑞珠学園には、オカルトマニアの趣味クラブである魔法部というクエスター養成部活があって、初心者はその設定を使うといいと言うことだが」
ニック「N市か。だったら、NOVA市でどうじゃ?」
GM「それじゃ、頭にトーキョーって付けたくなるじゃないですか。却下です」
ニック「だったら、漢字で野場市というのはどうじゃ?」
GM「アレンジして、能葉(のうは)市にしましょう。学校の名前は……う〜ん、此葉(このは)学園ということで。学園長がフォックステイルで、本当は狐能葉(このは)という語源だったのを、上手く化けたというか。なお、大阪には此花(このはな)区という地域があって、昔、アルバイトで通ってましたね。今はUSJで有名ですが」
ユイ「能葉市に、此葉学園かあ。いい感じね」
葬儀社のエージェント(2シーン目、ユイ)
GM「では、導入を終えて、ここから本格的に情報収集だ。シーンプレイヤーは、飛彩ユイ。同行者はニックということで、君たち2人はFC社のエージェント、『氷の瞳』の異名を持つブラックロータス氏と会う約束になっている」
ユイ「学校は行かなくていいの?」
GM「休日ということにしておこう。会う場所については、リクエストはあるかな?」
ニック「カラオケボックスの『フォーチュン』を提案します。フォーチュンの店長、高坂橙子はワタシのコネですし、クエスター同士が密談をするのにカラオケボックスは防音も効いていて、非常に便利ですから」
ユイ「でも、バイクはお店の中に入れないわよ」
ニック「専用の通信機で会話への参加はできるってことで」
GM「認めよう。では、カラオケ店でイベントチャートを振ってもらおうか。D6をどうぞ」
ユイ「4よ」
GM「いきなり、トラブル発生だ。トラブルチャートを振る。もう一度D6だ」
ユイ「2」
GM「マーセナリィチームに呼び止められる。う〜ん、軍人が活動しているのも違和感なので、警察かな。ええと、この商店街の近くでビースト事件が発生していたらしく、警察の警戒が厳重だったりする。店も営業停止になっているようだ」
ユイ「ええ? だったら、どこでブラックロータスさんと落ち合えばいいのかしら?」
GM「とりあえず、情報収集判定をしてもらおうか。成功すれば、ブラックロータスと上手く連絡がとれて、情報が手に入るってことで」
ユイ「情報収集判定ってどうするの?」
GM「そうだな。【幸運】で15と言ったところか」
ユイ「わたしの【幸運】は13だから、ピンゾロ以外で成功ね」
GM「いや、違う。13は【幸運基本値】であって、判定に使うのはボーナスの方だ」
ユイ「だったら、+4しかないので、11以上じゃないと成功しない。難しいわね。コネと会うだけなのに、難易度15って高く設定しすぎじゃない?」
GM「う〜ん。とは言え、このシナリオクラフトでは、情報収集判定の難易度は15で固定だからなあ。何か使える特徴とか、能力とかはないか?」
ユイ「そうね。《生ける伝説》の効果で、コネを持つ相手からの情報収集+1のボーナスがあるわ」
GM「じゃあ、それで振ってみよう。10以上出せば問題ない」
ユイ「(コロコロ)7。これじゃあ、どうしようもないわね。ブラックロータスさんと落ち合えずに、当てもなくさすらうだけ」
ニック「いや、ワタシもいます。ブラックロータスさんはクエスター、クエスターと言えば、シャード持ち。シャード持ちということは、異世界に関係ありってことで、《情報:異世界》のボーナスが使えないでしょうか」
GM「少し強引な理屈のような気もするけど、近くにシャードの気配がないかを探るってことで、許可しましょう」
ニック「(コロコロ)出目9。【幸運】4に、異世界ボーナス+3で、達成値16。成功なのじゃ。と言うことで、ワタシのセンサーがブラックロータスさんらしきシャードの反応をキャッチした模様です」
ディオーネ「と言うか、携帯か何かで連絡を取り合ったりできないのか? コネだったら」
GM「それは、何だか怪電波が発信されていて連絡がとれなかったか、あるいは、うっかり電源を切っていたか。とにかく、トラブルでつながらなかったってことで」
ユイ「どっちにしても、ニンニンセンサーが優秀なので助かったわ。喫茶店でブラックロータスさんを発見したということで、いろいろ奢ってもらいます。探すのに苦労したんだから、それぐらいは当然よね」
