前回、ハーフリング(ホビット)の話が「つづく」となったので、タイトルを変えて改めて。
なお、タイトル元ネタの映画は、ホビット主演の名作だけど、原作小説の邦題は『指輪物語』、英語タイトルの直訳は『指輪の王』となります。
80年代のTRPGファン(その多くはD&Dの洗礼を受けている)にとっては、西洋ファンタジーのイメージソースの重要な作品として、前編の児童文学『ホビットの冒険』と共に推奨図書として、しばしば語られ、NOVA自身、高2の時に『指輪』を読み、高3の夏休みの間に英語版『ホビット』を和訳して、「よし、これで英語の勉強はバッチリだな」などと調子づいていたりしていたわけで。
って、そんなバカなことをしていたから、夏が終わって理系から文転するような目に陥ったわけでござるが、今の自分だったら、高校時代の自分にこう説教するのでしょうな。 「よくやった。お前がそうだったからこそ、今の俺がいる」
いやね、結局のところ、理系の勉強も、文系の勉強も、両方をやりこなすことになって(もちろん、できなかったこともあるけど)、二足のわらじを履くことになったから、勉強なら一通り何でも教えられる自称スーパー万能教師になったわけで(もちろん、完全にそれ一本でやってきた専門家には及ばない部分があるにせよ)、一人で塾経営するのに功を奏している、と。
これが、まあ、30代ぐらいだと、そこまで人生、達観できずに、普通の受験指導として、こんな言い方をしていたのでしょうな。 「お前、この時期に、そんなバカなことをしていると、物理とか化学が伸びるわけないだろうが。おまけに、英語だって、児童文学を訳したぐらいで、調子に乗ってるんじゃないぞ。大学受験に出る英語とは、出題ジャンルも全然違うしな。誰がどう見ても、自己満足で、それっぽい大義名分つけながら、自分のやりたいことをやっているだけだ。そんなのじゃ、受験勉強とは言えん。今すぐ考え直せ」って。
で、高校時代の少々、遅い反抗期入った自分は、「未来の自分と称する冴えないおっさん」を睨みつけて、こう言うのです。 「あなたの知ったことですか。これは、僕の人生です。僕の好きなようにやる。人の運命は誰にも見えない。自分で切り開け。甘えてはいけない。あなたが未来の僕だとしたら、この歌、知っているでしょう? 夢を果たすまで、一歩も退くな。負けたと思うまで、人間は負けない、ですよ。未来のあなたに、それが実践できていますか?」
まあ、何となく融通が利かず、目の前の課題に対する集中力が半端なく、それでいて一途な自分に頭を抱えながら、そんな若き日の自分を誇らしく思いつつ、「……このバカ野郎が。だけど、人生頑張れよ。応援してやるから」と声掛けしたくなる、今の自分がいたりします。
閑話休題。 話を元に戻さないと(戻るかな?)
