FFコレクション4は2月に延期
アスト「年末の予定が変わったみたいだな」
リバT『まあ、それまでに、これでも堪能していましょう』
ダイアンナ「FFコレクション4の発売が来年2月に延びても、こちらは2や3収録の作品がまだいくつも残っているから、問題ない」
アスト「『死の罠の地下迷宮』『巨人の影』『トカゲ王の島』『雪の魔女の洞窟』といったところか。『サラモニスの秘密』までには、それなりに終わらせておきたいわけだな」
ダイアンナ「秋には、FT書房の作品に手を出したせいで、本家の攻略記事が進まなかったからね」
アスト「楽しめたんだから、いいじゃないか。何にせよ、『盗賊剣士』は想定より時間をかけ過ぎたので、今夜で終わらせる。テーマは3日めの未通過ミッション、セエラ伯爵夫人の誘惑情事について解説する」
リバT『本家FFでは考えられない淫靡なイベントなんですね』
アスト「そんなわけで、ここから先の記事は、18歳未満の若い子は読まないことを推奨する。一応、アダルトな世界に突入するってことで。警告はしたからな」
3日めの誘惑ミッション
アスト「では、時間を3日めの仕事選択に巻き戻す。パラグラフ番号は106番だ。ここで218番を選ぶと、夜の【闘技場】でドラゴンと戦ったり、殺されたりできる。女との情事よりも、モンスターとのバトルが好きなプレイヤーはこっちへ進むといいだろう」
ダイアンナ「攻略本編では、そうしたんだな」
アスト「オレが誘惑ミッションを選ぼうとしたら、横から電撃を撃ってくる相方がいるからな」
ダイアンナ「今も、下手なことを言ったら、電撃を放つから覚悟しておくといい」
アスト「違う意味でドキドキハラハラしながら、パラグラフ368番へ進むわけだ。すると、ギルマスのアレハンドロが、標的のセエラ伯爵夫人について、こう解説してくる」
アレハンドロ『彼女は清楚な貴婦人として知られているけど、裏の顔はすごいわ。淫乱のど変態。男でも女でも大丈夫だし、ドワーフでもオウガでも燃えれちゃうらしいわ。それでも、彼女が愛していた伯爵が生きていた頃はまだ歯止めが効いていたらしいけど、一年前に行方不明になってからは、もう好き放題らしいわね』
アスト「ゲームブックで『淫乱のど変態』って言葉が出て来るとは思わなかったな。で、こっちの任務は、彼女から怪物商人の居場所を聞き出して来ることなんだが、力づくで拉致はできそうにない。演技型なら簡単で、ミステロってお店で朝食を食べている彼女に巧みに話しかけて、すぐに仲良くなって、パラグラフ40番に進んでベッドインだ」
ダイアンナ「演技型推奨ミッションか」
アスト「知略型でも、屋敷に雇われるために偽造書類なんかを用意して、うまく従僕として潜入工作に成功する。そして、伯爵夫人に誘われて、パラグラフ40番に進んでベッドインだ」
ダイアンナ「武闘型と幸運型だと?」
アスト「正面からお近づきになれる術がないので、こっそり侵入するしかないんだが、技術点チェックと運だめしの両方に成功しないといけない。成功したら、衛兵の目をごまかして、うまく屋敷に潜入できて、伯爵夫人の情事を覗き見できる。このパラグラフ345番はイラスト付きで、獣人と性交している彼女の姿が描写されていて、異種族姦が好きな読み手にはツボだろうな」
ダイアンナ「伯爵夫人は、異種族でもお構いなしってことか」
アスト「さすがは、淫乱のど変態と称されるだけのことはあるが、まあ、侵入に失敗すると、衛兵に見つかって、バトルの末に逃走を図る羽目になり、運が悪ければ逃げきれずにバッドエンドだ。衛兵から逃げきることができれば、ようやく侵入成功にこぎ着けて、覗き見ルート(345)に入れる」
ダイアンナ「性交ルート(40)と覗き見ルート(345)の2つに大きく分かれるんだね」
アスト「性交ルートの方が、話は膨らむな。一昼夜の情事に耽った後、真夜中に疲れ果てて眠っている伯爵夫人のベッドを抜け出して、屋敷をこっそりうろつくチャンスができる。そして、屋敷を探索していると、2階の奥に獣臭い部屋を発見した。中には狼男がいて、銀の短剣を持っていれば殺すことができるが、そうすると伯爵夫人を怒らせることになる」
