ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

前の日曜日の買い物話とか、ゲームブック余談

真・モンスター事典とか、ドラゴンランスとか

 

リモートNOVA『こちらでは、久々の顔見せだ』

 

ダイアンナ「ああ、ダディか。年末師走で忙しい日々を過ごしているらしいな」

 

NOVA『まあ、仕事で忙しくなるのは来週からの予定だがな。その前に、やりたいことはいろいろやって来た』

 

アスト「やりたいこと? ここでのゲームブックじゃなくて?」

 

NOVA『それもやりたいんだが、その前にこちらだな』

アスト「ドラゴンランスかあ。いろいろ懐かしいな」

 

NOVA『ああ。来年は辰年のドラゴンイヤーで、D&D50周年、そしてドラゴンランス40周年で、待望のドラゴンランス・シナリオ日本初邦訳で、俺の心はドラゴンでいっぱいなんだ。年賀状もドラゴンだしな』

 

アスト「で、ここでもドラゴン話をしに来たのか?」

 

NOVA『いや、それはコンパーニュでヒノキ姐さんとたっぷり語って来たからな。ゲームブック「パックス砦の囚人」「ウェイレスの大魔術師」「奪われた竜の卵」の話なんかも、そちらで語って来たので、興味のある御仁は覗いて見るのも一興だろう』

 

アスト「85年にD&Dが日本初上陸して、ゲームは新和が版権をとって、小説やゲームブックなどの書籍系は富士見書房が出版権を獲得して、とにかくD&D推しが凄い時期だったんだな」

 

NOVA『俺がその波に乗ったのは86年になってからなんだが、86年のドラクエとか、87年のファミコンウィザードリィ登場とか、RPG文化が一気に日本でメジャー化したのが80年代後半だった。パソコンゲームの一部マニアなんかは80年代前半から注目していたらしいが、当時の中学生で親がパソコンを買い与えていた層は一部の金持ちぐらいだろうし、俺には縁がなかったな。

『高校に行くと、何人かの友人が持っていて、PC8800とかX68000グラディウスの映像すげえとかの話題を振って来て、こっちは「グラディウスの名前の元ネタはローマ時代の剣の名前で云々」とにわか仕込みのTRPG蘊蓄を語ってみたら、実は勘違いだったことが後から分かったりする』

 

アスト「何の話だよ?」

 

NOVA『いやあ、シューティングゲームグラディウスにハマっていた友人がいて、俺のTRPG仲間の1人だったんだが、お互いの知っている知識を交換したりしながら(主にパソコン雑誌の受け売り)、親睦を深めていたんだな。で、俺の興味はアナログ系というか、パソコンやファミコンなどのデジタル系は家になく、ゲーセン小僧でもなくて、興味のジャンルが「タクテクス」などのボードのシミュレーションゲーム系から、次々創刊されるパソコン雑誌を本屋の立ち読みで情報仕入れていた人間だから、そっち方面からRPGの知識を吸収する流れなんだ。で、雑誌に書いている話でも、事実と嘘が入り混じっていたんだが、それを峻別する目はまだ持っていなかったわけで』

 

アスト「それで、グラディウスと何の関係がある?」

 

NOVA『いや、シューティングゲームグラディウスはつづりがGradiusで、一方のローマ時代の剣はつづりがgladiusだから、rとlが違うんだ。そうとも気づかずに、どこかの雑誌で仕入れた豆知識を嬉々として語っていた高校時代の自分に今でもツッコミ入れたいわけで』

NOVA『やはり、世間でグラディウスと聞いて、メジャーなのはシューティングゲームのタイトルだろうが、俺にとってはT&Tの直刀系武器だな。ショートソードよりは強く、ブロードソードよりは弱いという絶妙な性能で、必要体力が10というのが初期装備にちょうどいい。ショートソードが必要体力7で、ブロードソードが15だから、3D6の期待値10〜11だとグラディウスがちょうどフィットするんだな』

 