★未訳ルールとか、メール対応とか
あ、前の話を受けて、過去の自分にアドバイスできるなら、「D&Dのイモータルセットは英語版で買っておけよ。邦訳出ないから。ついでに、ガゼッタの未訳サプリメントも買っておいてくれると、今の俺がブログ記事書くときに、大いに参考になる。まあ、必要な金なら出すからさ」ぐらいは言っておきたいね。
それと、何だかメールで、『クラシックのD&Dのエルフとダークエルフについて記事を書いて欲しい』とリクエストしてきた人がいるんだけど、実は、クラシックにはダークエルフいないんだわ。よって、字義どおりに受け止めるなら、「不可能です」と答えざるを得ない。
もちろん、融通を利かすなら、ガゼッタの未訳サプリメントに、シャドウエルフっていうダークエルフ的存在が紹介されているんだけど、該当サプリメントを持ってないので、記事を書くほどの情報がない。やっぱり不可能。
AD&Dとか、3版以降の新世紀D&Dならダークエルフことドラウについての記述も調べられるだろうけど、基本ルール以上の情報をいろいろチェックしないといけないので、掛かる手間が膨大すぎる。不可能じゃないけど、困難。
ロードスとか、SWとか、クリスタニアでは、ピロテースを始めとするダークエルフの記述も書けそうだけど、当ブログの方向性とは違う方向に突き進む気がする。書くには若干、時期尚早な気もするし。すぐには無理。
あとは、D&Dで最新の5版になってようやく『基本ルールブックにドラウの作成データが載るようになった』ことも特筆すべきことかな。まあ、基本的にダークエルフって一部の例外を除けば、プレイヤーキャラではなくて、敵モンスター扱いだからね。基本ルールには載ってないのが普通なんだわ、これが。
……って、一応、メールでのレスより、この場での公開情報にしておく方がいい内容なので、ここに書いておきました。
メールで応じるなら、「それは不可能です。理由はうんちゃらかんちゃら」と似たような文をこっちが書いた挙句、せいぜい「分かりました。無理を言って、すみませんでした」ぐらいの返信があればマシな方。たぶん、こちらが書いただけの労力に応じたリアクションはなく、最悪、この話題についてはスルーされて終わり、となる可能性が大だろうなあ、と予想できますね。
だったら、上述の情報の価値を本当に分かってくれて、せめて、なるほどな、ぐらいの感想を抱いてくれる不特定多数の方々が読める記事にする方が、こちらの満足度は高まるわけで。
それでも、最近、ひそかにメール主が拍手入れてくれているようなので(こっちの推測が間違いでなければ)、その点は「励みになる。ありがとう」ぐらいの返礼はこの場で返しておこうかな、と。(追記・後に推測と違う方の拍手だと判明。まあ、拍手主への感謝の気持ちには変わりありません。)
で、ここまで書いて、またもや正気に返る。
ホビットの話題は、どこに消えた? 見失ってばかりです。
まあ、だからこそのホビットなんですが。
記事書きする自分の方も、昔は集中力が凄すぎたのに、今は注意力散漫すぎて、どっちにしても困ってしまうこともしばしば。両極端にブレないよう、ちょうどバランスよく振る舞いたいんだけどねぇ。
★ここから本題
いつものように、たっぷり寄り道をした後で、ようやくホビット(ハーフリング)の本来したかった話に突入。
あ、それとタイトルの映画のパロディは、「ハーフリングの王」ではなくて、「ハーフリングの道」の意味ね。カタカナにすると、どっちもロードで一緒だけど、LordとRoadで違うつづりなんだわ、これが。
まあ、厳密にはRoadの発音は、ロウドと表記する方が発音記号的に正解なんだけど、日本語のカタカナ表記って、その辺がファジーだからなあ。Boatが本来ボウトなのに、ボート(小船)というのがまかり通っているし。
ついでに、リング(Ring)とハーフリング(Halfling)も、厳密にはRとLが違っているわな。
うーん、英語の勉強にもなる良質ブログだこと(自画自賛)。
