ストーリーの面白さとは?
ゲームブックに限らず、世の中には数多くの物語があふれ返っています。
今年の夏アニメの数を数えてみても、ざっと90本近くあって、バトル物、日常もの、恋愛もの、ゲーム関連、原作なしのアニメオリジナルなど多数の作品がひしめいていて、全ての物語をチェックすることの難しさを痛感させてくれます。
その中で、人の好みは千差万別なので、自分の楽しめる作品は何か、あるいは世間で話題になりそうな覇権アニメは何か、あるいは自分が今まで見てきた枠の中で惰性に見るだけの人や、声優目当てで視聴するとか、絵の好みとか、ジャンルとか、監督などの作り手をチェックするとか、それぞれの方針があると思います。
で、本記事はもちろん、FFゲームブックの面白さなので、それを客観評価する指針を考えないといけません。主人公や脇役NPCという重要要素はすでに語ったので、他のストーリー要素の中で、物語を盛り上げる要素は何かを考えた結果、以下の通りになりました。
(1)クライマックスの盛り上がり+1
やはり、ゲームである以上は最後にボス敵と戦って、勝利を収めて世界を救うような派手な盛り上がりが欲しいもの。いや、別に世界を救うような大きな話じゃなくても、ボスを倒して宝をゲットでも、個人的な復讐譚でも、何でもいいのですが、ラストの戦いがないと、どうも淡々と終わってしまって物足りない。
その意味で、『運命の森』や『さまよえる宇宙船』はアイテム探し、情報探しで、特にボス敵と戦わずに話が終わってしまう。結果よりも、探索の過程を楽しむゲームなのでしょうが、クライマックスが微妙に盛り上がらない。
一方、『サソリ沼の迷路』は邪悪ルートのみとは言え、きちんとボス戦を用意していますし、『雪の魔女の洞窟』はボスを中盤で倒して、ボスの仕掛けた〈死の呪い〉からの解放という変化球でクライマックスを盛り上げました。
そんなわけで、ラスボスとのバトル以外での盛り上げ要素もチェックしつつ、十分に盛り上がった作品を+1評価にします。
(2)ストーリーのよくできたどんでん返し+1
初期のFFは、最初の物語の背景に示された目的を達成すれば、ゴールというストレートなものでした。
魔法使いの地下迷宮で、莫大な財宝を手に入れろ→魔法使いを倒して、お宝ゲットして終わり♪
国を脅かす悪の妖術師将軍を倒せ→城砦に潜入して、見事に倒して終わり♪
そういうシンプルな作品も楽しいですが、巻数が進むと、話がより複雑化して、「まさか、こんなことになろうとはな(ビックリ)」という大仕掛けを用意して、奥の深いストーリー展開を楽しませてくれる作品も。
そういう作品の急展開ドラマには1点の価値があると判断。
まあ、どんでん返しが下手で、話を盛り下げるというケースもありますので、盛り上がるサプライズという条件にしたいと思います。ラスボスを倒しに行ったら、ラスボスが部下の裏切りで捕まっていて、何だか和解しちゃった? と言うのは、途中ならともかく、最後のクライマックスでそれというのは、ゲーム的にはしらけます。
ボスを倒したと思ったら、真の黒幕がいて……というのはいいですね(『トカゲ王の島』とか)。
(3)段階的な盛り上がり演出+1
これは、ストーリー構成に関わって来ますが、序盤はザコ敵で、後半は敵が強くなるという『火吹山の魔法使い』のダンジョン構造とか、川を渡ったら後半戦という初期のFFの地理構造とかで、単純な物語にも変化を感じさせる手法。
中盤でストーリーの背景を補完してくれる助言者とか(「よく来たな。ここまで試練を乗り越えて来たお前なら、真実を語るとしよう。実は……」的な情報役はいいですね)、「鉄格子が背後で閉まった。もう、後には戻れない」とか(まあ、FFシリーズは基本的に双方向ダンジョンではないので、後には戻れないのが常態ですが、その辺は物語演出ってことで)、シンプルなストーリーでも、丁寧に盛り上げる構成が見られるのは好評価です。
