ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

クラシックD&Dと5版とパグマイア2

★クラシック版バグベアの話

 

 

NOVA「今回は、前回に続き、新旧D&Dのデータ比較記事だ。魔法の話が本題だが、先にボスキャラだったアナグマ名義のバグベアについて触れておこう」

 

アスト「バグベアか。久々に聞いた名前だったな。ソード・ワールドにおけるボガードとかボルグに相当する感じでいいか」

 

NOVA「要はデカいゴブリン。クラシックD&Dでのデータは、HD3+1、AC5、命中およびダメージ+1、THACO16」

 

アスト「ヒットダイス的には、ゴブリンの3倍タフってことだな。HPの期待値は14.5。最大値で25といったところか」

 

ダイアンナ「質問。THACOって何だ?」

 

NOVA「トゥー・ヒットAC0の省略で、昔のD&Dで命中率を表現するためのデータ。例えば、AC4の相手に命中させる場合は、16ー4で12以上を出せばいいんだけど、このバグベアは命中がさらに+1されるので11以上を出せばいいということだ」

 

ダイアンナ「とっさに、そういう計算ができるのか?」

 

NOVA「とりあえず、ダイスを振って8が出た。命中+1して9。THACO16だから、16ー9でAC7まで命中……って感じにプレイしていたんだな。あるいはHDごとの命中判定表を参照するとか」

 

ダイアンナ「いちいち攻撃が当たったかどうかチェックするのに表を見ないといけないのか」

 

NOVA「キャラクターシートの下に命中判定表が付いていたんだけどね。それでも、今のシンプルさに比べれば、昔のは感覚的に分かりにくいと思う。3版以降、20面を振ってボーナス足して、相手のACより高い目を出せば命中ってルールに切り替えたのは、プレイを手軽にした画期的な革命だと思う。まあ、最初は俺も抵抗あったんだけど。THACOの使い方に慣れていたから」

 

★5版バグベアの話


NOVA「次にアナグマこと5版のバグベアだ」


◉5版バグベア

HP27(5d8+5)、AC16
モーニングスター:命中+4、ダメージ2d8+2
技能:〈隠密〉+6、〈生存〉+2


アスト「ちょっと待て。このバカでかいダメージの数字は何だ? 期待値11、最大値18。つまり、攻撃が当たった瞬間、誰かのスタミナが0になるようなデータなんだが?」

NOVA「うん、期待値でバリーは吹き飛び、スタミナ12や15を誇る戦士たちでさえ、直撃を受けたら即、戦闘不能。いやあ、攻撃が当たらなくて良かったねえ」

アスト「まったくだぜ。あの戦闘は、集中攻撃であっさりボスを倒したから良かったものの、何度も攻撃されていたら、誰かが犠牲になっていたかもしれないんだな」

NOVA「最初の一撃で、モッさんかアイアンが落ちていたら、戦況は大いに変わっていた可能性もあるな」

アスト「それにしても、プレイ時にはスタミナ27しか見えていなかったが、5d8って何だよ、それ。クラシックではバグベアはレベル3みたいな物だったが、5版ではレベル5相当ってことじゃないか。レベル1に対してレベル5の敵を出してくるなんて、厳しすぎやしないか?」

NOVA「まあ、そういうシナリオだから仕方ない。それに、クラシックD&D時代はモンスターのHDが強さの基準だったが、3版以降は脅威度という数値が設定されている。それによると、5版ゴブリンは脅威度が1/4、バグベアは脅威度1なんだ。単純に考えて、バグベア1体はゴブリン4体分に匹敵する強さということになる」

アスト「脅威度という目安が、いまいちピンと来ないんだが」

NOVA「まあ、大雑把に言うなら、1レベルパーティー人数を4人と計算した場合に脅威度1の戦力となる。君たちの場合は5人だから1と1/4という計算だな」

アスト「すると、ゴブリンなら5体、バグベアとゴブリン2体なら対等に戦えるということだな。狼の分を計算に入れなければ、最後の戦いのバランスは取れていることになるし、ゴブリン8体になっていた時には脅威度2という計算だから、結構ピンチだったわけだ」