ダイアンナ「狼男は彼女の大事な性交相手ってことか」
アスト「実はもっと重要な秘密があるんだが、とにかく怒った伯爵夫人を勢いづいて殺してしまうと、貴族殺しという重罪を犯したことはギルドでも庇いきれないとアレハンドロに見限られて、街からの退去を求められる。ゲームオーバーだ」
ダイアンナ「伯爵夫人殺しは禁じ手だと」
アスト「殺してしまうと、情報が得られないからな。怒った伯爵夫人から逃げる選択をすれば、ミッションは失敗だけど、ゲームオーバーにはならない。別働隊が『賭博塔』の情報を手に入れてくれたので、そこから4日めのミッションに挑むことができる」
ダイアンナ「何にせよ、狼男を殺害すると、ミッションに失敗する、と」
アスト「だから、狼男のことはスルーして、セエラと情事を続けることが正解なんだが(体力マイナス2)、すると彼女の口から青白い寄生虫みたいなものが飛び出して来るのに気づく」
ダイアンナ「ゲッ、寄生虫だと?」
アスト「寄生虫を気にせずに行為を続けるか(129)、寄生虫の正体を暴くか(285)の2択だな」
ダイアンナ「前者を選ぶのは、相当なイカレ者だと思うぞ」
アスト「それでも、彼女からお礼に金貨10枚と、原運点+1に回復できるツキ薬と、それから【セエラ伯爵夫人のコネ(94)】をゲットできる。このコネは、【魔法の道具店】で買い物する際に使えるが、さすがに拠点の酒場に飲みには来てくれないな。同じ貴族でも【ローズガーデン姉妹(23)】に比べると、使い勝手の悪いコネだと思う」
ダイアンナ「伯爵夫人の秘密を見なかったフリをして、セフレ関係を維持して、それからは?」
アスト「自由に屋敷に侵入できるようになったので、覗き見ルートの345番に進むこともできるし、直接、彼女から怪物商人のことを聞き出すことも可能。ただし、後者は下手な詰問をすると、彼女があっさり自害するのでゲームオーバーだ。やんわりとした交渉術で、うまく彼女をなだめると、『怪物商人のことは直接には知らないけど、【賭博塔】のグレゴールが取り引きしているみたい』と話してくれて、何とか当たり障りなくミッション達成に漕ぎつけることができる」
ダイアンナ「しかし、それだと寄生虫や狼男の件は、分からないままだな」
寄生虫の話
アスト「さすがに寄生虫をスルーして、イチャラブは続けられない場合は、285へ行く。その正体をセエラから問いただそうとすると、彼女は白状した」
セエラ『昔、ある男から買ったの。この寄生虫を飼っていると、魅力的な女性になれるうえに、性欲が常にみなぎった体になれる。最初の頃は少し気持ち悪かったけど、だんだん愛しく思えるようになっていったのね。体の中で飼うようになってから、どんどんモテるようにもなったし、今では大事な存在だわ』
ダイアンナ「寄生虫が宇宙からの侵略者か何かで、彼女が乗っ取られているとか、そういう話……ではなさそうだな」
アスト「そういうSFホラー的な話ではなさそうだが、どちらかと言えば、能力値をアップする共生生物っぽい。スラムで生活しているゴーブという外国から来た人が売ってくれたという話を聞いて、【スラムのコネ(80)】を入手する。これで、スラムに行くと、寄生虫をゲットできるようになった」
ダイアンナ「寄生虫なんてゲットして嬉しいのか?」
アスト「世の中には、パラサイト萌えなんてジャンルもあるわけだしな。そういう性癖の人間は早速スラムへGOだ」
ダイアンナ「個人的に寄生生物は生理的に受け付けないと思うが、攻略記事としては必要なんだろう? スラムへ行くとどうなる?」
アスト「スラムの番号268に80を加えた348番で、話に聞いたゴーブ人を見つけて、金貨20枚を払えば、3種類の寄生虫のどれかを購入できる」
●体力向上の寄生虫:原体力4点向上。
●性欲向上の寄生虫:魅力的な外見と、果てしなく湧き上がる性欲を獲得。
●反射神経向上の寄生虫:体力点1点消費で、技術点チェックを自動的に成功できる。