GM「では、プライズチャートを振ってください。これもD6です」
ユイ「2」
GM「すると、ブラックロータスさんの話がいろいろ聞けましたが、その中でも最重要なのは『ビーストはおそらく人間に復讐するつもりでしょう。その暗い執念で、死の淵から蘇って来たのだと考えております。FC社の内々で処理するつもりでしたが、貴方がたまで巻き込んだみたいで、とんだ大事になってしまい、申し訳ありません。出せる情報は全て提供させてもらいます』という話に漕ぎつけたこと。もう一度D6をどうぞ」
ユイ「6」
GM「素晴らしい。プライズポイントの目標は14点なんだけど、残り8点になった」
ニック「これって、上手くすれば、3シーンで情報収集が完了して、クライマックスに突入じゃな」
GM「情報収集判定が全て成功したとして、期待値3.5だから4シーン。まあ、判定難易度15だから、何度か失敗するんじゃないかなあ、と思います」
ユイ「とりあえず、ブラックロータスさんは情報を入手したら、わたしの携帯か、ディオーネ屋敷に連絡して。あそこなら、執事さんやメイドさんがいるから、わたしたちが留守でも連絡をとりやすいはず」
ブラックロータス『ディオーネ・ブランシュタードですか。我々の調査では、ビースト事件の現場で彼女を目撃したという噂が入って来て、事件への関わりを疑っていたのですが』
ユイ「それは誤解よ。彼女はわたしたちの仲間で、いっしょに調査に当たってくれている。ディオーネさんを疑っても、無駄に終わるだけ」
ブラックロータス『アイギスの貴方が言うなら、信用しても良さそうですね。しかし、我々、埋葬人にとっては吸血鬼とか闇の世界の住人は要警戒対象なものでして、さらに悪名高いシスター瑠璃伽まで動いているとあっては、仮想敵のように映っても当然か、と』
ユイ「すると、下手すれば、FC社がディオーネさんを襲撃したり、妨害したりする可能性があった?」
GM「ランダムイベントの結果によっては、もしかするとってところだ。ただ、ここできちんと話をつけたから、今後、FC社が今回の事件で皆さんの邪魔をすることはなくなったということで」
ディオーネ「助かった。葬儀社を敵に回して、埋葬されるのは勘弁だからね」
アキラ「でも、埋葬されなかったのがビーストだと」
女子高生の秘密(3シーン目、アキラ)
GM「では、次は神名アキラが親友のキサキョンこと如月今日子に付き合って、ビースト事件の謎を追うシーンだな」
アキラ「ところで、プレイヤーの私はキサキョンを疑ったりしています」
GM「どうしてだよ?」
アキラ「だって、ディオーネさんのオープニングで、『死体は上手く処理されたから、一般人には事件そのものが隠蔽されている』ってことよね。だけど、キサキョンはどういう情報源を持っているのか知らないけど、『連続猟奇殺人事件』ってことまで突き止めている。ただの一学生がそこまで知っているのっておかしくない?」
GM「それは……ぶっちゃけ、その場のノリでオープニングをテキトーにアドリブで即興に語っているゆえの弊害だな。普通のシナリオだったら、テストプレイで矛盾を指摘されて改稿しないといけないレベルだ」
アキラ「矛盾を矛盾でなくすためには、『ビーストの正体が実は親友のキサキョンでした』ってするのがいい。昼は親友のキサキョンだけど、夜になると恐ろしいビーストに変身して、人々を襲う。昼のキサキョンが良心の咎めでクエスターの私に自分を退治して欲しいとの思いから、事件の調査を依頼したって筋書きはどう?」
GM「そんな親友を倒すシナリオでいいのか?」
ニック「アルシャードやダブルクロス、ナイトウィザードなどのルールブックOPマンガでよくあるパターンじゃな」
GM「とりあえず、イベントチャートを振れ。物語を決めるのはそれからだ」
アキラ「4」
GM「またもや、トラブル発生だ。もう一度、D6だ」
アキラ「1」
GM「研究組織に人質をとられる。ええと、研究組織って、FC社か?」
ディオーネ「組織じゃなくて個人なら、シスター瑠璃伽かもしれんぞ」
GM「ああ、そっちの方が納得だな。前のシーンで、FC社との間で話がついているのに、直後に関係悪化するのは話が二転三転し過ぎる。ここはキサキョンがシスター瑠璃伽に拉致されるって方向でシーンを進めよう」