(4)印象的で楽しい小イベントが豊富+1
物語構成でよく言われる起承転結。
ゲームブックにおける起は、おそらく背景で語られる部分。主人公がその物語に関わることになった理由づけ、動機やきっかけの部分です。まあ、『モンスター誕生』のようなラスボスにまつわる背景もあって、主人公とラスボスの因縁は最後のクライマックスに明かされる変化球もあるのですが。
ゲームブックの承は作品によっていろいろですが、転はクライマックス直前のハードルになりますかね(火吹山だと、ザゴール前の竜との遭遇とか、その前の迷路。バルサスだとガンジーおよびキーナンバーが必要な扉。この辺で多くのプレイヤーがふるいにかけられて泣きを見るのが転、と認識)。
この承と転の間に数々のイベントが用意されているわけですが、例えば、そのイベントには攻略に必要な当たりイベントと、避けて通れる外れイベント、それに攻略必須ルートと、必須ルートから外れた失敗ルートがあるわけです(必須アイテムや情報が入手できないので、そのルートに入った時点で攻略失敗に陥る)。
でも、外れルートで面白いイベントに出会って、クリアはできなかったけど楽しいストーリー体験はできた場合、それを単純にハズレと切り捨てていいのでしょうか?
クリアするだけなら、ハズレルートは時間と作業のムダと感じる人もいるでしょうが(学生時代の自分とか)、『地獄の館』の地下の生け贄儀式の間とか、1階の台所とかはいわゆる袋小路(デッドエンド)ながら面白いイベントを経験できたりしますし、初期の『火吹山』なんて攻略必須アイテムや有用アイテムが入手できる部屋以外を全てスルーしても、最短攻略は可能です。でも、最適解を通るだけでは味気ない作品も(初期には)多くて、豊かなストーリー体験と、効率優先だけのルート選択が矛盾することも多い。
効率優先を追求すれば、バッドエンドなんてハズレもいいところなんですが、
ゲームブック個々の作品を完全攻略なんて張り切るなら、「外れルートだけど面白い」「バッドエンドだけど味がある」というパラグラフ解析、イベントチェック作業もマニアックな楽しみと言えます。
そんなわけで、『運命の森』や『さまよえる宇宙船』のような散漫なイベントが豊富な作品では、攻略や大筋ドラマに関係ない一つ一つのイベントをいろいろ体験することも楽しかったりするわけですね。一つのイベントに選択肢とそれに伴うパラグラフ数を費やして複雑化させるか、それとも簡単なバトルやトラップを連発してイベントの数を増やすかは作品の性質にもよりますが、思い出深いミニイベント、印象的なトラップの仕掛け方など、そういうのが多い作品は面白いわけですね。
でも、そういうのを評価基準に加えるにはどうすればいいか?
ここでは、このミニイベントは印象的だった(主観)というのが5つ思い出せる作品を、+1と評価します。個人的につまらないと思うゲームでも、下手な鉄砲数撃ちゃ……3つぐらいは挙げられる。だけど、5つも探すとなると、それはなかなか優れ物の佳作と考えます。
たぶん、一番、面倒な評価基準だと思いますが、振り返りを頑張ってみます。
(5)作者のセンスに感じ入った+1
ゲームブックの作者は、TRPGにおけるゲームマスター(FFの場合はディレクター)と考えます。
プレイしながら、この作者のセンス、ゲームマスタリングを楽しいと感じるかどうかは、結構大事。ジャクソンのトリッキーさ、リビングストンの王道冒険感覚などは、作者の癖として、物語への受容を助けてくれます。
そして作者の紡ぐ作品世界が自分にフィットすれば、物語も咀嚼しやすくなって、より楽しめる、と考えます。その辺の「作者の面白さを見せるセンスが、自分に噛み合っているかどうか」がはっきり伝わる作品を+1とします。
以上の5観点で、4〜5を◎、2〜3を◯、1以下を△とします。さすがに出版作品だけあって、0点という作品はなかったな、と。何か1つは取り柄を持っているわけで、そこは評価するのが客観評価ってことですな。