ダイアンナ「ほう。寄生虫パワーによる恩恵があるのか。性欲向上以外は、冒険で役立ちそうだな」
アスト「性欲向上は、ローズガーデン姉妹との宿での逢瀬で、体力を消耗することなく金貨10枚稼げるメリットがあるな。寄生虫パワーがなければ、体力4点を消耗して金貨5枚を稼げるだけだが」
ダイアンナ「結局のところ、寄生虫のメリットを得られるのは、性交ルートに進んだときだけだから、演技型と知略型だけの特権となるわけだ」
アスト「武闘型だと、こちらのルートは不可能ってことだな。いずれにせよ、寄生虫の秘密をセエラから聞いても、ミッションをクリアしたことにはならない。寄生虫商人と怪物商人は別だからな。さらなる探りを入れるために、覗き見ルート(345)か、やんわりと直接尋ねることになるのは、前述のとおりだ」
ダイアンナ「では、アスト得意の覗き見ルートに進むとするか」
アスト「そちらだと、狼男と性交してるセエラの姿が見られるわけだな」
狼男の話
アスト「さて、本作で一番、扇情的なイラストが見られる345番だが、そこからの選択肢は『声をかける』『狼男に攻撃をしかける』『さらに観察を続ける』の3択だ」
ダイアンナ「正解は、覗き見続行だな」
アスト「ああ、その通りだ。そちらだとノーリスクでミッション達成できる。もしも誘惑ミッションをあっさり解決しようと思えば、武闘型だと『こっそり侵入→技術点チェックと運だめし成功→211から345へ→観察を続けてミッション達成』と進めるのが一番楽だな。闘技場ミッションでのバトルよりもはるかにリスクが少ない」
ダイアンナ「声をかけたり、狼男を攻撃したりするのは?」
アスト「リスクが大きいな。どちらも結局、技術点10、体力点14の狼男と戦闘になるし、狼男は銀の短剣で攻撃しなければ、毎ラウンド体力が1点回復するので、実質的に与えるダメージが1点ずつということになる。残り体力4点で戦闘が終わるとは言え、相手の体力を削るのに10ラウンド近くかかるのは、なかなか手強い相手だな」
ダイアンナ「狼男を倒すことはできないのか?」
アスト「セエラが庇うんだ。この狼男の正体は、セエラの夫の伯爵その人で、その背景はバトルに突入すると分からないまま終わる。狼男をかばった彼女は、こちらの要求を尋ね、『怪物商人の手掛かりが【賭博塔】のグレゴールだ』と打ち明けて、主人公もそれ以上の詮索は無用と割り切り、ミッションは達成する。以降は、この物語で伯爵夫人と関わることはない」
ダイアンナ「謎を残したまま、ミッション終了かい」
アスト「ストーリー分岐型のゲームだと、全ての謎が解決しないままってことも多いよな。別の選択肢を選んで初めて見えてくる背景があるから、一通りの分岐を覗き見る必要があるわけだ。そんなわけで覗き見を続けると、セエラが狼男に対して『あなた、愛してる❤』と叫んだことで、狼男が行方不明とされている伯爵だと分かったんだな」
ダイアンナ「質問。この世界の狼男は、人間の姿には戻れないのかい?」
アスト「少なくとも、伯爵はずっと獣人の姿みたいだな」
ダイアンナ「質問その2。この世界の狼男は、傷つけた相手を同じ狼人間に感染させたりはしないのかい?」
アスト「それができると、セエラはとっくに狼女になっているだろうし、彼女と性交した演技型もしくは知略型の主人公も人狼化してもおかしくない……が、ゲームブック本編にそういう記述はないな」
ダイアンナ「まあ、あたしもアストとイチャラブしているが、馬ウィルスに感染したりはしていないしな」
アスト「馬ウィルスって何だよ? オレが馬になるのは、ウィルスのせいじゃなくて、魔法の呪いか何かだ。他人に移るもんじゃねえ」
ダイアンナ「まあ、アストも別に吸血鬼になったりはしていないしな」
アスト「吸血鬼感染も、物語世界観によって感染のしやすさがいろいろなケースがあるもんな。噛みつき即感染というケースもあれば、自身の体液を相手に飲ませて感染というケースもあって、一発感染もあれば、何度か行為を行なって感染というケースなど、物語によって様々だ」
