ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

ミスティックという職業

★前置き

 

NOVA「今回は、フォーゴトン・レルムの話ではなくて、クラシックD&Dマスタールールと、ソード・ワールド2.0の話をする」

 

ハイラス「それはまた唐突でござるな」

 

NOVA「まあ、本来ならフォーゴトン・レルムの話の続きとか、AD&Dとか5版とか、ソード・ワールド2.5とか、そっちの話をするのが筋だが、話が長引きそうなので、一回の記事で終わるシンプルなネタを考えてみた」

 

ハイラス「それがミスティックというわけでござるな。謎とか神秘とか、よく意味の分からない単語でござる」

 

NOVA「クラシックD&Dだと、東洋の神秘を体現した修道士という意味で使われているな。一方、ソード・ワールドでは、サプリメント『カルディア・グレイス』掲載の占術師となっている」

 

ハイラス「修道士と占術師。神秘的という意味では共通するが、似て非なる存在であるな」

 

NOVA「クラシックのミスティックは、AD&D以降の現D&Dでは総じてモンクと呼ばれ、要は少林寺などをイメージした東洋の拳法家なんだな。これは、ソード・ワールドでは宗教色を廃した格闘家グラップラーとなっている。グラップラーに練技を組み合わせて、後はプリースト技能なんかを付与すれば、D&Dのモンクっぽいキャラも作れるな」

 

ハイラス「ソード・ワールドは職業の組み合わせで、いろいろなことができるからな。ドルイドも、精霊使いシャーマンとレンジャー技能の組み合わせだし」

 

NOVA「それだと、獣に変身する能力は再現できないんだけどな。獣変身は職業ではなく、リカントなどの種族に基づく能力になっている。あるいは、クリスタニアの神獣信仰などか。あるゲーム独自の職業を、違うゲームでどう再現できるかを考えるのは、初心者を脱却したゲーマーのたしなみじゃないかな、と考える。複数のゲームシステムを比較対照する知識と応用力を要するからな」

 

ハイラス「D&Dで占術師を再現することはできないのか?」

 

NOVA「それは魔法使いの領域だな。5版だと、2レベルになった時点で、ウィザードは幻術、召喚術、死霊術、心術、占術、変成術、防御術、力術の8系統から自分の専門領域を選んで、特殊能力を得られるようになっている。占術師の特殊能力『予見』は、あらかじめダイスを2回振って、出目を記録しておき、敵味方いずれの判定にもそれを採用できるという効果がある。つまり、高い目が出れば、味方の攻撃ダイスに採用して、『大丈夫。その攻撃は必ず命中する。そう、お告げがあった』と言えるし、低い目は敵の攻撃に採用して、『フッ、その攻撃は当たらん。すでに読めているのだよ』と慢心できる。まあ、中途半端な出目を予見してしまった場合は、ちょっと悩むんだけどな」

 

ハイラス「確実に当たる予見か。ところで、NOVA殿は時空魔術師であるが、5版になぞらえるなら、どういう専門家でござるか?」

 

NOVA「俺か? 時空間の移動や操作は変成術だが、他に幻術と心術なんかも使いこなせるかな。どれか一つを選べ、と言われたら、やはり変成術が便利そうだ。だが、実際は幻術だと思う。存在しないものを存在しているように妄想するのは、幻術の類いだろう?」

 

ハイラス(う〜ん、NOVA殿が幻術使いなのは間違いないと思うが、幻術師は他を欺くものでござるからな。あくまで幻術師を装っているだけで、実は別の分野が専門という可能性もある。花粉症ガールを生み出したり、新世界を形成し、そこに塔を建造するのは、変成術の為せる技ではないだろうか。つまり、本当の危機に際しては、専門の変成術を使い、日常的には手慰みの幻術や心術で相手を惑わすスタイルと見た。まあ、本当の危機など、起こらないに越したことはないのだが……)

 

★クラシックD&Dのミスティック

さて、マスタールール所収のミスティックです。
以前、この職業については「AD&Dのモンクを語るついでに扱おう」と考えていたのですが、それがいつになることやら、という気になったので、早めに語っておきます。
ただ、ルールとしては不十分な示唆程度のもので、わずか2ページほどの記載で、ミスティックの社会や文化とゲーム上で扱うためのルール案が書かれているだけ。これで、どうやってプレイしたらいいんだろうって代物です。クラシックD&Dでドルイドをプレイした人間は少ないでしょうが、ミスティックをプレイした人間は本当に極小のスーパーレア、あるいはレジェンダリーに匹敵する稀さ、と考えます。