アスト「って、グラディウスの話をしに来たのか?」

 

NOVA『おっと、違った。今回のメインテーマはこっちだ。グラディウス話は、脳内記憶の違うフタが開いたっぽい』

 

モンスター事典の話

 

NOVA『で、ジャクソンさんのFFコレクション4が年末から来年2月に発売延期されたので、年末のFF目玉はこの本なんだな』

 

アスト「確かAFFのモンスター事典は3冊めだよな」

NOVA『最初のモンスター事典は、86年秋に社会思想社から出て、俺が初めて買ったTRPGのモンスター本ということになる』

NOVA『ちょうど同じ時期に富士見書房からもモンスター・コレクションも出ていて、どっちを買おうかなあ、と悩んだ結果、先にモンスター事典を購入したんだ。そっちの方が分厚くて、いっぱいモンスターが載っているという理由でな』

NOVA『で、86年の俺はRPGの世界に入門したばかりだから、ゴブリンと聞いてもあまりイメージが湧かないぐらい素人だったわけだよ。ゴブリンと聞いて、え? 宇宙鉄人キョーダインのボス? ってリアクションだったと思う』

アスト「それはそれで、マニアックなリアクションだろう?」

 

NOVA『他にも、こんな映画があったな』

アスト「GOBLINって英語表記なのに、何で和名がガバリンなんだよ?」

 

NOVA『そもそも、英語タイトルはHOUSEなのに、ガバリンって意味不明だ。これが80年代の邦訳センス。言わば、バタリアンみたいなものだな』

ガバリン

ガバリン

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NOVA『あと、80年代前半でゴブリンと言えば、これか』

NOVA『まあ、アクロバンチは当時、見てなくて、ずいぶん後にスパロボで参戦した際に、設定を知って、82年からゴブリンとは時代を先取りしたんだなあ、と思った次第だ。もしも先にアクロバンチを見ていれば、俺のゴブリンの印象は若干変わっていたろうが、一番最初にゴブリンを知ったのは、おそらくソーサリーの呪文GOBだと思う』

ダイアンナ「初めて知ったゴブリンが、モンスターとして戦ったのではなく、召喚呪文だったとはね」

NOVA『火吹山より先にソーサリーに手をつけたからな。もしかすると、ブレナンの作品の方が初ゴブリンかもしれんが、そちらのゲームブックは処分してしまったから、ゴブリンが登場していたのかも不明だ』

 

アスト「で、今回はゴブリンの話をしに来たのか?」

 

NOVA『いや、違う。モンスター事典の話をしに来たんだ。ええと、86年のRPG初心者の俺にとって、モンスター知識は「モンスター事典」と「モンスター・コレクション」ともう一冊、この本がバイブルだったな』

NOVA『で、当時は何が何だか分からないものを目についたところから手当たり次第に知識を吸収していって、分かったり、分からなかったり、分かったと思い込みつつも微妙に勘違いしていたのを後年に修正したりしながら、ファンタジーRPG知識の技能を高めていったわけだが、その中でもやはりD&Dの赤箱や青箱のモンスターリストが基本になる』

 

アスト「モンスターの強さとか、その辺が基盤となるわけだな」

 

NOVA『で、「モンスター・コレクション」はD&Dが種本で、「RPG幻想事典」はもっと広く神話伝承(指輪物語とかギリシャ北欧神話など)の怪物知識を広く扱い、「モンスター事典」はゲームブックのFFシリーズ(後にタイタンと名付けられる世界)特有の癖のあるカタログというのも、少し経ってから分かった。その中で、誤解していたこともあったんだな』

 

アスト「誤解?」

 

NOVA『「城砦都市カーレ」の下水道にいたスライム・イーターというモンスターなんだが……』

アスト「表紙にもなっている肥食らいのことか?」

 