ダイアンナ「雑に血を吸うと、知性のない下僕吸血鬼にしかならず、知性ある伴侶吸血鬼に仕立てるためには、相応の手順と情愛が必要というケースもある。とにかく、雑に増えるモンスターは知性もなく、ただ暴れるだけの萌えない怪物で、やはりドラマ映えするのは、相応の知性を残したまま、価値観だけがモンスターらしいそれに置き換わって、密かに人間社会の裏から侵蝕を続けるケースだろうな」
アスト「まあ、吸血鬼や人狼が社会を築いているなら、いたずらに同胞を増やすのは社会的にトラブルを招く元にしかならないので、選ばれた伴侶や仲間のみを感染させる儀式みたいなものもあるのだろうが、その辺のモンスター裏社会のルールを考えるのも創作芸の一環らしい」
ダイアンナ「作品によっては、主人公が吸血鬼や人狼など、闇の世界の魔物になって暗躍するゲームもあったりするけど、本作はそうじゃないんだね」
アスト「光と闇の間を行き来する盗賊稼業だけど、完全に闇の世界の住人になって人間性を喪失してしまうと、もはやプレイヤーキャラとは言えないだろう?」
リバT『モンスター化しても、人間性を維持していればこそ、プレイヤーキャラとして物語の主役になれるわけですね』
アスト「まあ、『モンスター誕生』は、最初に理性を喪失したモンスターが徐々に失われた記憶や人間性を取り戻し、自分自身の過去を見つけ出すまでの物語だからな」
ダイアンナ「モンスターになって、人間たちに復讐する逆転構造のゲームブック『モンスターの逆襲』も、最終的には人間とモンスターの理想的な共存関係に向けて考えるのがトゥルーエンドになる」
アスト「まあ、世の中にはモンスターになって暴れ放題なストーリーを堪能するゲームもあったりするが、モンスターになった気分を擬似的に体験するゲームや物語は、日頃と違った経験をできて、いかにも想像力をたぎらせてくれる代物だと思う」
ダイアンナ「そういうストーリーをいっしょに付き合ってくれるGMやプレイヤーに恵まれると幸いだけどね」
リバT『ソード・ワールド2.0の蛮族PCプレイもそうですが、普通の人間と異なる価値観を持ったキャラクターをどう演じるか、どういうストーリーを紡ぎ上げるかは、ロールプレイの面白さというものを堪能させてくれます』
アスト「ちょっとした背徳感と、どこまでの暴走を場が許容できるかなど、万人推奨とは言い難いプレイスタイルだけど、人間社会にとってのアウトサイダーを遊ぶゲームや味わうストーリーは、日常や人間性の再確認というか、逆説的にそれらの価値を考えさせてくれるかもしれない」
ダイアンナ「リアルに闇堕ちしてしまうと、もはやフィクションやゲームを楽しむどころじゃないと思うけど、人の心にある闇を覗き見したい願望を現実ではなく、空想の世界で昇華するぐらいなら、誰にも迷惑をかけず(表現の自由)、適度な欲望発散になると思うけどねえ」
アスト「何にせよ、人の心の闇を覗き見するのが本作『盗賊剣士』の醍醐味の一つだな。その中で、清楚な上流階級の貴婦人である表の顔を持つセエラ伯爵夫人が、『イチバンやってはいけないことをするとき、快感を覚える背徳』を告白して、『賭博塔のデブオーク、グレゴールとゾクゾクした体験をしながら、狼男のだ液をもらい、夫を性欲旺盛な獣人に変えて、自らの欲望を貪り尽くす性癖』を主人公にさらけ出すシーンは、最も淫靡かつ煽情的な場面かな、と思う」
ダイアンナ「結局、その告白を聞いた主人公はどうしたんだい?」
アスト「直感的に、この伯爵夫人は被虐的な破滅願望に支配されているんだろうなあ、と悟る。それに巻き込まれるのは、たまったものではないので、自らの仕事=怪物商人の手掛かりが賭博塔のグレゴールにある、という情報を得た後は、この件にこれ以上、関わらないことを選択して、ミッション達成だ。伯爵夫人の秘密は公言しないと約束したうえでな」
本作の感想