それと、もう一つ、NOVAが「理系と文系の両方を(結果として)勉強したマルチクラス」という話は、CD&Dのデミヒューマン(亜人)クラスが総じて、「基本の戦士に、何かの特技を加えたマルチクラス」であるという話につなげようとしたんだけど、イモータルセットの辺りから、話がズレた。
ここで頑張って軌道修正を試している最中。
ええと、エルフは「戦士プラス魔法使い」であることが明らか。
ドワーフは、「戦士プラス限定的な盗賊の探索能力」であり、ファイター兼シーフ(ローグ、スカウト)。
そして、ハーフリングは、ドワーフとは違う形でのファイター兼シーフ(隠密能力付与)となりまする。
あと、基本ルールでは、いろいろと高レベルで不遇な状況にあるデミヒューマンたちですが、先述のサプリメント、ガゼッタシリーズではその点の救済処置が施されていて、高レベルでも普通に成長して、独自の高位魔法を習得できるまでになったエルフの魔法専業職とか(これは邦訳された。今でも持っているかは不明。チェックするなら、本棚じゃなくて、押入れの奥を探索しないと)、ドワーフ用サプリメント、ハーフリング用サプリメントなど、様々な地域のワールドガイド兼、そこの住人にまつわる追加ルール集になっているのが特徴。
新和社もその辺をもっと丁寧にサポートしてくれれば良かったんだけど、91年以降はAD&D2版のフォローに舵を切って、CD&Dの展開を打ち切ったものだから、結果として既存のD&Dファンの失望を買って急速に業績悪化してしまい、そのまま撤退して、
以降は、数年ほどのSNE(メディアワークス)時代に突入(94年)。
まあ、そちらの展開も、本国のTSR社の業績悪化に伴い(この件はSNEのせいではなく、社長も相当に嘆いていた。阪神・淡路大震災に続くダブルショック)打ち切りを余儀なくされ、TRPG冬の時代とか、NOVAの失職を招くことになったわけで、まあ時代への恨み言を延々とつづりそうになるのを、「過ぎた話さ、今と未来が良ければ、希望は潰えない」とポジティブに振る舞うのみである。
そもそも、ハーフリング(ホビット)って、ポジティブ精神の象徴だしね。
★ハーフリングの性能
さて、ハーフリング(ホビット)の魅力は何か、と考えると、ゲームルール的には一言、「生存性の高さ」に尽きる。
これは『指輪』や『ホビット』の映画を見た方は、納得してもらえるだろうが、とにかく、どれほど過酷な状況に追い込まれても、ホビットは運良く、しぶとく、タフに生き延びる。
ハードボイルド探偵の名ゼリフ、「タフでなければ生きられない。優しくなければ生きる資格がない」を、D&Dクラスで最も象徴する存在が実はハーフリングである。と書けば、何だかイメージがしっくり来ないのだけど、ハーフリングが実際に「タフで優しい種族」であることは間違いあるまい。
もしも、映画や小説におけるホビットの活躍を知らない不届き者がいればいけないので、解説を加えるが、
「他の種族の者なら即死する幽鬼の毒を受けても生還する」
「過酷で不慣れな荒野の旅でも、何とか付いて行く」
「危険には敏感で、たちまち身を隠して難を逃れる」
「戦場の真っ只中にいて、多くの歴戦の勇士が討ち死にするような状況でも、生き残る」
「彼(ら)に同行した旅の仲間全てに勇気や善性を思い起こさせ、愛される存在である。よって、みんなが彼(ら)を守るために、必死に戦ってくれる」
「敵役は、体の小さなホビットを侮り、警戒しない。だから、怒りに奮起したホビットの奇襲を受け、倒される」
「機転が利き、交渉上手である」
こんなところかな。
ゲームにおいては、交渉とか機転はプレイヤースキルの問題なのでルール上の処理は為されていないけど、総じてハーフリングやホビットに該当するキャラクラスは、「幸運が高い」「毒などへの抵抗力が高い」「素早いので回避能力などにボーナス」「隠密能力が高い」などを体現している。
CD&Dにおけるハーフリングも、そういう特徴を持っているけど、意外とその性能を使いこなしているプレイヤーは少ないと考えられる。理由は、ハーフリングの特殊能力が多芸な反面、少し噛み合わせが悪いところがあるから。