NOVA『こいつは、下水道で汚物を喰らっている軟体生物風のFFオリジナルモンスターなんだが、最初はスライム・イーターと訳されていたので、俺は「RPGモンスターで有名なスライムを捕食する上位生物」、つまりスライムの天敵みたいなもんだろうと誤解していたんだな。だから、86年にドラクエを元に作ったオリジナルRPG風システムに、序盤の敵であるスライムを倒した後に、スライム・イーターをそういうイメージで登場させたんだ』

 

アスト「スライムが、スライムベスやらメタルスライムなど色違いの上位モンスターが登場するような感じか?」

 

NOVA『当時のスライムイメージは、ドラクエかその前のドルアーガに登場したグミゼリーみたいなのが一般的だからな。そんなスライムを捕食して巨大化したスライムイーターなんてものを登場させた。後から、ドラクエ4キングスライムが出たときに、そうそう、そんな感じと思ったイメージだな(まあ、王冠はかぶってないけど)』

 

アスト「FFのスライムイーターに間違ったイメージを持っていたのか?」

 

NOVA『その後に、「モンスター事典」での説明を読んで、え? 肥食らい? もしかして、こいつはモンスターのスライムとは関係ない? スライムとは「下水道の汚水混じりの生ゴミ」で、それを食って栄養分にしているモンスターだったのか。勘違いしていたなあ、と思いながら、自作RPGのスライムイーターは解釈違いでした(テヘペロ)と当時のゲーム仲間に打ち明ける機会もなく、今初めて、この場で披露する次第』

 

ダイアンナ「まあ、オリジナルモンスターで、スライムを捕食するスライムイーターがいてもいいと思うけどね」

 

NOVA『解釈違いが広く流布して、そちらが定番になることも時折り見られるな。そもそも、スライムだってD&Dでは剣で斬られない(松明の炎なんかで燃やせばいい)ゲル状のモンスターだったのが、ドルアーガドラクエで可愛い系の雑魚モンスター系のイメージが固まってしまった。一方、D&Dモンスターのイメージを一般に印象づけたのはファイナルファンタジーだと思う。特にザコキャラとしてのゴブリン像は、ロードスなどのフォーセリア関連と、FFシリーズ(ゲームブックとファイナルのどちらも)が定着に重要な役割を果たしたわけだな』

 

アスト「90年代になると、コンピューターゲームの攻略本なんかでモンスター解説ページがあって、そこから定番のモンスター知識を習得する道筋もできたな」

 

NOVA『モンスターを仲間にしたり、召喚魔法にしたりする文化が定着したのも、90年代だと思う。まあ、マニアックにはWIZ4のワードナとかになるんだろうが』

 

ダイアンナ「それでも87年か。そう考えると、ソーサリーの召喚魔法GOBの方が早い?」

 

NOVA『ソーサリーは83年からスタートだったんだな。つまり、今年はソーサリー誕生40周年だったんだが、翻訳が遅れたので年内に間に合わなかったのが残念だ。ともあれ、ゴブリン召喚呪文GOBのせいで、タイタン世界のゴブリンは死体から歯が抜かれる文化が広まっているらしい。とりあえず、ゴブリンを倒したら、歯を回収するというのが妖術系の魔法使いのたしなみだな』

 

アスト「スライム話からゴブリン話に戻って来たか」

 

NOVA『で、FFシリーズのゴブリンの亜種は、ノーマルの他に、ダークゴブリン、砂漠ゴブリン、ハーフ・ゴブリン、丘ゴブリン、ゴブリンリーダー、沼ゴブリンの7種類で、意外と少ないと思ったな。オークの方が多くいる』

 

アスト「それはダジャレか?」

 

NOVA『(スルーして)オーク、大(グレート)オーク、人(マン)オーク、山オーク、ピグミー・オーク、海オーク、嗅ぎオーク、沼オーク、トロール・オーク、ウグルク・オークなど10種類もいることが、真モンスター事典の巻末索引でよく分かった。まあ、もっと数の多い種族が3種類あるんだが』

 

アスト「FFで一番数の多い種族は?」

 