アスト「と言うわけで、性的かつ背徳を覗き見るミッションになったわけだが、本作の最大の魅力は、昼と夜、光と闇の境界線上で生きる人々の営みを探り当てるゲーム性、物語性なんだと思う。主人公はギルドに所属する盗賊で、盗みや殺し、情報収集などの汚れ仕事のエキスパートって設定だから、まあ、後ろ暗い職業なのは間違いない。だけど、主人公らしい誇りとか倫理感は持っているので、無抵抗の相手を始末するとか、拷問とか、残虐性を感じさせる所業は、代わりに仲間がやってくれたりする」
ダイアンナ「無抵抗な女を殺すとゲームオーバーとか、それでも男は簡単に殺されるとか、フェミニズム的な要素はあるんだね」
アスト「さすがに、女を痛ぶって喜ぶような悪党ではないんだな。むしろ、そういう面を持つ夜の街の空気に、ドン引きしているような様子さえある。初心な若造ではないが(とりわけ演技型は女遊びに慣れている感)、さほど好色ではなく、真面目にストイックに仕事に励む面はある。そう、盗賊という裏の仕事にひたすら忠実なのが、今作の主人公だ」
ダイアンナ「FFシリーズの主人公と比べて、性描写がある分、精神年齢は高そうだけどね」
アスト「それでも、ニナとかアビゲイルとか、ギルドのお姉さん方からは後輩の弟分扱いされているので、達観まではしていない若者だな。多くのFF主人公は10代後半から20歳前後のイメージがあるが、それより5歳ほど上の25歳前後かな。ニナはエルフだから年齢不詳だが、20代後半のイメージがあって、アビゲイルはお姉さんぶっているけど年下少女のイメージがあって、アレハンドロは30代から40代目前ってところだろう」
ダイアンナ「主人公はギルドの命令に忠実な、真面目な工作員って言ったところか」
アスト「街の散策や情報収集は1日の回数制限はあるけど、自由でいろいろ見て回るのが楽しい。そして、夜の仕事は初日と3日めはミッションを選ぶ余地があるが、基本的に一本道で本作のストーリーラインの大筋を形成している。そして、3日まではミッションに失敗しても、即ゲームオーバーにはならず、バックアップする仲間の存在のおかげで、ストーリーは滞りなく進む。もっとも後半は失敗が許されない大イベントばかりで、ギルドが襲撃された後は生き残りをかけたサバイバルって感じで、緊張感を覚えたな。総じて、裏稼業のドラマを感じた面白いストーリーだったと思う」
ダイアンナ「街の自由な散策と、ミッション達成型のストーリーというのが、FFシリーズとはまた違ったストーリー構造だね」
アスト「ミッション達成型と情報収集が大事というのは、ジャクソンの『サイボーグを倒せ』に近いものを感じたな。FFシリーズの定番は、前期に多いダンジョン探索ものと、後期のリビングストン作品に多い広野の旅ものとがあって、移動することでストーリーが進む話が多い。だけど、本作は空間移動よりも、時間の経過によるストーリー管理がポイントだと思う。今はどこにいる? というよりも、今は何日め? って感じで、物語の進行度を計るのがやはり『サイボーグを倒せ』的というか」
ダイアンナ「同じ盗賊ものでも『盗賊都市』とは違った感覚なんだ」
アスト「同じ都市冒険ものでも、あっちは自由な散策ではなくて、通りに沿って中央の川から北の出口を目指す作品で、アイテム探しも含めて『運命の森』と同じような進行感覚だな。中央の川を渡る前の前半と、渡ってからの後半というマップ構造は『火吹山の魔法使い』『運命の森』『盗賊都市』の3作が共通していて、その辺はリビングストンの初期のパターンなんだろう。次の『死の罠の地下迷宮』で異なるマップ構造が出ると思うが」
ダイアンナ「では、本作の感想をまとめると?」
アスト「とりあえず、FFシリーズと同じシステムながら、随所に異なる仕掛けや、和製ゲームブックっぽい描写と物語の雰囲気を感じて、新鮮に楽しめた。FT書房の他の作品も楽しみたいって気になった。プレイする前に抱いていた、FFのパクリという思い込みは『パラグラフ構造が全く異なる意欲作』という理解で払拭された、と」
ダイアンナ「じゃあ、次はあたしが『死の罠の地下迷宮』に挑戦だ。FFC4までに終われるかなあ、と心配だったけど、2月に発売が遅れたので、悠々と攻略できそうだ」
(当記事 完)