まずはジャクソンから
FFゲームブック第一作ということで、「迷宮入って、いろいろなモンスターと戦って、ボスの魔法使いを倒して、お宝ゲットだぜ」というシンプル極まりない作品。
D&Dの入門書みたいな企画からスタートしたそうなので、「ダンジョンに入って、ドラゴンを倒す」という展開にも沿っています。
特別なドラマは何もありませんが、冒険初心者はダンジョンの通路を左右選ぶだけでも、扉を開けるかどうか決めるだけでも、そして戦いでダイスを振るだけでも、罠にハマってビックリするだけでも、楽しめるもの。まあ、罠にハマって即死するようなデッドリーな代物だと、初心者は楽しめないですが、「体力2点減らすこと」ぐらいなら、イテテテテぐらいな感覚で、それもまた一興と言える。
それに、運の回復も早いですし、食料も十分あるので、冒険中に死ぬことはまずないでしょう。断念するのは、終盤の迷路のクリア方法が分からないことと、ルートを間違えて鍵が上手く合わなくて、やり直す気になれなかった場合ぐらいかな、と。
クライマックスにおける、ザゴールとの戦いは、その前の竜との戦いから引き続き、緊迫感を伴いますので+1。ただし、竜は序盤に手に入る巻き物で対処できますし、ザゴールも不死身の秘密を知っていれば(知らなくても)、簡単に弱体化も、即死もさせられます。自分は、ガチ能力のザゴールの強さを、『火吹山ふたたび』で初めて知りました。
実は強かったザゴールのおっさん、という点でビックリです。
それにしても、ザゴールさん、改めて考えるに、『ふたたび』で復活し、『伝説』でも復活し、小説ではそれでも死んでいなくて物語はさらに続いたようですし、しかも巨人という遺産まで残して、FF歴代の悪で一番しぶといというか、しつこいというか、さすがは元祖ラスボスと言えます。一回しか復活していないザンバー・ボーンよりも、よほど〈不死の王〉の称号にふさわしいというか、世界で一番たくさん倒されているボスキャラは、ザゴールかウィザードリィのワードナか、と思っています。いや、スーパーマリオのクッパかもしれないけど。
さておき、『火吹山』にはどんでん返しがありません。
でも、段階的な盛り上がりが見事に構成されたダンジョンなので+1。ストーリーではなく、敵の配置で徐々に緊迫感を高める手法は、入門編としてもよくできています。
次に『火吹山』の印象的なイベント5つですが、個人的には「ドラゴン」「迷路の奥のミノタウロス」「ネズミ男の渡し守」「死体に化けて不意打ちしてくる食屍鬼(グール)」それと「迷宮に入って右の通路の扉のトラップ」をよく覚えています。
怪物との遭遇は、割と定番なんですが、本作は入門編ということもあって、ファンタジーRPGの教科書的な連中が多く、FFオリジナルのモンスターは出て来ない。何せ、本作が日本で紹介された時には、ゴブリンとかオーク、エルフ、ドワーフという種族さえ知られていなかった。ゴブリンとの初遭遇は、D&Dか、ゲームブックのFFシリーズか、童話の『ホビットの冒険』かという時代で、それが数年経つと、『ロードス』や『ソード・ワールド』もしくはファイナル・ファンタジーということになる。まあ、パソコンRPGをする層には別の初ゴブリン体験もあったのでしょうが。
とにかく、「剣と魔法のファンタジー世界を楽しめるゲーム」という存在自体がまだ新鮮で、モンスター1体1体も多くの読者にとっては手垢がついておらず、奇をてらう必要があまりない時代の産物です。よって、ここからいろいろファンタジーの基本を学べるのが、本作の最大の特長。
しかし、時代を経ると、定番すぎて新鮮味を覚えなくなるのも、スタンダードな入門書の宿命。とりあえず、普通にハック&スラッシュを楽しめれば、それでいい作品です。