NOVA『デーモンだな。索引でざっと数えてみると、45種類もあった。まあ、魔界サプリとかで多少水増しもされているが、デーモンの種類の豊富さは、さすがにゴブリンやオークでも勝てないだろう。鏡デーモンとか、砂デーモンとか、蟷螂デーモンとか、様々な雑多な単語と組み合わせられるだろうしな』

 

ダイアンナ「確かに、鏡ゴブリンとかはイメージできないね」

 

NOVA『仮面ライダー龍騎のミラーワールドに生息してそうなゴブリンだな』

 

アスト「無理やりイメージしてるんじゃないぞ。砂漠ゴブリンはいても不思議じゃないが、砂ゴブリンはな」

 

NOVA『砂でできたゴブリンは、もはや魔的に変異した別生物だもんな。馬デーモンは想像できても、馬ゴブリンはいないだろうし』

 

アスト「高貴な馬をゴブリンと引っ付けるんじゃない。ゴブリンは狼にでも乗ってろ」

 

NOVA『ゴブリンが狼化したウルヴリンもしくはゴブルフなんて考えてもいいが、もはや別種族っぽいな』

 

ダイアンナ「デーモンの多彩さは分かったので、次に多い種族は?」

 

NOVA『ダイナソア、すなわち恐竜だな。まあ、翼竜プテラノドンとか、首長竜のエラスモサウルスやプレシオサウルスなんかは、厳密には恐竜ではないんだが、FFシリーズではダイナソアに分類されて、ざっと29種類がデータ化されている。なお、恐竜の王様ティラノザウルスのデータは、技術点15、体力点20と恐ろしい数値になっている。幼体でも技術点12、体力点12だそうだ』

 

アスト「しかし、デーモンも恐竜も一つのカテゴリーにはなるが、ゴブリンやオークのような一つの種族に当てはめていいのか? そういう分類だったら、ゴブリンもオークも、人型生物(ヒューマノイド)の枠に入れるのが無難だと思うが」

 

NOVA『つまり、デーモン枠にネザーワールド・デーモン(マンパンの大魔王とか)やら、ヘル・デーモン(地獄の館のラスボス)やら、運命の森の炎の魔人がいるように、悪のヒューマノイド枠にオークやゴブリン、オーガやトロールなんかがいるということだな』

 

アスト「そうそう。種族分類としては、そういうことだろう?」

 

NOVA『しかし、ヒューマノイド枠でモンスター事典で最も多く登録されているものがある。何か分かるか?』

 

アスト「モンスター枠のヒューマノイド? 狼人間とか獣憑き系か? ウマ娘なら100種類ぐらいはいるようだが」

 

NOVA『キャラクターごとの固有名詞と、種族名を混同されてもな。実のところ、FFで最もモンスター事典に数多く載せられているヒューマノイド種族は「人間」だ。ざっと28種類となっている』

 

モンスターデータとしての人間と、ポリコレ問題

 

アスト「人間がモンスター扱いかあ。まあ、山賊とか、悪の魔術師とか、ブラックサンドやカーレなどの悪徳都市の住人とか、いろいろ倒して来たからなあ」

 

NOVA『そういう職業とか物語上の役割じゃなくて、もっと微妙に異種族扱いされている連中がいるんだな。原始人的な猿人とかケイブマンとかネアンデルタールなどの他、首狩り族とか山岳部族とか原住民とか砂漠の遊牧民とか老魔女(ハッグ)とか、文化人類学的にモンスター扱いするのはどうよ? 的な連中が登録されている』

 

ダイアンナ「原住民(ネイティブ部族)とか、砂漠の遊牧民みたいな現実にある文化をモンスター扱いするのは、一部の層に反発を受けそうだね」

 

NOVA『じっさいにネット上で批判の声が上がったらしいな。今回の「真・モンスター事典」では、前書き的なあいさつ文で「人間をモンスター扱いすることの是非」について、編集サイドの弁明と決断理由なんかが記載されていて、興味深かったり』