そこを踏まえて、理想的なハーフリング運用法を考えてみたい。
1.彼らのサイズに合わせた、全ての種類の防具が着用可能。さらに、人間より大きなサイズの敵の攻撃に際しては、プラス2(20面ダイスの判定なので+10%相当)の防御ボーナスが得られる。
彼らを前衛戦士として運用できる大きな理由。
防御性能としては戦士並み、あるいは大型サイズの敵に対しては、戦士以上の打たれ強さを発揮する。さらに、ハーフリングはシーフ同様に敏捷力を高くしやすいので、その点でもボーナスを得やすく、一つの冒険者パーティーの中で、ハーフリングが最良のAC(アーマークラス)を誇ることも珍しくない。
2.小型サイズの武器しか装備できない。HPは戦士に及ばないD6使用。レベル8までしか成長できない。
ハーフリングが劣化戦士と見なされる根拠3つ。
成長に必要な経験値は戦士と同等で、それでもレベル8までしか成長できないということは、EXPが12万8000点で頭打ちということ。ドワーフがレベル12まで伸び、頭打ちが66万。エルフがレベル10まで伸び、頭打ちが60万であることを考えると、デミヒューマンでも群を抜いて早い段階で成長が止まることになる。
HPは、戦士やドワーフがD8で前衛に立つのに申し分ないタフさを誇るのに対し、ハーフリングは平均的なD6基準。エルフのように成長が遅いわけではないので、普通に前に立って戦えるのだけど、育ちきってもHP期待値が6+3.5×7で30.5までしか伸びないのでは、それ以上の冒険は諦めて引退した方が賢明である。
もっとも、ハーフリングは防御性能の高さや、後述するST判定の成功しやすさのために、全クラス中、最もダメージを受けにくいキャラ種である。つまり、当たらなければどうということはない、と言えるなら、多少のHPのハンデは大した問題にならないとも考えられる。
ただし、それでも武器の制限は大きなハンデである。多くの戦士やドワーフがD8ダメージの武器(主に長剣や戦斧)をメインウエポンで使うのに対し、ハーフリングのメインウエポンはD6ダメージの小剣(ショートソード)であり、殺傷能力においては戦士ほどの期待は持てないことになる。
3.全クラス中、最も良好なST値。
竜の息や魔法の呪文に対する抵抗力を表現したST(セービングスロー)値。
この判定に成功すれば、与えられるダメージを半減させることができ、また魔法による行動制限効果も無効化されるなど、この判定の結果如何によって、戦況が大きく変わってくるのがD&Dの戦場。
レベルの頭打ちの早いデミヒューマンは、HPが以降は伸びなくなるけど、ST値も早い段階で完成して、特殊攻撃には人間よりも滅法強くなる長所があったり。とりわけ、頭打ちの早いハーフリングはST値の伸びも非常に良くて、同じ経験値なら、以下のようになるわけで。
DM「罠のせいで部屋には毒が充満した。中にいる全員、対毒STをして。失敗したら、HP半減だ」
8レベル戦士「ひどい罠だな。俺のST値は8だ。20面ダイスで出ろ、8以上。ぐはっ、7かよ。ちっともラッキーじゃない。HP40だから、ダメージは20ポイントも喰らった。鬼ー悪魔ークソDMー!」
7レベルドワーフ「やれやれ。騒がしいことじゃて。わしらドワーフの対毒STは優秀で4じゃからの。成功率85パーセントということで、ダイス目は……5。ふう、運は悪かったが、何とか成功。ダメージはなしじゃよ、ホホホ」
7レベルエルフ「私も、この前にレベルアップして良かったわ。レベル6のままだったら、ST値8だったものね。今はグンと下がって、ST4でドワーフ並み。はい、ラッキー7で判定成功。ダメージ無効♪」
8レベルハーフリング「ぼくのST値は2さ。20面ダイスで1が出なければ失敗しやしない。毒なんて、ちっとも怖くない。95%で無効化だからね。よし、ぼくもラッキー7。毒? 何それ? 戦士さん、何だか顔色が悪いようだけど大丈夫?」
8レベル戦士「失敗したの、俺だけかよ。僧侶と合流して回復してもらわないと」
こんな感じですね。