NOVA「計算スピードと理解力は早いようで何よりだ」

アスト「当たり前だ。オレはスピードAと呼ばれた男だからな」

ダイアンナ「この場合は、スピードを誇る意味が十分納得できる。さすがアストだ」

アスト「へへ、オレの凄さが分かったかよ」

ダイアンナ「あたしは最初からアストの凄さは分かっていたよ。少なくとも、某コメント主よりも理解は早い」

アスト「誰と比べてるんだよ?」

NOVA「そもそも、理解の遅い、要点を飲み込めない人間と話すのは疲れるからな。もちろん、そういう人間に親切に教えることも俺の仕事だが、『自分は愚鈍だと認知していて、その分の努力をしっかり習得して補う術を知っている人間』は誠実さという点で信用できるし、謙虚さとか、身に付けた技はなかなか忘れないとか、美徳はいっぱい挙げられる。
「俺の場合は今でこそ自分のできること、できないことをはっきり自覚しているので、できることを武器に磨いていく姿勢で生きているが、昔はできないことまで必死にやろうとあれこれ手を広げすぎて、頑張れば何でもできるはずだ、とがむしゃらに突き進んだ傾向があって、まあ、何だろうな、時間効率の大変悪いこともしてきた気がする。できないことにリソースを割くな、というのが社会人になって習得すべき知恵なんだが、できないなんて努力もせずに諦めたくありません、と言っちゃう傾向があって、『やるだけやって、結局できませんでした(涙目)』と上に迷惑をかけてしまう時もあったな」

アスト「それは今も変わっていないんじゃないか? 思いつきのままにあちこち寄り道しては、いろいろ中途半端になりがちだし」

NOVA「個人の趣味だと、見切り発車で出発して、行けるところまで行ってみて、自分で満足したところがゴールでいいんだけど、人間関係とか仕事関連だと、自分以外の人間の満足するゴールを設定したり、仕切り直しとか、新しいスタートとか、いろいろ考えないといけないからなあ。これが利害を重視する営利企業なら、プロジェクトに不向きな人間の排除とかも考えないといけないわけで、相手に何ができて何ができないかとか、性格面も含めて総合的に、かつシビアに見ないといけない。その中で、問題になるのはどんな人間だと思う?」

アスト「いわゆるバカか?」

NOVA「一言で端折りすぎだ」

アスト「オレはスピードAだからな。ズバっと一言で切り捨てる。それがオレの生きる道」

NOVA「まあ、バカの基準も色々あって、俺みたいに『何かに夢中になったら止められない。周りが見渡せない集中力過多な人間』なのもバカなんだよ。上が『もういい』と言ってるのに、『いえ、まだです』なんて言っちゃう人間は、ドラマの主人公ではよく見かけるが、現実では困ったちゃんだったりするしな。諦めが悪いとか、見極めどころを知らないとか、自分でブレーキを掛けられないで、周りに迷惑を掛けているのに気付かないとか」

アスト「それは、オレに対する皮肉か?」

NOVA「俺自身に対する皮肉だよ」

ダイアンナ(やっぱり、こいつらは似たもの同士のように見えるな)

アスト「しかし、オレがお前に言ってやれることが一つある」

NOVA「何だ?」

アスト「とにかく、お前はくどい。止まれないのはいい。しかし、もう通り過ぎた道でさえ、いちいち振り返って、グチグチ言い続けるのは、オレにはない性分だ。そんなのだから、スパッと割り切る、爽やかな男になれないんだぞ」

NOVA「フッ、お前に諭されるとはな。そう言うお前が俺に言うほど爽やかな男だとは、とても思えんのだが。何かにこだわることと、爽やかさとは、両立が難しいものなのかもしれんな」

ダイアンナ「こだわりとは、何かに執着すること。爽やかさとは、さっぱり、きれいに、後腐れない思いきりの良さ。確かに、こだわりを武器にするオタクが、さわやかになれないのも、分かる気がする」

NOVA「さわやかなマニア、というのは定義矛盾になるのか、う~ん」

アスト「だったら、お前はこだわりとさわやかさのどっちを選ぶ? と聞かれたら、どうする?」

NOVA「そりゃ、さわやかさを捨てても、こだわりを選ぶのが俺の道だろう。だが、しかし、完全にさわやかさを捨てきるのもどうかと思うぞ。7割のこだわりと3割のさわやかさを武器にはできないものだろうか」