 

アスト「昔、D&Dで神話伝承の神々をモンスター扱いして、データ表記することについて、散々批判されたらしいな」

 

NOVA『あくまでゲームの題材として、フィクションの遊び、エンタメの範疇で作ったものが、現実を傷つける可能性とか、敬虔な信仰に違背する悪魔の遊びとか、保守的で真面目な文化人の批判や抗議を受けるに及んで、現実に対する鏡や寓意としてのファンタジー物語の意義とか、抗議を避けるために「もっと現実から離れた架空世界の創造の範疇で、物語のリアルさとノンフィクションとの線引き」とか、いろいろ考えるようになったわけだな、アメリカ人は』

 

ダイアンナ「アメリカ人……ってことは、他は違うのかい?」

 

NOVA『D&Dは版上げが多く、世界最初にして最大規模のTRPG作品ということもあって、注目される機会が多いんだな。で、D&Dの変遷と周辺ジャンルの反応を見ると、アメリカのサブカル文化の大きな一幕が見えてくるわけで、5版から来年の新版の移行に際して、主にレイシズム(種族差別)の観点から、改変される要素の話題が時々見られて、ポリコレに屈しがちなD&Dとも言われているな』

 

アスト「ポリコレって具体的には?」

 

NOVA『例えば、エルフとかドワーフのような異種族をレイス(race)と表記するのがD&Dでは50年近い伝統だったわけだが、次の版ではspieciesに言い換えようとか、heやsheのような人称代名詞に対して、「このキャラは男女を超越した価値観を持っているので、人称代名詞をtheyと表記する」とか、種族問題、性別問題を配慮した文章がやたらとごちゃごちゃしていたりする。まあ、一時期、D&DではDevilやDemonという単語が使えない時期があって(教会関係者の抗議らしい)、Devilをバーテズゥ、Demonをタナーリと言い換えることで、抗議を避けようとしたこともあって、この手のネタにはいろいろと事欠かないのがアメリカのサブカルチャーとポリコレ問題だなあ、と今でも思う』

 

ダイアンナ「自由と平等や多様性を重んじる風潮が、フィクションの世界にもいろいろと影響を及ぼしているんだね」

 

NOVA『これは、最近のD&Dのシナリオを読んでいて思うんだが、敵のラスボスの女性率がやたらと高いなあ、と。ドラゴンランスの最新シナリオでも悪の女神官がラスボスで、昔のドラゴンランスは「黒竜キサンスと、青のドラゴン卿キティアラ、邪神である暗黒の女王タキシス」ぐらいしか女性人格の悪役はあまりいないという記憶だったのが、最近のシナリオは悪の女王、悪の魔女、女悪魔のラスボス率が非常に高く感じるわけだよ』

 

アスト「そう言えば、最新のD&D映画でも悪い魔女がボスキャラだったな」

 

NOVA『まあ、ロードスも魔女カーラとか、破壊神カーディスとか、暗躍する女性のラスボス率の高い物語と言えるし、単純にイラスト映えとか、女性に重要な物語ポジションを与えるという事情もあって、TRPGシナリオでは主役はプレイヤーがキャラを作るので、他に重要なポジションは敵ボスか味方のパトロン(冒険の依頼者、支援役など)しかいなくて、ただのゲームのコマならステロタイプな男でもいいんだろうけど、物語としてインパクトを与えようと思えば、男ボスよりも女ボスの方がドラマが引き立つ、というのもあるのかな、と』

 

アスト「で、女性のボスキャラ化の風潮に対して、お前はどう思うんだ?」

 

NOVA『GMしようと思えば、演技が一つの難関だな。プレイヤーだったら……男ボスよりも会話を交わしたくなるかな。男ボスだったら、問答無用でバトルに突入したくなるが、女性だと主張ぐらいは聞きたくなる。何となく説得の余地はあると思えるかな』

 

アスト「逆に説得されて、寝返る可能性は?」

 