つまり、HPは伸びないけど、ダメージの大きい特殊効果に強いのがデミヒューマンということになる、と。
とりわけ、ハーフリングはコンパニオンルール以降の成長では、「竜の息や魔法の呪文によるダメージが、普通で半減。ST判定に成功で4分の1まで減らせる」ことに。
つまり、普通なら60ポイントのダメージを食らって即死するところを、半減して30ポイントならギリギリ生き延びて、さらに高確率で成功するST判定の結果で、15ポイントまでダメージを減らせる、と。
これがドワーフなら「呪文のダメージ半減」で、エルフなら「竜の息のダメージ半減」と限られているのに対し、ハーフリングのみ「どちらも半減」ですから、まあ、どんな特殊攻撃も大して怖くないのですな。
4.飛び道具の命中判定プラス1
ハーフリングの使い方を迷わせるルールその1。
つまり、ハーフリングはたったの5%とは言え、攻撃の命中判定に唯一、ボーナスを与えられる種族なのである。これがAD&Dなら、「エルフは弓矢や片手剣を使用する際にボーナスプラス1」とか、「ハーフリングは投てき武器にボーナスプラス1」とか、種族ごとに結構細かいルールが付いてくるのに対し、CD&Dでは攻撃ボーナスの面で優遇されているのは、ハーフリングのみ。
問題は、飛び道具という制限のために、この能力を活用しようと思えば、「ハーフリングは基本、前衛に立つな」ということになる。ハーフリングは弓矢はショートボウ(短弓)しか使えないけど、ダメージではどの弓も同じD6である(射程距離のみ差異がある)。飛び道具専門として考えるなら、ハーフリングがD8の長剣が使えないというハンデはあまり関係がなくなる。
どうせ、前衛でも後衛でも、与えるダメージはD6で変わりないわけだし、命中ボーナスが加わることを考えるなら、ハーフリングは後衛で短弓を撃っている方が強い、ということになるけど、いつも後衛ばかりならACボーナスがあまり意味を為さないことになり、前衛ハーフリングを目指すか、後衛射撃ハーフリングを目指すか、戦況によって立ち位置を臨機応変に切り替えていくか、プレイヤーの方で運用方針を決めておいた方がいいクラスということになる。
5.高度な潜伏能力
ハーフリングの使い方を迷わせるルールその2。
ハーフリングは隠れるのが上手い。
本職とされるシーフよりも時として圧倒的に。
まず、屋外で木々や雑草などの潜伏場所がある場合、「彼らが見つけられる確率は10%しかない」とある。言い換えれば、潜伏成功率90%ということである。この数字を専門家のシーフが実現しようとすれば、31レベルを要する。すなわち、マスターレベルのシーフがようやく達成できる芸当を、ハーフリングが屋外限定とは言え、最初から行えるのである。
次に、ダンジョン内での潜伏能力だけど、これは随分減って3分の1の確率(6面ダイスで1と2のみ成功)となるわけだが、それすらシーフが達成するならレベル6が必要になる。
つまり、ハーフリングも隠れるだけなら、シーフと同じことができるわけである。ただ、シーフと違ってバックスタブ(背後からの不意打ちにより、命中プラス4、ダメージ2倍)の能力を持たないので、本当に「ただ隠れるだけ」しかできないのが難点である。
シーフなら、戦闘中に隠れて移動し、バックスタブを狙うのが一つの作戦として通用するけれど、ハーフリングの場合、隠れることによって得られる戦闘関連の数値ボーナスがないため、「戦闘中に隠れる=ハーフリング本来の戦闘能力を活用できない」ということになって、いまいち使用タイミングが見えにくいことになる。
さらに、さすがの隠密能力も「ガチャガチャうるさい板金鎧を着けたままだと使用困難」とDMは判断するだろうし、ハーフリングを前衛戦士と同様の完全武装させた場合は、この能力の使用を諦めるしかなくなる。
つまり、シーフ以上の隠密能力を発揮するためには、シーフ並みの革鎧を装備することになり、せっかくの重鎧着た前衛戦闘能力を破棄することになる、と。