アスト「なるほど。こういう諦めの悪さ、中途半端さが、NOVAということか」

NOVA「で、話を戻すぞ。確かバカベアの話だったな」

アスト「混ざってる。バカの話と、バグベアの話は別ものだ。いつの間にか、違うものがつながってるじゃないか」

NOVA「結論は簡単だ。5版バグベアの恐ろしいのは『蛮力』という馬鹿力を持ちつつ、姑息にも『不意打ち攻撃』さえ仕掛けてくるということだ。実はただの怪力バカではない」

アスト「確かに、〈隠密〉+6なんて持ってるな」

NOVA「『蛮力』は近接攻撃で与えるダメージダイスが1個多くなる。本来は1d8のモーニングスターが2d8になっているのは、このためだ」

アスト「ああ、やけにダメージが大きいな、と思ったのは、そういうことだったのか」

NOVA「さらに、不意討ちによってダメージに2d6、期待値にして7点を加算することも可能」

アスト「つまり、バグベアに突然襲われたら、期待値18、最大30点のダメージをくらうということか。どれだけ恐ろしいんだよ、5版のバグベアは?」

NOVA「フフフ、今回のボスキャラ、クラーグが最後のバグベアと思うなよ。ギザ牙の首領キング・グロールは、スタミナ最高の45点を誇る。ラストダンジョンでは、そんなバグベアがワンダリングモンスターとして、1d4体出てくることさえあるわけで」

アスト「バグベア4体に襲われたら、たまったものじゃないな。先にデータを教えてくれて助かったぜ。次にバグベアが出ても、速攻で落とすか、勝てんと思って素早く逃げる作戦がとれるからな」

NOVA「大丈夫。がむしゃらに頑張れば、きっと勝てるさ。諦めたら、そこで終わりだ」

アスト「諦めないと終わる命だってあるんだよ!」

ダイアンナ「……呪文使いとしては、そんな恐ろしいバグベアに対処するための術も考えておかないといけないんだな」


★魔法の呪文の話


NOVA「さて、お待ちかねの魔法の話だ。これについては、いろいろ語るネタが多くてね。本気で語れば、連載記事10回以上は、軽く越えてしまいそうだ」

アスト「そりゃ、時空魔術師にして言霊魔術師を自称する男が、魔法について、あまり語れないとなったら、恥ずかしいもんな」

ダイアンナ「とにかく、魔法使いは楽しかったぞ。マジックミサイル3連発でゴブネズミがあっさり吹っ飛ぶのは快感だしな」

アスト「あんなに活躍するのは、オレの知ってるD&Dの1レベル魔術師の姿じゃない」

NOVA「お前の知ってる姿って、どんなのだよ?」

アスト「『みなさん、頑張って戦って下さい。自分は皆さんに守られて、後ろで応援してますから。えっ、お前も仕事しろって? もちろん、しますよ。その時が来たら。何しろ、手持ちの呪文はスリープ1発だけですからね。敵がいっぱい出てきたら、一網打尽で眠らせてみせます。あ、でもスケルトンやゾンビは勘弁して下さいね。そいつらは眠らないですし。そんなのがわらわら出てきたら、クレリックさんに悪霊退散してもらって下さい。適材適所って言うでしょうから。え? お前は何もしないんだったら、地図でも書いてろって? 分かりました。どうせ暇ですから、魔法使いのマの字はマッパーのマってことで』って感じか」

NOVA「すごいな。まるで経験者みたいな語りぶりだ」

アスト「お前だって経験者だろうが」

NOVA「いや。俺はクラシックD&Dで、魔法使いのプレイヤーになったことは人生で一度もない」

アスト「何だと? それなのに、お前は時空魔術師とか、言霊魔術師なんて名乗っているのか?」

NOVA「だって、俺はDM専門だったもん。AD&Dも含めた数少ないプレイヤー経験でファイター、クレリック、シーフ、ドワーフをプレイしたことはあるんだけど、マジックユーザーをプレイする機会はなかったんだ」

アスト「それなのに、どうして魔術師にこだわっているんだよ?」

NOVA「あれは遠い33年前の冬のこと。高校1年の若き少年だった俺がお年玉を使って手に入れたD&Dベーシックセットとエキスパートセットを初めてプレイした時のことだ。俺の周りの友人たちは、それぞれファイター、クレリック、シーフ、ドワーフ、エルフを担当したが、誰もマジックユーザーをやりたがらなかったんだよ」