NOVA『相手の主張や、それまでの悪行次第だな。まあ、俺はリョナ趣味ではないので、女性の敵役を痛ぶってどうこうって気にはならないが、シナリオデザイナーが男性だったら、せっかく美麗なイラストも付けてもらえると分かっているシナリオだと、重要なポジションの女性キャラを構築したいって気持ちも分かるか。そこは、ポリコレに屈したとかじゃなくて、作り手と顧客の需要が一致したと考えることもできそうか。一方で、ゲームブックのFFシリーズだと、女性のラスボス率は低いな』

 

アスト「雪の魔女シャリーラぐらいか、有名人は?」

 

NOVA『「盗賊剣士」のラスボス女性というのは、ゲームブックでは比較的珍しい女ラスボスに思えたが、FT書房の和製ゲームブックでは結構ありそうだな』

 

ダイアンナ「ダディがプレイしたゲームブックで、女性ラスボスの作品は他に思いつくのか?」

 

NOVA『う〜ん、何かあったのかもしれないが、すぐに思いつくのは「ウルティマ2」の魔女ミナクスぐらいか』

NOVA『とにかく、86年から87年はいろいろと多彩なゲームブックが発売されていたんだが、パソコンを持っていないのにパソコン雑誌で話題のゲームなんかを擬似体験するためにゲームブックを求める時期もあったわけだ。ただ、後年、実際にパソコンでウルティマ1〜3をプレイした後に、ゲームブック版がいかに違うストーリーに改変されていたかを知るようになる。ウルティマ1のゲームブック版の主人公の名前が「勇者ロト」だったり……』

NOVA『ウルティマ3の4人の冒険者が歴史人物の転生とか、元のパソコンゲームを原案に、独自改変した作品が多いなあ』

 

アスト「って、話が寄り道を通り越して、もはや違う次元のネタに突入していないか? 『真モンスター事典』の話のはずが、ロード・ブリティッシュの世界のパラレルワールドと化しているじゃないか!?」

 

NOVA『本当だ。まあ、さらなるパラレルワールドを求めてみたら、自分が昔、書いた記事を発見したり』

NOVA『何だか、いろいろな懐古話に飛んでしまって、記事の整合性がどこへやらって感じだが、悪いのはタイムゲートで時空を混乱させている魔女ミナクスのせいにしておいて、そもそも「真モンスター事典」で問題になっているのは、ジェンダー問題ではなくて、異種族・異民族問題の方ということだ』

 

アスト「女性型モンスター(いわゆるモン娘)が問題になっているわけじゃなくて、非白人、非ヨーロッパ人の異民族や未開蛮族をモンスター扱いしていることに批判が来たってことだな」

 

NOVA『この辺、中世ヨーロッパもしくは近代でも100年ぐらい前は、欧米人は普通にアジアやアフリカ人を差別していたわけだし、その辺の時代に基づく冒険物語なんかでは、未開部族は当然、主人公ヒーローに対する障害、敵キャラとして扱われることもあるわけだ。そういうのを「現代を舞台とする作品が踏襲して、時代遅れの差別感情を撒き散らすことが批判に値する」ということなら話は分かる。しかし、「昔の感覚で書かれた物語や伝統的冒険ゲームの世界観、人種差別観は、今の時代に残すのは見苦しいから、歴史から抹消すべきという風潮」があって、要するに過去の改変、古い物の考え方はけしからんから存在そのものを消せ、という主張に対して、どう応じるかだな』

 

アスト「そんなことが、『真モンスター事典』に書かれているのか?」

 

NOVA『で、ここでアメリカ人とイギリス人の物の考え方の差が出て来るのが興味深い。アメリカ人は、自由と平等を掲げられて、差別主義者のレッテルを貼られることを極端に嫌うんだな。一方、イギリス人は自由と平等よりも、伝統的価値観を重視して、保守的傾向が強いようだ。例えば、「1985年の最初のモンスター事典に記載された、異民族をモンスター扱いした表記は、当時の伝統的価値観を反映したものだから、それで傷ついた人の気持ちには謝罪しつつ、歴史資料としてはしっかり残す」と明記して、D&Dみたいな引っ込め方をしなかったんだな。ポリコレに屈せず、伝統的価値観も大事にするイギリス人の姿勢すげえと思ったわけだ』