よって、ハーフリングを運用するなら、「鎧をしっかり着込んで、前衛戦士と肩を並べて戦う」か、「革鎧で隠密能力と飛び道具支援を役割とする」か、選ばないといけないわけで。
鎧の着替えは瞬時にはできないので、例えば「子馬に着替えを乗せて旅して、屋外では革鎧で後方支援、ダンジョンに入る時はプレート着込んで接近戦に務める」とか、そういう使い分けを考えたりしないといけないのかも。まあ、そういうのって、なかなか面倒なので、結局、ハーフリングの能力をフル活用していたプレイヤーって少数派じゃないのかな、と。
★仲間との連携
で、以上は、ハーフリングを単独で運用する際の考察だったんだけど、チームプレイだともっとハーフリングを活用できる。
1.飛び道具との連携
実は、クラシックのD&Dで飛び道具が有効かどうかは、DMの裁定ないしプレイ環境によって大きく変わってくる。
まず、D&Dと同時期ぐらいに、コンピュータRPG版D&D(厳密にはAD&D)シミュレーターとも言うべき「ウィザードリィ」が日本に入ってきて、戦闘シーンのイメージが抽象戦闘風に処理されてきた感じがある。この場合、元々、フィギュアを使ったオリジナルD&Dと違って、敵味方の位置関係が「接近戦担当の前衛」「飛び道具や魔法で支援の後衛」に分かれ、個々の細かい配置は無視されがち。
抽象戦闘だと接近戦キャラにスポットが当たり、敵味方の位置関係を明確にしたタクティカル戦闘だと、移動に手間どって足の遅い戦士が接近戦範囲にたどり着くまでに敵の飛び道具で攻撃されやすいから、飛び道具が重要になる、というのがコンピューターゲームの傾向。
また、接近戦重視の日本のサムライ魂と、飛び道具重視のアメリカの銃社会の対比を考えて、アメリカ人はタクティカル戦闘が好きで(ウィザードリィのような抽象戦闘は、コンピュータの容量が少ない時代ゆえのむしろ例外)、日本人には接近戦こそ花形と考える人が多いとも考えられる。
それはともかく、抽象戦闘で飛び道具を使う際に問題となるのは、「前衛が戦っている時に、後ろから矢を射てば、間違えて味方に当ててしまわないか?」と。
本国のようにフィギュアを使って、リアルに移動や敵味方の位置関係を測りながらプレイしているなら、射線もはっきりするので、味方を巻き込まない位置にいる敵を狙って射撃することも可能だし、
コンピュータ的な抽象感覚をフルに発揮して、「味方に誤射するルールはややこしいので基本的にパス。20面で1を振った時だけ間違えて味方に当たるぐらいにしておこう」と裁定するDMの時も飛び道具は使いやすい。
だけど、「前衛が接近戦に入ったら、もう飛び道具は使用不可にします。接近戦に入る直前の最初の1ラウンドだけは、自由に弓矢を射っていいものとします」と裁定するようなDMの下では、飛び道具の出番が減っていく。それに、元々、飛び道具って矢数の管理が面倒くさいので、接近戦の方が手っ取り早いと思っちゃうわけで。
そして、飛び道具が大事と考えるDMの下では、魔法使いもダガーを何本も購入して「魔法を使わないときはダガー投げに専念」「僧侶もスリングをブンブン振り回し」「シーフも、リスクの高いバックスタブよりは弓矢をメインウエポンとし、エルフやハーフリングもそれに追随」という環境になって、まあ暇なキャラがいない形。
一方、飛び道具を使わさない派のDMの下では、みんな接近戦キャラになって、突撃ウォー状態になり、戦士と一丸になって一斉にチャンバラ劇が展開され、シーフは風車の弥七みたいに影に隠れてチャンスを伺い、魔法使いだけが魔法を節約して何もすることがなく見ているだけとなりやすい。まあ、ここぞというところでは、水戸のご老公の印籠みたいに「この魔法が目に入らないか」と切り札マジックを出して、敵集団をハハアと眠らせたり、ファイヤーボール爆弾を打ち込んで、これにて一件落着ってなバトルを展開しやすい(だいぶ偏見が混じってる)。
そして、ようやくハーフリングの話に戻るわけだけど、ええと「乱戦の中に飛び道具を射つの禁止」なDMも、前衛がハーフリングなら、後衛が「ハーフリングの頭越しに弓矢射ちます」と宣言すれば、案外認めてくれたりするわけで。だってイメージしやすい光景だもん。