でも、トラップは少々イジワルですよね、立て付けが悪いのか上手く開かない扉を体当たりで開けようとして、技術点判定に成功すると勢いあまって2メートル下の穴に落ちてダメージ1点になる。判定に成功した方がダメージを受けるなんて、酷いよ、リビングストンさん(迷宮前半、川を渡るまではリビングストン担当)。
敵はザコでも、罠はなかなか意地悪。ただし、受けるダメージは低いので、軽い警告とか教訓みたいな感覚です。
そして、この入り口の右側の行き止まりの扉が、実は「秘密の宝部屋」に通じていたとは、40周年記念の『巨人の影』で判明するその事実に感心させられました。後付け設定とはいえ、確かにただの行き止まり(倉庫とかでも何でもない、プレイヤーを騙すだけの部屋)に意味を持たせる大仕掛け。
ともあれ、迷宮の中には、モンスターがいて、罠がある……というゲームの定番を教えてくれる、80年代初頭の入門書であり、時代を越えた今もゲームブック界の王道スタンダードとしての価値は保ったまま、50作品め(『火吹山ふたたび』)や70作品め(『サラモニスの秘密』『巨人の影』)などのメモリアル作品でも言及される、始祖作品としての歴史的評価はますます高まっています。
何だかんだ言って、ジャクソンとリビングストンの合作というのは、これ1作ですからね。
火吹山の数々のイベントも、後の作品に引用されて、元ネタとしての価値もあるために、ますます印象を深める+1の価値は余裕であるでしょう。
最後に作者のセンスですが、川を渡るまでがリビングストンで、川を越えてからがジャクソンということなので、
『火吹山ふたたび』でも、作者のリビングストンは自分の担当部分だけ、しっかりと再現したわけですな。アイテムの入手も前半が多く、敵の能力も弱い。基本的にリビングストン作品の敵が強くなるのは、6作めの『死の罠の地下迷宮』からであって、序盤は『運命の森』しかり『盗賊都市』しかり、割と弱いという印象なのですね。
一方、後半担当のジャクソンは、手の込んだイベントが多くなっていて、迷路で迷わせるのもジャクソンの十八番。この手の「ストーリー性の薄いゲームのためのパラグラフ構造」は、『さまよえる宇宙船』や『モンスター誕生』などでも見られて、ゴールまで辿り着くのが大変なのがジャクソンの作風ですな。
リビングストンの場合は、ゴール近くまでは迷わずに行けるのだけど、必須アイテムが足りなくて、それを探すために再プレイさせられることが定番。だから、リビングストン作品の場合は、戦闘とアイテムをスルーすれば(勝ったとか、入手済みとかの選択肢を選べば)、立ち読みでもゴールまで行ける。まあ、バッドエンドの多い作品では指セーブが必須だけど。
よって、番号付きの鍵を3つ集めて、数字を合計するギミックは、ジャクソンのアイデアだとは思いますね。リビングストンの作品では、そういう数字の組み合わせギミックはほとんど使われていませんし。
そして、作者2人のセンスですが、これで感じ入っていなければ、こうしてFFシリーズのゲームブック記事を書いていません。まちがいなく+1ですよ。
そんなわけで、長くなりましたが、「クライマックス+1」「段階的な盛り上がり(巧みな構成)+1」「印象的なイベント多数+1」「作者のセンス+1」の合計+4。
本作のストーリーの面白さは、4点ってことで◎です。王道ダンジョン探検ものとして、どんでん返しなしの直球勝負の傑作ということで。
火吹山が王道なら、こちらはいきなり変化球の奇道と呼べる作品。
難易度も、うちの独自の計算で、火吹山が10段階中の3なら、バルサスは6という急上昇ぶり。ジャクソンの作品はトリッキーで難しいという評価が出たのは、早速この作品から、と。
この難易度の高さを、山本弘さんが旧ウォーロック誌上でネタにしたコミック『私はこうしてバルサスした』が、賛同されるぐらい難しい、と(11回死んで、12回めにクリアしたそうな)。
その後のAFFリプレイ『タイタンふたたび』でも、最初の冒険の舞台がバルサスで、メインのヴィラネスがバルサスの未亡人ルクレツィアである辺り、氏の最も印象深い作品の一つなんでしょうな。