 

アスト「やるな、ファイティング・ファンタジー

 

NOVA『まあ、これはD&DとFFの作品規模の差があるのかもしれないし、D&Dの最初の作者は故人となっており、もはや版権も個人のものではなくなっているのに対し、FFは今なお創始者のジャクソンやリビングストンが健在で、作り手も40年間の伝統を大切に考えているからかもしれない。D&Dが過去を切り捨てることで世界観を改めることもいとわないのに対し、FFは過去を切り捨てることなく続けている傾向があるなあ、と』

 

アスト「企業の上層部の思惑で、方針をコロコロ変える傾向があるD&Dと、土台を大切に考えるFFってことか?」

 

NOVA『商品としてのD&Dと、作品としてのFFという意識差かもしれないし、FFの「真モンスター事典」での前置き文は「当時の時代を反映した要素は、後に伝えるためにしっかり残す。そういう今の目では間違えている要素も、さらなる議論の出発点として使える」と主張したうえで、「モンスター事典のデータや記述は、ただの敵だけでなく、潜在的な同盟者、豊かな文化や文明を描くためのものであり、それらの要素をヒーローとして即座に使用することもできる。多様性を利用して、未開拓の可能性を探求することも前向きな方法と言える」という説明で、実に建設的な訴えをしているな、と感じ入った次第』

 

真モンスター事典の発見物

 

NOVA『で、索引とか前文に感じ入ってるサプリだが、今回の収録モンスターは知らないものがいっぱいなんだな。最初の「モンスター事典」は収録作品がFF14巻「恐怖の神殿」まで。次の「超モンスター事典」は収録作品がFF16巻「海賊船バンシー号」から20巻代に多少の未訳分まで。そして今度のは未訳分が圧倒的に多くて、ほんの少しばかり過去の事典で未収録だったものを拾ってくるだけ。その中で、おおって感じ入ったのがアクサズ(Axaz)だな』

 

アスト「アクサズ? 初耳だな」

 

NOVA『名前は初耳だが、「モンスター誕生」の主人公(ガレーキープの船長)がマランハの術で変身させられたクリーチャー・オヴ・ハヴォックの呼称だ。元々は古の魔術師アクシオンが生み出した実験生物で、「運命の森」に登場したトカゲのような変身怪物(シェイプチェンジャー)の巨体化した発展形らしい。このアクサズをモチーフに、ザラダン・マーがマランハ技術で再現したのが、あのホビット(ハーフリング)の肉好きモンスターということで、後付けながら種族名が付けられたんだな』

 

ダイアンナ「知ってるモンスターに後付けながら設定が付けられるのは面白いね」

 

NOVA『なお、アクサズの説明の文章に、人オークのグロッグの証言が記載されているのも面白いな。「真モンスター事典」は小説「トロール牙峠戦争」を正史として扱っていて、「モンスター誕生」の物語は捻じ曲げられた記録(風聞)扱いで、要はパラレルワールドな話。で、その風聞を伝えている一人がグロッグとのことで、つまり「トロール牙峠戦争」時空では、グロッグ先生が健在で、自分が出会ったことのあるモンスター(アクサズ)の話を残しているんだな』

 

アスト「つまり、『真モンスター事典』は、『モンスター誕生』と『トロール牙峠戦争』の設定を補完しているんだな」

 

NOVA『「超モンスター事典」で、ザンバー・ボーンとキンメル・ボーンが兄弟だと分かったり、蛮人スロムの兄クロムのことが書かれていて、おおって感じ入ったようなものだな。あと、「モンスター誕生」だと、イベントはあってもデータのない「ペチャクチャ獣」や「目くらまし虫」なんかにもデータ付き解説が掲載されていて、ゲームブックの副読本としても興味深く読めた』