つまり、ハーフリングは自身が飛び道具を使うのが上手なだけでなく、仲間が飛び道具を使いやすい状況を(持ち前の小柄さゆえに)構築しやすいわけで。
戦士が1人で敵と渡り合う一方で、ハーフリングは敵の攻撃を受け流しながら、自身の攻撃と仲間の支援射撃で敵を倒す役割を果たすことができる。一人では攻撃力不足だけど、仲間の支援を得やすいので結果的にいい仕事ができる。それがハーフリングのいいところだし、まあ協力プレイの醍醐味だわな。
ハーフリング「ぼくが前に立って、この敵を防いでおくから、みんなは後ろから援護して」
こんなセリフが普通に言えたら、ハーフリングの達人に近づけるかも。
2.シーフとの連携
シーフのお仕事でよくあるのが、「こっそり先行偵察して、敵の様子を確認してきて」というもの。
敵の数や配置を探ったり、侵入経路を見つけたり、単なる正面突撃以外のクレバーなプレイを目指す向きには、よくあるシチュエーション。こういうアクションを考えられてこそ、D&D入門者から、中級者へのステップアップだと考えられたものだ、80年代当時は。
だけど、シーフって頼りにならないんだよね。
低レベルだと、たいてい何かの判定に失敗してしまい、慌てて逃げ帰って来て、結局、追いかけて来た敵の群れとチャンバラ状態になってしまう。まあ、今の時代のオンラインRPGだと、「シーフ系のキャラが敵の群れから一部を引き寄せてきて(フィッシングとかカイティングとか呼称)、仲間のところへ駆け込んで予定どおりの戦闘を開始」ってスタイルが定着している感じだけど、まあ、必殺仕事人なんかでもよくやってるよな。
で、偵察先行からの敵引き寄せはシーフの見せ場の一つだけど、やはりリスクが高いわけで、元々HPが高くないし、一撃必殺(かもしれない)のバックスタブだって、まずは隠れないと使えないし、敵の撃破が必要ってことはすでに見つかっていて隠れることもできないわけだし、つまりはピンチなシチュエーション。
できたら、援護が欲しいところなんだけど、隠密行動が可能なのは自分一人……ん?
ハーフリング「ぼくもいっしょに偵察に参加するよ。二人いれば怖くないよね?」
シーフ「何言ってるんだ? 二人いれば、見つかる可能性が増えるだけだろうが」
ハーフリング「いいや、ぼくも革鎧を着れば、そうそう見つからずに動けるし。むしろ、シーフさんの方が足手まといになったりしない?」
シーフ「こいつ。生意気言いやがって。……分かった、付いてきな。プロの腕前ってものを見せてやる」
で、結局、シーフが隠密行動に失敗して、見つかってしまうわけで。
シーフ「チッ、こいつがチョロチョロ動くのが気になって、うかつな動きをしちまった。おい、ズラかるぞ」
ハーフリング「いいや、シーフさんはそのまま隠れていて。ぼくがあいつらの目を引きつけるよ。その間に……ね」
シーフ「お、おい。大丈夫か」
オーク「お、何だか音がしたかと思えば、こんなチビかよ」
ハーフリング「チビとは失礼な。それより、オークさんたち、ぼくのネコ知らない?」
オーク2「は? ネコだと? ネズミみたいな小僧がネコを探しているとは、お笑い種だ」
ハーフリング「いいから黙っていてよ。おおい、キャッティ・ブリー、どこ行った?」
オーク「おい、小僧。ウロチョロするな。他に仲間はいないのか?」
ハーフリング「だから、言ってるじゃないか。仲間のネコを探しているって」
オーク2「ネコの話をしているんじゃねえ。こんなところにガキが一人迷い込むのがおかしいんだ。仲間がどこかにいるに決まっている」
ハーフリング「さあ、どうかな。もしも、いるなら、とっくに背中に回り込んでいると思うんだけど」
オーク「ハッ?」
シーフ「隙あり。バックスタブ!」
オーク「ギャアッ」
オーク2「貴様、よくも」
ハーフリング「おっと、君の相手はぼくだ。さっきはよくもネズミ呼ばわりしてくれたね。覚悟してもらうよ」
オーク2「貴様みたいなガキぐらい」
ハーフリング「そんな大振りが当たるもんか。くらえ、一撃」
オーク2「まだまだ、こんなもので」