ゲームとしてのポイントは、主人公が魔法を使えるということですが、物語としても主人公の魔法戦士が、同じく魔法戦士のバルサスを倒しに行くという、ストレートな英雄譚です。
妖術師将軍のバルサス・ダイアが悪の軍勢を召集して、サラモニス王国を襲撃する準備をしている。バルサスを倒さねば、王国は戦火に包まれるだろう。〈ヨーレの森〉の大魔法使いの弟子である若き魔法戦士の主人公は、持ち前の正義感で単身、敵の要塞に侵入してボスを倒しに行こうと旅立った。
ただの宝探しから一転、王国を救う勇者の物語ですな。
そしてクライマックスにおける、バルサスとの剣と魔法を駆使した決戦は、ただのサイコロの振り合いだけではない、ゲームブックのパラグラフ構造を巧みに活かした、互いの技と術を仕掛け合う丁々発止と言うべきバトルで、作者の技巧に富んだ展開になっている。
まあ、うまくパラグラフを選べば、太陽の光に弱いというバルサスの弱点を突いて(まるで吸血鬼)、あっさり倒せるのですが、そういう状況に持ち込むまでに、相手の仕掛ける魔法をうまく凌がなければいけないので、バルサス戦でのパラグラフ構造は非常に凝っていて、解析するのも楽しかったな、と(バッドエンドも含めて)。
ゲームブックで印象的なラスボス戦として、トップ3に挙げられるほどの名勝負です。+1ですな。
なお、残り2つは、ソーサリー1巻のマンティコアを魔法で完封する展開と、ドルアーガでした。
初期作品なので、どんでん返しはありませんが、強いていうなら、バルサスが主人公の力量を讃えて、仲間にならないかと勧誘して来ます。ここでバルサスに降伏すると、悪堕ちゲームオーバーですな。
バルサスも、後のライバルとなるザラダン・マーも、軍隊を率いる辺り、部下の確保を重視するようで、主人公を勧誘するシーンがあるのです。まあ、後者は自分の生み出した改造モンスターだから、愛着があるのも納得ですが、自分を暗殺しに来た見ず知らずの刺客に対して、仲間になれと声をかけるバルサスさんの器が凄い。
悪の英雄として、非常に格好いいキャラだと思っています。東洋風の弁髪キャラってのも、個性的な風貌でいい。
段階的な盛り上がりとしては、城砦への侵入から始まって、中庭を通過して、建物に入る。その建物が地下と1階、2階以上の大きく3層構造で、こういう階層構造は階段を上り下がりすることでも、普通に緊迫感を演出できますな。当然、奥へ進めば進むほど、敵も強くなるわけですが、侵入者だとバレて、地下牢に閉じ込められて、そこからの脱出展開とか、上層階の敵は普通に戦って倒せないものが多く(その代表なのがガンジー)、力押しで解決できる火吹山よりも、緊迫感が大きいです。
敵の強さに応じたストーリーの段階的な盛り上がり、という意味では、火吹山を踏襲していながら、敵モンスターの異質さ(原題が『混沌の城砦』だけに、円盤人とかカラコルムとかガークとか本作オリジナルモンスターが多い。サイ男も他では見ないな)もあって、よりエキゾチックな雰囲気です。+1。
5つのイベントとしては「ガンジー」「レプラコーンのオシェイマス」「コレクション版の表紙絵にもなった竜巻女」「FF初の名あり女性キャラでもあるルクレツィア」「ネズミ嫌いの双頭トカゲ人カラコルム」で、王道ファンタジーの火吹山とは違う雰囲気に、また違ったFFらしさを感じた作品。
それと、魔法の効果演出が面白いですね。特に、敵の心を読むESPで意外な情報が入ってきたり。
情報といえば、図書室で本作独自のモンスターの紹介がいくつか、と、ルクレツィアがバルサスの妻であることなど、興味深いトピックがいろいろ。情報に力を注ぐジャクソンのスタイルの片鱗がここでも見えています。
まとめると「クライマックスバトル+1」「段階的な盛り上がり(2階からは倒せない敵の続出で緊迫感を高める)+1」「印象的なイベント多数+1」「ジャクソンのエキゾチックなセンスの露呈+1」の計4点。◎評価です。