ダイアンナ「なぜだ? こんなに面白い職業なのに」

NOVA「成長すれば、魔法使いは確かに面白い。しかし、クラシックD&Dの1レベル魔法使いは、魔法が1回しか使えず、戦闘力が皆無ですぐ死ぬ。だからと言って、魔法以外の特殊能力が一切なく、ゲームに参加していないに等しい状態だったんだ。みんながサイコロを楽しそうに振るのを横で見ながら、何もできず、何かをしようと出しゃばったら、あっさり死んでしまう屈辱と忍従の日々。こんな初期レベルの魔法使いを誰がやりたがると思う? 半分、罰ゲームみたいなものだぞ」

ダイアンナ「つまり、ダディーの初D&Dでは、魔法使いがパーティーにいなかった、と?」

NOVA「いや。誰もやりたがらないけど、魔法使いは必要だと考えていた俺は、NPCとして魔術師ソレッドというキャラをパーティーに同行させたんだ。だから、俺のD&D初の持ちキャラは魔術師ソレッドということになる。プレイヤー経験ではなく、ダンジョンマスターとして魔術師に感情移入したわけだよ。
「その後、リプレイ小説『レンフィールド戦記』をソレッド視点で書いたり、同じ世界の別地域を舞台にした小説『光の杖』をTRPGの実プレイなしで空想のままに、妄想のままに書いたり、俺の創作の原点の一つと言えるなあ。まあ、それ以前からも小説はあれこれ書いていたけどパクリ感が強く、初めて自分のオリジナル作品と感じたのがD&Dに起因するものだった。もちろん、それもロードスやドラゴンランス指輪物語の影響は大きく受けているんだけどな」

アスト「つまり、ロードスの小説に影響されて、小説を書いたと?」

NOVA「少し違う。ロードスの雑誌連載リプレイに影響されて小説を書いていたら、ドラゴンランスやロードスが次々と小説として出版された形になる。なお、小説を書き始める直前は、創元推理文庫などのゲームブックにもハマっていて、自作のゲームブックを作ろうとして挫折した経緯もある。順番としては、ロードスリプレイ→俺小説→ドラゴンランス→ロードス小説という流れだな」

アスト「すると、お前が俺小説を書いていた時期に、ロードスの作者の水野良さんも頑張ってデビュー小説を書いていたということになるか」

NOVA「俺視点としたら、自分が小説を書いていたら、それを後押しするかのように、世の中がファンタジー小説だらけになって、自分自身も先駆者として一緒に走っているような気になったんだよな。若い日の世間知らずな錯覚という奴だ。で、そこを目指して追っかけて、手が届いたと思ったら、バブルが弾けたり、神戸の震災だったり、TRPG冬の時代に入ったり……という話は前にも書いたから、これぐらいにしておこう」

アスト「まあ、クラシックに限らず、D&D体験を元に小説家への道を歩んだ作家さんは、日本でも海外でも、よく聞くよなあ」

NOVA「スター・ウォーズを見て映画の道に入ったり、ガンダムが好きでマンガ家になったり、それぞれのクリエイターが何かに触発されたり、リスペクトしながら活動しているのを知ると、自分もそういう人の友だちになったような気分で、頑張れよ~と言いたくなったりする。昔は、羨望とか嫉妬の面もあったかもしれないが、それよりも今は自分にできることをしながら、自分のツボを突いてくれる同輩、あるいは後輩クリエイターの作品を素直に楽しんでいる俺がいるってわけだ」

ダイアンナ「何か、魔法使いの話よりも、創作クリエイターの話に広がっている感じだが」

NOVA「割と最近のラノベの公募キャッチフレーズに『書くという魔法』って表現があって、確かにいろいろな世界を言葉で書き綴ることは、魔法にも例えられるよなあ、と感じたり。そして、俺や多くの人に物語やキャラクター、世界創造への扉を開いてくれた赤箱D&Dなどのルールブックはまさに古の魔法の書物というわけだよ。呪文もいっぱい載ってあるしな」

