★久々の鉄太郎さん談義
鉄太郎「ウルトラマンZが始まって3週間。毎週のように、メダルで私のパワーの一部を召喚されるようになっているわけだが」
アスト「ああ、ゼロさんとレオさんと、それからモロボシの旦那の力が召喚されているな。あれって、どういう仕組みなんですか?」
鉄太郎「ヒカリの奴が開発したシステムでな。元々は、タロウがムルロアと対峙した時期に我々が試したウルトラ六重合体を簡易再現するためのものなんだ。君も知っているように、ウルトラ族は地球人に憑依融合することで、地球に長期滞在できるようになっている。つまり、修練を積んだウルトラ族は、物理的な肉体から霊体、エネルギー体として自らの意思やパワーの一部を切り離して、他者に与えることが可能なんだ」
アスト「セブンさんやレオ師匠、それに80先生やメビウスなんかは憑依型ではなく、自分で地球人の姿に変身していますよね。何か違うんですかい?」
鉄太郎「憑依型は、命の授受に関する高等技術、ちょっとした秘伝なんだな。だから、宇宙警備隊のエリート隊員にしか伝授されていない奥義みたいなものなんだ。何しろ、異質な星の人間と魂を融合させるわけだから、いろいろと弊害があるんだよ。少なくとも、相手が生死の危機にあるような緊急事態でしか実行されていないはずだ」
アスト「つまり、セブンさんが薩摩次郎に憑依ではなく、ダンさんに変身したのは……」
鉄太郎「当時はまだ宇宙警備隊所属ではなく、ただの恒点観測員だったからな。憑依術は修めていなかったんだよ。その後、タロウがテンペラー星人と戦う際には、ウルトラ兄弟の一員として認められていたから、緊急に際して、ZAT隊員やバレーボールチームの体を借りたこともあったが」
アスト「ああ。その時には憑依できるようになっていた、と」
鉄太郎「あくまで、一時しのぎの小技だからな。元の体の意識は眠らせたままなので、魂の融合まではしていない。ああいう状態が長時間続くと、いろいろ弊害が生じるわけだし」
アスト「しかし、憑依って何だかおっかないですね。自分の体を誰かに操られるなんて、真っ当な地球人には予想もつかないです」
鉄太郎「だけど、NOVA司令はメガネを介した魔術で憑依することもできるみたいだし、花粉症ガールだって精霊少女として憑依したりするではないか。物品に思念を宿した憑依や、霊体化の技術、魔術は、地球人でも一部の者は習得していると思うが」
アスト「それができるのは、本当にごく稀な一部だけですよ。少なくともオレには無理です」
鉄太郎「まあ、ウルトラ一族でも、ごく稀な一部だがな。地球に派遣されるのが、そのごく稀な一部なので、誰でもできるように思われがちだが、憑依なんてのは精神と肉体を分離する高度な修練の賜物なんだよ。一度、死ぬような経験をして、初めて会得できる技かもしれん」
アスト「で、ヒカリさんが、その奥義を機械の力を借りて、まだ未熟なZでも再現できるようにしたのがZライザーということですか?」
鉄太郎「最近は、U40やO50といった異星のウルトラ文明との交流もあるせいで、ヒカリがどんどん新技術を取り入れた発明に夢中になっているからな。地球産のウルトラマンのティガとかダイナとかガイアとかにも目を輝かせながら、いろいろ資料を集めて、古今東西のウルトラ史の資料も紐解きつつ、80とマイナスエネルギーについて議論を交わし合ったり、しまいには『プラズマスパークのもたらすプラスエネルギー効果について』とか論文を書いたり、いろいろややこしい研究をしているらしい」
アスト「つまり、最近のウルトラ界隈では技術融合がいろいろ起こっていて、その成果もあって、力の融合技術も発展している。その立役者の一人がヒカリだと」
鉄太郎「まあ、多元宇宙の観測技術が発達したから、というのも大きいだろうな。それには、ここの司令を始めとする多くの有志の応援と協力あればこそ、だが」
アスト「NOVAだけじゃなく、多くの有志の研究がウルトラ時空の発展を支えているってことですね」
★行方不明と、花粉症
NOVA「なるほど、有意義な話が聞けた」
アスト「うわ、また唐突に現れやがって。事前連絡ぐらいしろよ」
NOVA「そんな悠長なことを言っている場合じゃない。翔花の手掛かりが分かったんだ」