どんでん返し的な展開がなくても、イベントの数々を順序立てて配置するだけで、楽しめる作品だった、と。2作めにして変化球というジャクソンの派手なスタイルもいいですね。
③さまよえる宇宙船
ジャクソンの変化球ゲームブック第2弾。
ファンタジーのシリーズかと思いきや、SFかよ。元ネタは『スタートレック』とSFRPG『トラベラー』で、D&Dだけじゃないんだ、とシリーズの多様性を感じさせます。
ルールも一気に増えて、アイデアの宝庫、実験的精神の発露みたいな作品。
ただし、テーマがファイティングの名に反して、星々を巡る情報探しの旅、バトルは必要最低限の護身のために行う。何なら、バトルを一切しなくても、いや、サイコロを振った判定を一切しなくても、パラグラフ選択だけでクリアできる。
つまり、プレイに慣れて、パラグラフ構造を理解すれば、せっかく増やしたルールを使うことなく、終わらせられるんですね。
結果として、クライマックスがバトルもなく、それまで入手したキーナンバー合計の答え合わせだけで終わるという。
火吹山をザゴール戦抜きで、宝箱の鍵を開けるだけで終わって面白いだろうか?
ルールは増えたけど、バトルの面白さをストーリーの方が切り捨てた結果、盛り上がりどころを欠いて、淡々と終わった感の作品です。
盛り上がりシーンの一つと言えば、表紙絵にもあるように、闘技場バトル。
これで勝利を収めることで必須情報が手に入る、となれば、それをクライマックスと認定できたんだけど、入手するのが偽情報で、外れルート確定だからイヤらしい。
つまり、一見正しいルート、面白そうなイベントにつられてみると、実は外れだったという、ジャクソンのパラグラフ構造のトリックが最初に出てきた作品だ、と。
バトル的にも盛り上がるイベントが、攻略上は外れだということで、攻略上の正解と、面白いストーリーが両立しにくいパラグラフ構造になってしまっている。
ゲームを解くのに通るべきルートと、面白いイベントが噛み合わないために、運よく正解を進んだプレイヤーは逆に本作の魅力を堪能できないという。
まあ、分岐ルートの多いゲームブック全てに関わるジレンマですな。
だからこそ、クリアした後でも、別ルートを探って全てのイベントを探す作業が楽しいんだけど、リアルタイムではそこまでハマれなかった作品なので、ここで攻略記事を書くときの再解析で楽しみ直した、と。
このパラグラフ構造そのものが、どんでん返し的な作品だと考えます。+1。
最後の宇宙港とか、普通に話を進めると大体は到達してしまう場所が外れとか、正解のルートに入るには、普通は避けて通りたいウィルスイベントの発生する小惑星を調べるのが必須とか、「たった一つの正解ルート」が見つかりにくい構造になってます。
イベントを総チェックした攻略記事では、少々分かりにくかった正解ルートを改めて記すと、「パラグラフ1から最初の3択で比較的安全な前方の86を選ぶ→途中の惑星イベントはスルーして別の惑星321に進む→惑星をスルーしまくると、パラグラフ126番で、大きな赤い惑星ダー・ヴィルの近くにある灰色の小惑星が目についたので、そちらを調べに行く(261)」
ここで、ついつい赤い大きな惑星に行きたくなるのですが、そこに行ってしまうと、その時点で攻略不能ルートに入ってしまう、と。
「小惑星探査後、ウィルス蔓延を防ぐために帰船ドックを封鎖(18)→汚染された空気の排出(284)で判定なしに事件解決→パラグラフ11で3つの選択肢。予定どおりの赤い大きな惑星か、青い惑星(2)か、高速の光点(ガンジグ帝国の宇宙船)かを選択。ここで青い惑星ジョルセンに進まなければ攻略失敗」
ジョルセンに行くには、ウィルスイベントが必須なんですね。普通は危険なウィルスイベントを経験した後は、それを避けて通りたいのがプレイヤー心理だと思いますが、ウィルスの先に希望の未来がある、と。