ダイアンナ「それで、ルビーの攻撃呪文マジックミサイルなんだが……」

NOVA「クラシックD&Dでは、D6+1のダメージを与える魔法の矢だな。それと、今ルールをチェックすると、前回のアストの記憶が微妙に違っていたことが分かった」

アスト「何だと?」

NOVA「クラシックでは最初に1本。以降は5レベルごとに2本増えるという仕様だった」

アスト「つまり、6レベルで3本、 11レベルで5本ということか」

ダイアンナ「ダメじゃないか、アスト。嘘をついちゃ。危うく騙されるところだったぞ。このあたしに〈はったり〉を仕掛けるとはいい度胸だ」

アスト「いや、嘘じゃねえ。オレの記憶では確かに2レベルに1本ずつ増えていくんだって」

NOVA「うん、それはAD&Dのマジックミサイルだな。AD&DではD4+1の矢が2レベルごとに増えていく仕様だ。微妙に違うわけだな。そして、今の5版はAD&Dの後継者だからダメージもD4+1となってる」

ダイアンナ「クラシックよりもアドバンストの方が、矢は小さく、分裂しやすい仕様というわけか。アストはクラシックだけでなく、アドバンストD&Dにも詳しかったのか?」

アスト「そう、スピードAのAはアドバンストのA……というか、日本語でのAD&Dはテーブルトークよりもむしろ、コンピューターRPGの方でいろいろな作品が出ていたからなあ。そちらの知識に上書きされていた可能性が高い。大体、マジックミサイルの本数が増えるにしても、6レベルになってからじゃ遅くはないか? ファイヤーボールが撃てるようになった頃に、ちまちま矢が2本増えても、あまり嬉しくないぜ」

NOVA「確かに、ファイヤーボールが撃てるようになる前に、先にマジックミサイルが1本増えた方がありがたいと思うなあ。お金に例えるなら、1万円もらった後に2000円もらうより、1万円もらう前に1000円もらえる方が嬉しいようなもんか」

ダイアンナ「ファイヤーボールかあ。それが撃てるようになる日が楽しみだ」

NOVA「む、それについては、後でキャラを成長させる時に相談したいことがある」

ダイアンナ「ん? 何の相談だ」

NOVA「少し複雑なので、後にしたい。それよりも、今はマジックミサイルだ」

ダイアンナ「2人の話を聞いていると、最初から3本も矢を撃てるのは、昔を知る者にとっては破格の強さということなんだな」

アスト「それだけじゃない。その強くなった呪文を休息なしに4回も撃てることが凄いんだ。つまり、クラシック時代の4倍の強さだぞ」

NOVA「ついでに言えば、回数無制限のエレメンタル・レイも撃てるから『魔法使いで呪文を節約しないといけないから、何もできなくて手持ち無沙汰』ということが、今のD&Dにはない。耐久性や防御力の面で弱いのは昔の通りだけど、壁役戦士がしっかり守ってくれるなら、非常に優秀な援護砲台になってくれる仕様なんだ」

アスト「いつから、そんなに魔法使いが優遇されるようになったんだ?」

NOVA「無限回使用できる基礎呪文の概念が成立したのは4版からだな。その前の3版では、呪文そのものの使用回数は昔と同様に制限が厳しかったが、最初から3回使える0レベル呪文が追加されて使用回数の厳しさを緩和していた他、マジックアイテムがお金で購入できるシステムのため、例えば『マジックミサイルを50回撃てる杖』が金貨750枚で買えたりして、少しの冒険を経た後なら魔法の連発パワープレイは容易に可能になった」

アスト「何だと? すると、『ファイヤーボールを50発撃てる杖』もあったりするのか?」

NOVA「金貨1万1250枚で購入可能だな。まあ、そこまでの品物が普通に購入可能かどうかは、DMの裁量にも掛かっているが、もしも店に売っていなければ、魔法使いはマジックアイテムを自作するための技能も習得できるから、自分で作るという選択肢もある。『フフフ、ついにファイヤーボールを50発撃てる杖を完成させたぞ。これさえあれば、今までわしをバカにした世界を見返してやることもできよう。さて、アイテム作りに資金が枯渇したので、ちょっくら宝探しのために、手頃なダンジョンにでも行くか』というプレイも可能」

アスト「クラシックD&Dでも、マジックアイテム作成のルールはあったよな」

NOVA「9レベル以上で可能。20発撃てるファイヤーボールの杖は、金貨3万枚と17週間の研究時間を費やせば作成できると例示されてある」

アスト「9レベル以上か。そこまで育てば、大魔術師を名乗れる頃合いだな」

NOVA「クラシックD&Dのネームレベルって、城主とか、弟子持ちの魔術師とか、盗賊ギルドの長とか、どこかの教会の司祭さまとなってるレベルだからな。そういうプレイの例示は、日本では少なかったわけだが。SNEなんかでは、『そこまでキャラを育てたら、普通は冒険生活から足を洗って引退しろよ』的な示唆をしていて、今もロードスRPGの基本方針がそうなっている。パグマイアも最高10レベルだから、そんな感じだな」