アスト「何だと? それはどこだ」
NOVA「ウルトラマンZの第3話だが、当然、チェック済みだよな?」
アスト「オレはお前と違ってマニアじゃないから、まだだよ。これから帰ってきた鉄太郎さんといっしょに見ようと思っていたところだ」
NOVA「帰ってきたって、鉄太郎さん、どこかに行ってたんですか?」
鉄太郎「いや、だから今、その話をしようとしていたんだ。パグマイアのプレイの後、ヒカリの研究に付き合わされてね。私やレオの力の一部をメダルに封じる実験なんだが、その際に変な宇宙ザメが光の国を襲撃したりして、いろいろ大変だったんだよ。しかも、その迎撃に向かったゼロとは連絡が取れなくなってしまうし、ここに来れば何か手がかりがつかめると思ったんだが、また新しい世界が観測されたようだな。地球人がどういうわけか、セブンガーやウィンダムを開発している世界だが、どうしてジャグラス・ジャグラーが防衛チームの隊長をしているんだい?」
NOVA「さあ。あの世界の動向は、自分にもまだ分かっていないので、鋭意調査中です。それにしても、タロウさんに続いて、ゼロまで行方不明になるなんて、大変ですね」
鉄太郎「とにかく、手掛かりもなく、あちこち探し回るよりも、時空監視施設のここで待機していれば、いろいろと状況も見えてくるだろうと思って、帰ってきたわけだ。Z時空の現状が分かるまで、ここで恒点観測の仕事をさせてもらえると助かる」
NOVA「他ならない鉄太郎さんのためだから、協力させてもらいますが、あの世界は現状、不確定要素が大きいです」
鉄太郎「どういうことかね?」
NOVA「俺は第3話まで見て、今のところ外れなしの傑作シリーズと確信していたのですが、メインライターの吹原幸太さんが今年の5月に脳幹出血で急逝されたそうです。まだ30代の若手で、これからという時に惜しい人を亡くしたと、お悔やみ申し上げます。何話まで書かれたのかは分かりませんが、あの『ご唱和ください』『枯れ専ヒロイン』『花粉症』など軽妙コミカルなキャラや物語が最後まで見られないと思うと残念です。後を引き継ぐライターさんが、この路線をしっかり受け継いでくれることを願いつつ」
アスト「せっかくのウルトラ脚本デビューなのに、自分の書いた作品が映像化したのを見ずに亡くなったのか。そいつはお気の毒だな」
NOVA「ああ。だから、俺は今後、ZのOPで脚本家さんの名前を見るたびに、哀悼を捧げるつもりだ。本当にボケとツッコミの機能したコミカルで楽しいホン書きさんだったみたいだからな」
アスト「それはそうと、Z世界に翔花ちゃんの手掛かりってどういうことだよ?」
NOVA「第3話を見たら分かる、と言っておくが、簡単にまとめるなら、主人公のハルキが花粉症で苦しみ、それに対するのは花粉症のために太古の眠りから目覚めた古代怪獣ゴモラ。ハルキのセブンガーと花粉症ゴモラの対決を、ウルトラマン大好き外人が間近で観戦し、日本のロボット技術とウルトラマンを大いに称える話だ」
アスト「何だ、そりゃ? この世界では、ウルトラマンの存在は認知されていなかったんじゃないのか? 何で、外国人がウルトラマンを大好きなんだよ?」
NOVA「さあ。日本人よりも、アメリカ人がウルトラマンを認知している世界観じゃないのか? きっと、グレートやパワード、リブットの延長に位置する世界観なんだよ。あるいは、アニメのUSAか」
鉄太郎「つまり、日本産のコンテンツが日本よりも外国で高く評価されている世界観ということか」
NOVA「まあ、世の中、地元よりもそれを離れた外国で高く評価されている作品って結構ありますからね。『フランダースの犬』とか『グレンダイザー』とか『ボルテスV』とか『ジャスピオン』とか。他にも外国で評価されて日本に逆輸入って作品も珍しくはありませんね。どうしても、日本の一般層は保守的すぎて、サブカルチャーを一段低く評価しがちですが、外国人の方がエンタメを純粋に楽しいかどうかで評価するのかもしれません」
アスト「逆に、外国で埋もれた作品を日本人が高く評価することで、世に出ることもあっただろう。『フランダースの犬』はそのパターンじゃないか?」