ただ、ミスティックの記述を改めて読んで、気づいたことはあった。
「モンスターの説明の項の詳細とルールは総て適用される」と。
つまり、たった2ページ足らずと思っていた記載に、モンスタールールのミスティック欄を付け加えると、おお、1ページ半追加されて、これで約3ページだ。ルール分量が1.5倍から2倍に一気に上昇。これなら、書くネタが一気に増えたかな。

ともあれ、ミスティックですぞ。その神秘的な全貌をいよいよ明かす時が来た……かもしれん。

まず、ミスティックは人間です。当たり前といえば当たり前なんですが、クラシックD&Dの人間は最大レベル36です。
一方、ミスティックは最大レベル16という、人間じゃないみたいな扱いを受けてます。
まるで、パトレンXか、万丈龍我ですな。まあ、二人はそれぞれ体術の達人だったり、格闘家だったり、ミスティックと似た要素を持っているのですが。
とにかくミスティックは、エルフやドワーフ、ハーフリングのようなデミヒューマンみたいにレベル16までしか上昇できないというハンデを抱えています。マスタールールの対応レベルが26~36レベルなのに、マスタールール初見のミスティックがそのレベルに対応できないとは、何というイジメ。

それでも、強ければ許される。
さあ、ミスティックの性能はいかに?
ファイター同様に、あらゆる武器を使えますが、ヒットダイスはD6、しかも防具を身に付けてはいけないので、レベル1ミスティックは盗賊よりも打たれ弱いことも。
しかし、1レベル上昇するごとにACがマイナス1されるというボーナスがあるので、最大レベルでACマイナス6という脅威の数値に達する。とりあえず、プレートメール+シールドというクラシックD&Dの前衛標準スタイル(AC2)に追いつくのはレベル8なので、その辺りで頼れる前衛になるのかな。

さらに、ミスティックはレベル上昇によって、移動力と素手での攻撃力も増えていきます。
移動力は最初が通常移動120フィート/ターンで、まあ人並みですが、最大レベルで320フィートすなわち通常の3倍近くに達します。さすがは人間を超越しておりますな。レベル8で190フィートなので、まあ人の1.5倍。遠くから弓矢を撃ってくるザコを殴りに行くのには最適ですな。いや、遠隔魔法を撃ってくる魔法使い相手だと、もっと役立つかも。

そして肝心の攻撃力は、最初が素手でD4。すなわちダガー並みですな。一般人は素手ダメージが1固定なので、素手限定だと強いのですが、普通の前衛はD8の剣を使いますからね。ミスティックも素手にはこだわらず剣を振るった方がいいわけですわ。
ミスティックが化けるのは、レベル5から。この段階で素手のダメージがD8と剣に追いついて、さらに2回攻撃が可能になる。その後、レベル9になると3回攻撃が可能になり、素手のダメージが2D8まで上昇。つまり、ミスティックを一番楽しめるレベル帯は、レベル4から14のエキスパートレベルになる、と。
コンパニオンレベルに入った辺りで成長が頭打ちになり、しかもイモータルへの道は示されていないので、そこまでの付き合いになるのかな。メインキャラクターがイモータルの道を目指すに当たって、途中で他の職業に転生する際に、代わりにミスティックを選択できるようにすると面白いかも。
最強のミスティックは、4回攻撃で素手ダメージが3D12、すなわち理論上は1ラウンドで144ダメージを叩き出せるわけですな。期待値でも全部命中すれば70超えのダメージなので、素手でドラゴンを倒せる伝説の拳士にだってなれる。


ここまでは単純な物理戦闘力の話ですが、さらにレベルごとの特殊能力が付いてきます。
まず、2レベルでアウェアネスという名の不意打ち看破能力が付きます。6分の1でしか不意を打たれません。ちなみに通常のランダム遭遇の不意打ち率は6分の2なので、ミスティックは他のキャラの倍だけ奇襲攻撃に強いわけですな。
そして4レベルのミスティックは、ヒールセルフという自己治癒能力を持ちます。1日1回だけ、1ラウンドの集中で自分のレベル分のHPを回復。まあ、最大でも16点までしか回復しないので、気休め程度の能力ですがね。
6レベルで、動物との会話が無制限で行えます。これは便利。
8レベルで、対ダメージ呪文やブレスへの抵抗力をもって、ダメージを半減させられます。やっぱり、ドラゴン相手だと心強いですな。
10レベルで、あらゆる言語を話せて、12レベルで精神防壁を張って心を読ませず、魅了やギアスなどにも完全耐性を誇る。すなわち、敵に操られることがなくなる、と。
14レベルで気配を完全に絶つことができる隠形能力を会得。
最後に16レベルになると、ジェントルタッチという技で、1日1回、相手の秘孔を突いて瞬殺したり、完全治癒を施したり、魅了したり、麻痺させたり、命令を与えたりできる。さすが東洋の神秘というものよ。