ハーフリング「今だ、シーフさん」
シーフ「おおよ。トドメだ」
オーク2「ぐはっ」
ハーフリング「やったね、シーフさん。ぼく、役に立ったでしょ?」
シーフ「全く、末恐ろしいガキだぜ。ギルドにスカウトしたい気分だ」
ということで、シーフ一人ではバックスタブもままならないのですが、相手の注意を引きつけてくれる前衛が一人いるだけで、戦闘中の隠れ身も可能になり、ハーフリングの攻撃力不足をシーフが補う形になって、互いの能力を活かし合う偵察行動も可能になるんじゃないかな、と。
3.僧侶との連携
最後に。
実はハーフリングの前衛接近戦能力と隠密能力を同時に両立させようと思えば、僧侶の助けを借りるのが一番かな、と考えたり。
すなわち、僧侶の2レベル呪文(レベル4から使用可能)「サイレンス」ですな。戦士とエルフの際にも語りましたが、これを特定個人にかけると、静寂空間はその個人と共に移動するわけで。
これで、板金鎧をガチャガチャ鳴らしても無音状態で、ハーフリングが隠密行動可能という状況が作れるわけで。一人ではできないことも、仲間の力と組み合わせれば、達成可能という好例だと。
というか、D&D(に限らず)の実践プレイって、こういうアイデアをどれだけ考え、実際に使ってみて、成功ないし失敗エピソードを蓄積するかが語りどころじゃないの。そういう体験談や感想なんかを伴わないものは、実践感覚のない机上の空論とあしらわれても仕方ないし、自分が聞いていて楽しいのは、やはりデータだけの薀蓄ではなく(いや、それも正確で、机上でも検証が為されていれば読み応えのある時もあるけど)、生きた体験談だったりしてね。
で、ハーフリングだけど、静寂空間ごと移動して不意打ちを仕掛けることで、対魔法使い決戦兵器になり得る。というか、それによって、ぼくの最初のキャンペーンの(ほぼ)ラスボス、クラシックD&Dルールブックではおなじみ「悪の魔術師バーグル」は呪文の使えないままハーフリングに抹殺された。
このサイレンステロは、戦士ではあまり機能しない。というのは、サイレンスかけても目立つので、敵のザコにわらわら囲まれて、結局、奥にいる魔法使いのところには届かないわけで。
隠密能力に長けたシーフの場合は、失敗した時のリスクがあまりにも高すぎる。敵勢の只中に突入したシーフが存在に気づかれた場合、というか、敵魔法使いにバックスタブを仕掛けた際には確実に存在を明かすことになり、そこから生還するのは、防御能力やHPに乏しいシーフには至難の技である。
それができるのは、戦士に近い接近戦能力と防御生存能力、そしてシーフ並みの隠密能力を合わせ持つハーフリングのみ、である。
これで、ラスボスを封殺された際は、「やるな、プレイヤー」と称賛したものである。
しかし、こちらもその戦術を考えていなかったわけではない。隠し球が用意されていたのだ。
当時(高校時代)、我々の間では、ドラクエも流行っていたわけで、人間形態の竜王が倒されると、どうなるか。
そう、竜王は正体を現して、巨大なドラゴン形態になるのだ。
うちのバーグルさんは倒されると、ブラックドラゴンに変身して、そこから真のラスボス戦スタート。目障りなハーフリングを血祭りに上げようと襲いかかったのだが、攻撃が当たらない。何故だ。こちらのHD7で、ハーフリングのACマイナス1だったら、ダイス目14で当たるはずなのに。命中確率35%だよ。爪、爪、噛みつきで3回も攻撃すれば一発ぐらい。
それでも当たらない時は何をしても当たらないのである。
竜王バーグル、天に完全に見放されたな。
そのうち、ザコ戦を片付けた戦士ラピュタや、エルフのナウシカマスク(何て名前か)、ドワーフのロッキーらも駆けつけてきて、スーパーフルボッコタイムの末にラスボス撃破。
これが、ぼくの初D&Dキャンペーンの記憶である。ハーフリング大活躍の記憶が色褪せず残っている。
なお、このハーフリングの名前が、ドラクエにハマっていた友人が付けたので「ロト」という、嘘のような本当の話もあって、この場でのキレイなオチになるな、と。(完)