アキラ「え? どうしてキサキョンを?」
GM「ビースト事件について、何かの情報を持っていると見なされたか。それとも、プレイヤーの晶華の推測どおり、キサキョン自身がビーストなのか。とにかく、事件の現場と思しき場所に向かったアキラとキサキョン。しかし、警察が警戒しているため、現場での取材はできないと分かり、やむなく別の方向でのアプローチを考えながらの帰り道だ」
アキラ「警察も動いているんだから、ただの一般人の私たちはおとなしく引き返した方がいいわよ」
GM「すると、キサキョンは『警察には任せておけないわ。この事件、何としても私が犯人を突き止めてみせる』と意を決した表情で、固く拳を握りしめて断言する。『アキラだったら、私の気持ちが分かってくれると思っていたのに……』」
アキラ「キサキョンの気持ちなんて……と言いながら、何とか行間を読もうとします。ええと、もしかしてビーストが身内とか……ビーストのせいで身内が行方不明になったとか……そんなところ?」
GM「アキラにはまだキサキョンの隠してある秘密が分からない。ええと、情報収集判定をしてもらおうか。使用する能力値は……」
アキラ「【理知】にします。あと、学校関係者の情報なので、+3してもいいよね。女子高生の推理力と直感を駆使して、キサキョンの隠している秘密を探るわ。(コロコロ)出目7でぴったり15」
GM「成功か。だったら、まず、プライズチャートを振ってくれ」
アキラ「4」
GM「ビーストはどこかに身を隠している」
アキラ「そりゃ、そうでしょう。その情報に意味はある?」
GM「だったら……『もしかしたら、事件の犯人はあそこに潜んでいるかもしれない』とキサキョンが呟いたのをアキラは聞き逃さなかった」
アキラ「あそこってどこよ?」
GM「プライズポイントを決めるために、D6を振れ」
アキラ「3」
GM「これで9か。残り5ポイント。そうだな。キサキョンは確かに、ビーストの潜伏場所を思いついたようだ。それを問いただそうとしたアキラだったが……『へえ、その情報、わたくしにも教えてくださらないかしら?』と穏やかな、それでいて嗜虐的にも聞こえる女性の声が響いた。そして、結界が張られる」
アキラ「出たわね、シスター瑠璃伽……というのはプレイヤーのセリフ。キャラのアキラは初対面なので、誰ですか? と誰何します。結界を張るってことは、魔法使いか、それとも奈落だと思いながら警戒するってことで」
GM「なお、キサキョンは結界の効果で意識混濁状態ですね。これで、彼女が一般人であることは確定しました」
アキラ「それは安心だけど、今の状況は安心できないわね」
ディオーネ「瑠璃伽が出て来たなら、あたしも登場しないとな。ええと、途中からシーンに登場するには、登場判定をすればいいんだよね」
GM「ああ。登場判定の難易度は【幸運】で10だが、コネを持つ相手がいる場合は+2される」
ディオーネ「コネはアキラと瑠璃伽の両方を持っているのだが、ボーナスが累積されることはないんだな」
GM「ああ。+2だけだ」
ディオーネ「それでも、5以上で登場できる。(コロコロ)11だから、余裕で登場だ。教え子を庇うように、さっそうと姿を現す。『シスター瑠璃伽。あたしの可愛い教え子を狙うとは、どういうつもりだ?』」
瑠璃伽『あら、ディオーネ様ですか。それに初めまして、神名アキラさん。あなたのお父さまにはずいぶんお世話になったものです』
アキラ「え? 父さんを知っているのですか?」
瑠璃伽『ええ、いろいろと。今、どこにいるかまでは知りませんが、生きているのは確かです』
アキラ「それを聞いて安心します」
瑠璃伽『ただ、今の彼はあなたの知っている彼ではないでしょう。会ったら、あなたは絶望するんじゃないかしら?』
アキラ「どういう意味?」
瑠璃伽『それを知りたければ、代わりにその娘、如月今日子さんを渡してくれないかしら。わたくしの研究に必要そうなので』
アキラ「それはできない相談ね。私のシナリオクエストは『キサキョンを助ける』だし、あなたからは闇の気配を濃厚に感じる。私情のために親友を売ることなんてできない」
瑠璃伽『そういう真っ直ぐなところは、昔のお父さんとそっくりね。いいでしょう。ここはおとなしく引き下がるとしましょう』