★歴史の影に忍んで消えしミスティック

さて、ここで誤算が一つ。
「ミスティックは書くネタが少ない」と思って、ソード・ワールドの占い師のミスティックとセットで記事一つと思っていたけど、存外そうでもないことに今さら気づく。

ミスティックネタで結構書けるじゃんと気付いて、まあ、ミスティックだけにミステイクだったということで、記事分けします。

で、ここまで書いて、エキスパートレベルのミスティックは結構、面白いと思ったわけですが、さらに、このキャラは同レベルの盗賊とほぼ同じ技能を持っている便利キャラでもあるのですね。
罠発見、罠解除、忍び足、影潜み、登攀までが行えます。できないことは鍵開けとスリ、聞き耳だけ。
あと、普通の盗賊は4レベル以降、80%の読文技能を持ち、10レベル以降は魔法の巻物を使用したりもできるわけですが、そういう情報収集系や補助的な魔法使用能力はミスティックは持ってませんな。それでも、6レベルで動物と話せたり、10レベルで万能会話能力を持つため、情報収集能力は十分だと思うのですが。

そんなミスティックですが、さらに経験値に20%のペナルティーを受けることで、「アクロバティックという軽業技能」を習得できます。これは「敏捷力×3+レベル×2%」の確率で、ジャンプや宙返り、とっさの回避運動、落下時にとっさに何かに捕まったり、空中ブランコをしたり、綱渡りしたり、とにかくサーカス的な運動が行えるというもの。

結局のところ「忍者」なんですな。
ただし、明らかに「東洋風の要素を持ったキャラ」にもかかわらず、クラシックD&Dは「中世ヨーロッパ風の世界観」という縛りに囚われていたせいか、ミスティックの社会の説明で例示されているのが「西洋中世シャルルマーニュ大帝時代のベネディクト修道院」に基づいた記述。
ゲームシステムのルール面からイメージされるものと、西洋風の修道院生活に基づいた背景描写がチグハグなせいで、ミスティックがどういうキャラなのか結局、分からないわけです。

これはAD&Dが東洋風の武闘家としてモンクという職業を採用し、また、その要素を発展させた「オリエンタル・アドベンチャー」という追加ルールを用意し、さらに世界観としても「フォーゴトン・レルムの東にある中華風世界カラ・トゥア」を提示したのに対し、
クラシックD&Dは、東洋風の要素を取り込まない世界観を提示し(ミスタラに東洋要素の地域は提示されていなかったと記憶。せいぜいイスラム的な砂漠国家ぐらい)、ミスティックという追加クラスも「東洋風味のキャラを何とか西洋世界観の範囲で提示しよう」との意図で、中途半端なルールを提示して、細かいところはDMに丸投げした、と考えられます。

要は、ミスティックというキャラは、人気のある「忍者や拳法家みたいな能力を持ったキャラ」としてルールに提示したけれど、西洋中世の世界観にはそぐわないので、背景世界にどう絡めるかはDMにお任せします。東洋の文化に興味のあるDMはそっち方面の背景を独自に付け加えてもいいし、そこまで東洋に精通していないDMは「謎の異端的な修道会として、独自の修行を行なっている人たち」程度の背景で適当に考えていいよ、という示唆ですな。
その後、AD&Dがフォーゴトン・レルムを背景に展開したのと同じような手法で、クラシックD&Dもガゼッタシリーズ(ミスタラ)で地域別ワールドガイドを次々と展開し、各地域特有の追加職業をどんどん増やして行ったのですが、日本ではそこまで翻訳される前に展開が終了しました。

ミスティックはクラシックD&D展開後期の数ある追加職業の走りとして、背景世界との整合性はあまり考えずに提示された職業です。
ただ、その後のクラシックの展開が「背景世界に基づいた地域別・文化別の追加職業(エルフの魔法使いとか、軽装鎧で戦う盗賊風剣士のラークとか、砂漠の神に仕えるダルビッシュとか)」を増やしていく形をとったので、ミスティックの立ち位置が余計に浮いちゃっているように感じます。

そして、結局、D&Dは新世紀に入ってクラシックとアドバンストが統合されちゃったので、この辺りの試行錯誤っぷりも、日本にはよく伝わらないまま、過去の話になったようですね。
ミスティックも結局、モンクというAD&Dの伝統キャラに統合されて、現在に至ってますし、過渡期に咲いた徒花的な、文字どおり神秘のベールに包まれたレア職業と受け止めています。(つづく)