「ジョルセンで次元門の実験に志願、もしくは強制的に送られる→迷路構造の選択肢は、53、293、322、214、318、232と進むのが最短攻略。この手の分岐迷路はジャクソンの十八番ですが、物語的にはパラグラフの水増しにしか思えなくて、多用されるとうんざり。まあ、ゲームブックの一つの手法なんですけどね。とにかく実験成功で、159宙域の空間座標を手に入れて本作では必須イベント、と」
「その後は、惑星をスルーし続け、宇宙港にも絶対に入らずに、どんどん先へ進み続けると(鉱山惑星マリニに行きたくなるけど、それもスルー)、320から超空間ジャンプして331へ。さらに前方の黒い惑星をスルーすると、104で灰緑色の惑星テリアルへ進むことができる。そこで支配階級の子どもから情報交換で21恒星日の時間座標を入手。ポイントはテリアル以外の惑星イベントがリスクだらけなので、ことごとくスルーするのが正解という点です。惑星マリニはダミーの空間座標が得られたりして紛らわしいですし、宇宙港に入ったが最後、絶対にテリアルへは行けない、と」
ダンジョン内の扉と同じで、攻略必須とかメリットのある場所以外はスルーするのが最適解ですが、本作の場合はそれが極端で、イベントをクリアして得られるものがあっても、実質的に役立つものが何もないに近いので、各惑星でのイベントを楽しむ以外の攻略上の価値はない、と。
そして、最後に空間座標から時間座標を引いた138番に進むと、最終パラグラフの340番に到達できて、ハッピーエンドです。おめでとう!
攻略必須情報はたったの2つなのに、それを入手するには、目立つ赤い惑星と宇宙港をスルーしなければいけないという仕掛け(選択肢がそちらに誘導しようという作りになっている)のせいで、ジョルセンもテリアルもなかなか気づきにくい。
ボス戦がないおかげで、攻略難易度はバルサスより1低い5ですが、正解にたどり着くまでの試行錯誤はバルサスよりも大変じゃないでしょうかね。
魅力的なイベントは、ファンタジーでないSFっぽさがいろいろで、ゴールを目指さずに、SFミニイベント体験ゲームと見なせば、本当に盛りだくさんで楽しめます。+1。
ロボットに支配された惑星という定番から、未開人から神のように崇められている技術者、帝国の宇宙戦艦とのバトル、燃料補給のための採掘作業、新聞記事や図書館の資料から分かる他の惑星の背景事情で文明の栄枯盛衰が分かるとか、SF星系めぐりをいろいろ堪能できます。
楽しい数々のイベントをスルーすることが最適解なんて構造にしてしまったために、本作の面白さは十分伝わりきれていないと感じます。
あと、ドラマとしては淡々と描写されているだけですが、主人公の船長以外の仲間は、ちょっとした事故で簡単に死にます。仲間の死を明確なドラマにしたのは、リビングストンですが、厳密にはジャクソンが先になりますね。
ゲームのコマとしての仲間の死なので、そこに感情移入するかはプレイヤー次第。また、死ぬかどうかも選択肢やダイス目次第なので、プレイヤー同士の共通体験になりにくいのも本作を語るのが難しい要因かも。
まとめると、「パラグラフ構造による、正解が巧妙に隠されたダミー情報によるどんでん返し+1」「SF王道を感じさせる、豊富なイベント群+1」「ジャクソンのトリッキーさがいろいろ爆発した実験作+1」の計3点。◯評価です。
あとがき
ストーリーの面白さを改めて振り返ると、ずいぶん長文になりました。
攻略記事の補足めいたことにもなっていて、このペースだと、次回は『ソーサリー』『地獄の館』『サイボーグを倒せ』『モンスター誕生』『サラモニスの秘密』まで、どれだけ掛かることか。
まあ、逆に言えば、今回の3作は、攻略記事初期に書いたので、自分が十分に感想を書いて来なかったという理由で、ここで改めて掘り下げたかったという事情もあります。
『地獄の館』以降は、テンポよくまとめられる……といいなあ。
(当記事 完)