ダイアンナ「今やってるワンデルヴァー・リプレイでは、何レベルまで育てることが可能なんだ?」

NOVA「5レベルだ」

ダイアンナ「だったら、最終的にファイヤーボールを撃てるようになるわけだな」

NOVA「……今、言ってもいいか。うん、実はパグマイアの育成自由度は高くて、魔法使いの呪文習得レベルまで調整可能なんだ」

ダイアンナ「どういうことだ?」

NOVA「本家D&Dでは、2レベル呪文の習得は3レベル、ファイヤーボールを含む3レベル呪文の習得には5レベルまでキャラを育てないといけないと決まっている。だけどパグマイアでは、成長を呪文習得に専念することで、2レベル呪文を2レベルで、3レベル呪文を3レベルで習得可能になる。この意味が分かるか?」

アスト「つまり、本来、5レベルで初めて撃てるファイヤーボールを、3レベルの時点で早くも撃てるということか!」

ダイアンナ「凄いじゃないか。早くファイヤーボールを撃てるようになりたいぞ」

NOVA「悪いんだが、それを許すと、本来、D&Dシナリオであるファンデルヴァーのゲームバランスが滅茶苦茶になる。だから、ガイド権限をもって、本リプレイではD&Dのルールに準じる形で呪文習得の制限を行うものとする。すなわち、偶数レベルでは呪文レベルの成長を禁ずという形だ」

アスト「育成自由度が高すぎて、魔法使いがさっさと強くなり過ぎるために、縛りを入れるということか」

ダイアンナ「ならば、2レベルでは盗賊の技を取得し、3レベルで呪文のレベル上げをするという形ならいいんだな」

NOVA「納得してくれるか?」

ダイアンナ「昔の魔法使いの屈辱と忍従の話を散々聞かされた後では、ルビー・ブラッドハウンドがいかに恵まれた時代に生まれたか分かったからな。あたしとしては別に強さに飢えているわけじゃないし、むしろ、お宝探しに役立つ技の習得に力を注ぐ方が、ルビーのキャラ性にもかなっているだろう」

NOVA「ありがたい。魔法使いがさっさと強くなれるのに対し、戦士系がいまいち弱くて職業格差が酷いというのが、D&D5版ユーザーから見てのパグマイアの欠点に挙げられているからな。それはまあ運用する側の対応次第で何とかなるというのが俺の意見なんだが、とりあえず『パグマイアで5版シナリオをプレイする』という変則スタイルでやっている以上、あえてゲームバランスを極端に崩しそうな選択は避けようという判断になった」

アスト「なるほどな。無茶な企画を考える背景には、データを検証して慎重に振る舞い、予想できる危険は前もって取り除くという姿勢も大切ということか。意外と緻密な思考をしているじゃねえか」

NOVA「天使のように大胆に、悪魔のように細心に、という黒澤明監督の言葉を実践しているだけさ」

ダイアンナ「それって逆じゃないのか?」

NOVA「いや、合ってる。きらびやかに派手に堂々と飾り立てる部分と、密かにあれこれ考えて緻密に策を練る部分の両方があってこそ、いい映像作品が撮れるという演出論なんだけど、逆じゃダメらしい」

ダイアンナ「どうしてだ?」

NOVA「この場合、天使は陽性のソーラーNOVAで、対する悪魔は陰性のルナーNOVAに相当するわけで、ソーラーな躁状態の時は周りが見えておらず勢いで突っ走りがち。ルナーな鬱状態の時は細かいことばかりが気になって先に進めない。だから、自分の今の心理状況に応じた行動パターンを選択することで、総じて双方の長所を武器にできるという寸法だ。大体、勢いだけで変なことを考えるのはソーラーな時で、思考が後ろ向きになりがちなのはルナーな時だし、そういうバイオリズムは自覚しておかないとな」

アスト「オレから見ると、お前はいつも変なことを考えているように見えるがな」

NOVA「お前にだけは言われたくないんだが」

ダイアンナ(あたしの目には、どっちもどっちと思えてしまうんだが、アストの方がウジウジ悩まないようではあるか)

(当記事 完。次回、キャラ成長記事の予定)