アキラ「え? 下がってくれるの? てっきり、このままキサキョンを強引に奪いとって行くとばかり」
GM「GMとしてはそうしたいところなんだけど、シスター瑠璃伽はそういう強引なやり方はとらないんだ。代わりに、ディオーネさんにこっそり目配せする。後で会おう、という意図を込めてね」
ディオーネ「『瑠璃伽に借りを返すこと』があたしのクエストなんだよなあ。あまり無理難題を吹っかけられないことを願いつつ、同意のうなずきを返す。仲間を裏切るつもりはないが、シスター瑠璃伽と利害がぶつからない限りは、適度に協力してWinWinを図りたい。今までも、ずっとそういう関係だった」
ニック「コウモリみたいな生き方じゃな」
ディオーネ「プレイヤーも、キャラクターも、そんな感じだ。光の世界に憧れる闇の女なのさ、あたしはね」
GM「狭間の世界に生きる女王なんだな」
黒歴史の記録(4シーン目、ニック)
GM「次は、ヒノキ姐さんのニックのシーンなんだけど、GMが思いつくネタがないので、プレイヤーにお任せします」
ニック「手抜きじゃな」
GM「熟練プレイヤーのヒノキ姐さんを信頼しているんですよ。そういう時は、GMは下手にプレイヤーを誘導し過ぎない方がいいというのが俺のGM経験です」
ニック「まあ、よかろう。とりあえず、ニックはブラックロータスから受け取ったデータを解析しながら、自分のブラックボックスに収められたビースト事件の黒歴史と照合して、情報を整理するとしよう」
GM「それでは、イベントチャートです」
ニック「イベントには『行動パターンの解析』があるのじゃな。だったら、ランダムに頼らずに、その表を使おう。6」
ディオーネ「だったら、あたしが追っかけているのに逃げるはずがないだろう」
ニック「確かに、そうじゃのう。では、振り直して4」
GM「どうやら普通の人間には見えないようだ」
ニック「透明の獣か。そりゃあ、普通の警察では手に負えないに決まっている。記録されている姿が曖昧なのも、納得できるというもの」
GM「あ、うっかりミスしてました」
ニック「何じゃ?」
GM「今、気づいたんだけど、4シーン目は通常のイベントチャートではなく、『更なる被害者チャート』を振ることになっているのです。仕方ないので、『更なる被害者』は次のシーンで行いましょう。今回は通常どおりの情報収集ってことで」
ニック「【幸運】4に、怪物知識+1で5だから、10以上か。(コロコロ)6だから失敗。ここで成功していれば、更なる被害者を出さずに済んでいたかもしれんのに」
ユイ「だったら、わたしがシーンに登場して、情報収集してあげる」
GM「ええと、それは難しいな。ニックが脳内で情報解析しているシーンなので、ニックの電子頭脳の内部にユイが出ていいはずがない」
ニック「いや、登場判定に成功すれば、マスター・ユイの死ぬシーンが再現されるということにするのじゃ。そこから何かが分かるかも」
GM「そういう理由付けなら何とか」
ユイ「喜んで死にたいわけじゃないけど、犠牲者を減らすためには仕方ないものね。登場判定は成功して、情報収集判定は11以上か。(コロコロ)出目5じゃ、どうしようもないか」
GM「では、ニックの記憶の中では、目に見えないビーストの奇襲攻撃でユイさんが無惨に殺されてしまう場面が反芻されました。逆に、相手がそういう幻惑効果の特技を持つと分かった今なら、同じような散り方はしないと確信できます」
ニック「ワタシがいない状況では、マスター・ユイはブラックロータスさんを探すのに時間を浪費した挙句、重要な情報を得られないまま、相手の能力も分からずに翻弄されて倒されたわけですね」
ユイ「ところで、いま、気づいたんだけど、わたしはレジェンドの特技【運命の予感】も使えるんだよね。これで情報収集してもいい?」
GM「う〜ん、ニックの脳内ユイがそういう特技を使っているのは違和感なので、【運命の予感】の使用は自分のシーンでお願いします」
ユイ「確かにそうか。だったら情報収集には失敗して、更なる被害者が出るのは止められない、と」
GM「元々は、4シーン目に更なる被害者が出るはずだったからな。最低でも1回は被害者が出ることになっているんだろう。ともあれ、どんな被害者が出るかをドキドキハラハラしながら、当記事 完だ」
(次回、『調査の果てに』につづく)