 

ダイアンナ「攻略記事を書いた後に、そういう補完ネタがあると、興味深く読めるってことだね」

 

NOVA『最後に、おおって思ったのは、ソーサリー1巻の最後に訪れる村、トレパーニの住人スヴィン族だな。連中は人オークの部族なんだが、タイタン世界で人オークはたいてい粗暴な連中と見なされている中で、珍しく温厚で平和主義な連中だ。村長の娘がマンティコアの洞窟に捕らえられたから助けて欲しいとかで、救出任務を依頼もしくは強要してくる』

 

アスト「囚われのヒロイン救出だから、まさに勇者の仕事だな」

 

NOVA『人オークだから、決して美女じゃないというのがポイントだな。これまでのモンスター事典では、スヴィンって人オークに分類されるから掲載の必要はなかったんだと思うが、人間型種族の多様性を示すために掲載されたんじゃないかな、と思う。善の種族とされているエルフにも、黒エルフや闇エルフがいて悪役になったりする一方で、そういう黒エルフの中にも良い奴がいたりして、要は個人個人の事情を物語に反映してくれる。

『種族としては、善とか悪に分類されている一般像(ステロタイプ、お約束)があって、その中でも特定個人の人格を深く描写しているのが「誠実に差別に向き合う姿勢」とも考えるが、そういう世の中の実像や風刺(メタファー)を「差別を描くことは平等主義に反すると出版物から消去して、見せないようにする(蓋をして覆い隠す)」というのは、反・多様性というものだし、差別を描くことと差別を奨励することは違う意味だというのが、ポリコレだとしばしば混同してしまいがちと言うか、叩きやすいものをレッテル張って叩くことで自らが正義であるかのような錯覚に酔い痴れるようなところがあって、それに対しては毅然と伝統的な文化の価値を主張するとかが大事だな、と思ったりも』

 

アスト「たかがゲームの解説本に、そこまで高尚なことを考えるとは、面倒くさい奴だな」

 

NOVA『エンタメだから、楽しめればそれでいいわけだし、ゲームの本だからゲームを楽しむ人間が客層だろう? それをゲームの物語を理解せずに表層的な見方で差別がどうこう攻撃してくる方がおかしいんだな。客層の意見よりも、客でもない攻撃的な輩の意見に事なかれ主義で迎合しても、それで商品や作品が良くなるとは思えないし、とは言え、過激な論調にどう対応するかの企業ポリシーを守ることの難しさを感じたりするわけで』

 

アスト「ファンタジー世界だから、とか、ゲームだから、と言って、作り手は現実社会に生きているわけだから、現実の諸問題に背を向けるわけにもいかないってことか」

 

NOVA『逆に、ファンタジー世界が舞台だから描ける主張を、舞台が現代社会にすると、書き手のあからさまな差別感情がむき出しになって、エンタメじゃなくなる。エンタメの形を維持しながら、深読みすれば今の世相の風刺や反映として読み解けるものに面白さを感じるな。まあ、ビジュアルとか表面的な客引きフックは商品としての訴求力で必要なんだけど、その奥で継続性の深みを作品として、どう感じさせてくれるかなどetc.』

 

ダイアンナ「まあ、D&DもFFも、70年代とか80年代から長く続いてきた伝統文化になりつつあるから、時代による変化と、ブレない基盤が何かを見守り、研究するのも長年追ってきたファンの楽しみってことだね。あたしはまだ駆け出しだから、よく分かってないけど」

 

NOVA『マニア視点も大事だけど、興味を持ってこれから探究を始める初心者視点も大事ってことだな。クリエイターにしても、大人視点と子ども視点を必要に応じて行き来する姿勢が大事だって言われているし。いささか固い話になったが、今回はこれで結論として、一度まとめておく』

(当記事 完)