NOVA「案外、地元のコンテンツの良さは、外の目から見て初めて分かるのかもしれんな。それはともかく、Z世界に花粉症が迷惑をかけて済みませんでした、鉄太郎さん(m0m)」
鉄太郎「いや、この私に頭を下げられても、私は別にZ世界の住人ではないからね。それよりも、娘さんの手掛かりが見つかって良かったじゃないか。今から迎えに行くんだろう?」
アスト「そうだ。早く翔花ちゃんを迎えに、Z世界に行けよ」
NOVA「いや、それはできないんだ」
アスト「何でだよ?」
NOVA「当ブログにおける時空魔術のルールとして、現在進行中のストーリー作品に直接の介入はできないんだよ。外から観測や解釈を試みるのはOKだが、俺やお前が勝手にZの世界に介入して、本編の整合性を崩すことは許されない。タイムパラドックスや並行世界の理なんかと同様、話をややこしくするからな。あくまで、番組本編の展開を尊重する形式を崩してはいけないんだ」
アスト「面倒くさいことを言ってるな。翔花ちゃんのことが心配じゃないのかよ」
NOVA「心配だから、きちんと観測をしているんだろうが。いざという時には、直接ではなく、間接的に支援する方法を考える。しかし、今回はまあ、無事に外国人のお偉いさん方へのプレゼンが成功し、ウィンダム完成の予算が下りて、めでたしめでたしじゃないか。犠牲になったゴモラさんには悪いことをしたが」
鉄太郎「とにかく、タロウと、ゼロと、それから翔花くんと、行方不明の面々の安否を気遣いながら、この場でZ世界の観測を続けるつもりだ」
NOVA「まあ、うちの娘がいつまでもZ世界にいるとは限らないんですけどね。何にせよ、時空監視のお仕事を今後も続けるなら、こちらも協力は惜しみませんし、また何かあれば連絡します」
鉄太郎「ああ、ところでパグマイアの続きはいつするんだ?」
NOVA「夏過ぎて、秋になるかと思います。あと、アスト、これがお土産な。しばらくゴブスレの新展開もないので、のんびり構えていてくれ」
アスト「ソード・ワールド以外のネタが、クトゥルーかよ。触手キングの奴が喜びそうだな」
NOVA「ああ、個人的には、こっちのサプリメントも気にしているんだがな」
アスト「クトゥルフ2020かよ。頼むから、魔術にハマりこんで、変なものを召喚して、正気と狂気の境目をうろちょろして、他人を巻き込むような愚かなマネをしてくれるなよ」
NOVA「俺がいつそんなことをした?」
アスト「やれやれ。自覚のない奴はこれだから困る」
NOVA「俺がこれまでに召喚したのは、花粉症ガールと鉄太郎さんと……まあ、その昔、ケイソンとか、種々の悪霊も召喚というか創作した覚えはあるが、とりあえず、今の世界の時空が乱れているのは、俺だけのせいじゃない。俺としては、この混迷した状況を何とか乗り越えるために、日々のお仕事と研究を続けて、ハッピーを構築しようと一生懸命なんだよ」
アスト「分かった分かった。だったら、お前のヘマはこっちで尻拭いしてやる。まあ、ヘマしたお前を笑い嘲りながらな」
NOVA「いちいち言うことが癪に触る奴だな」
アスト「そう思うなら、こっちに迷惑をかけるようなヘマをしなければいいんだ。可愛い女の子のヘマなら、喜んで尻拭いもするが、中年男のヘマなんて見苦しくて、文句の一つも言いたくなるだろうがよ。バカにされたくなければ、ヘマするな。それだけだ」
NOVA「ヘマヘマしつこく言いやがって。まるで、俺がしょっちゅうヘマしてるみたいじゃないか。いいか、俺がヘマするのは36回に1回、たまたまファンブルの目が出たときだけだ。不可抗力って奴なんだよ。判定すれば、時々出てしまい、それで経験点50点を稼げてしまうんだ。挑戦しなきゃヘマもしない。失敗を恐れるな。ヘマしても、必ず挽回して、乗り越える。みんなをハッピーにさせるヘマなんだ」
アスト「まあ、それは間違っていないな。お前のヘマは、オレを笑顔にしてくれる。だから、どんどんヘマしろ。笑ってやるから」
NOVA「別にお前を笑わせるために、ヘマをしてるんじゃねえ。とにかくファンブルの目が出ても、運命改変して乗り越えてみせるぜ。それこそが人間冒険者の特権だからな。今回は、これにて当記事 完」